第25話 spontinious

勢い、そう言っちゃった!


どうすればいい、なんて考えてなかったけど

それがわたし。


なんとなかるわ。



いつも、そうなんだもの。



研究者の彼、未来の彼と同じ名前のフェルディナンドは

穏やかに微笑む。


未来の彼も、きっとこんな感じなんだろうな。

そう思いながら、科学の話を聞いた。



原子力発電にも、いろいろあって

中には、危険の少ないものもあること。


今、ある原発は古い技術なので

危険性が高くて、無駄の多い作りだけど

壊すのにお金が掛かるし、ゴミが沢山出るので

そのまま使いたがる傾向がある、と言う事。


ドイツでは、トリウム燃料原子炉を研究していた事。

日本でも、核融合炉と言う、危険の少ないものを

研究している事。



いろいろ聞いた。でも、今ある原発を止める事は

難しいだろうと言う事も。




....どうしたらいいの?



ちょっと、困っちゃった。









でも、どうやって?

懐中電灯みたいなレーザーガンも、もうないし。



「大丈夫、お嬢さん。」


と、彼はうなづく。


「未来から、過去の遠い祖先へと

通信するのです。それで、過去に遡って

歴史を変えるのです。」


ちょうど、今、未来から

フェルディナンドが呼びかけているように、と。



そうなのね。

その言葉で、わかった。


あの、ラジオの声のような仕組みで

過去の人に語りかけて。


現状を伝えれば、分かって貰えるかもしれない。


「しかし。場合によっては

現在と未来が変わる事になるのです。

自分の存在が、無くなってしまうような事も

起こり得るかも知れない。過去を変えると言うのは

そういう事です。」




がーん。

それは、あまりと言えばあまりの。

地球の未来の為に死ねと言うの?



と、わたしは思った。


でも、どの道このまま生きていても

放射能に怯えながら、結婚だって、子育てだって

まともに出来るかも分からない。



そんな人生を変えられるかも知れないなら。



「そう、僕もそう思う。」



フェルディナンド。


その声は、確かに。

懐かしい、未来のカレ。



もう、会えないと思ってた。



「そんな、途方もない話を信じてくれるかしら。未来からの声、だなんて。」



わたし、素朴。そう思う。

昔は、原子力って夢のエネルギーだって言われてたような事、聞いた事あるもん。



この研究所の通信機から聞こえる、彼の声は

懐かしかった。そして

冷静だった。




「うん、それは実際、難しいかもしれない。でも大昔も今も、科学が理解出来る人が居れば、放射能の危険性も理解されていたはずなんだ。そういう人の知性を、少しお借りして。

例のレーザーガンでね、政治家とかの意識に転送すればいいのさ。」

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