第33話 Robotomy

フェルディナンドは、優しく述べた。


「君が心配しているのは、おそらく昔流行った精神外科のような事じゃないかと思う。当時はあれでもノーベル賞を取っているね。1949年の事だった。でもあれは、人間の神経回路を切断しただけだ。だから人格が変わってしまった。

このシステムはそうじゃない。元々その人が持っている優しい気持ちを取り戻してもらう、そういうシステムなんだ



真摯な、彼の言葉で

なんとなく蟠りは消えたような

気がする。



それで、侵略は防げるのかしら。





「とりあえずやってみようよ。考えていても何も変わらない。見る前に飛べ!ってね。」




フェルディナンドは楽しそうに言う。



ドイツ人って頑固者の血統かしら(笑)、ラテンっぽいおおらかな感じもするけど。




それでわたしたちは、さっきの独裁者の邸宅を監視し続けたまま、東側連邦の共和国中枢、そこのテレビ局の中継回線に侵入して

情報を探った。



まだ、東側では原子力計画には至っておらず、それは科学研究の遅れが要因だった。


そこで東側では、西側の技術を盗み、それを完成させようとしているらしい、と言う事が

テレビ局のリハーサルマイク音声から傍聴できた。




宮殿は秘密主義なので、国営テレビ局も入れない。


でも、防犯カメラでもないだろうかと


付近の、現代の衛星写真から推測をし、座標を打ち込んで調査を繰り返した。



そんな時だった。


例の独裁者が、どこかに出掛けるようで

邸宅の防犯カメラに、迎えの車が映った。



チャンス....




わたしたちは、固唾を呑んで見守る。


列車で北へ向かい、大陸を横断して東側連邦共和国の宮殿へ向かうのだろう。


大陸横断鉄道の駅には

特別列車が控えていると

彼の国の国営テレビは

おばさんアナウンサーが

誇らしげに伝えていた。



黙っていた方が安全なのに。

そう思うけど、誇るのが好きなのね。



「そういう思考を宗教にしてしまっているんだよ」と

フェルディナンドは寂しく語る。


元々は祖先を敬って、みんなで礼を尽くそうという宗教だった。それを改竄し

祖先の上に独裁者が神として存在すると教義を書き換えた。それで、ああなった。と。



外から見ると変に見えるけど、日本もドイツもかつてはああだったんだよね、とも。



「あれは独裁者の欲望じゃなくて、人々の攻撃性なんだよね」と彼。



つまり、動物的に縄張りを拡げたいという排他性が

独裁者を支持する。

勿論、そうでない人々もいるはず。



「そう、なので

攻撃じゃなくて、和やかにしよう、と言う気持ちになってもらえばいいのさ」




そう話していると

独裁者の邸宅、防犯カメラに独裁者本人が!


座標軸を調べる。

現在の衛星情報と変わっていないはず。



緯度、経度情報をネットワーク経由で算出。


システムを協調。

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