第16話 angels and devilles


「でも、悪意ってなに」


と、わたしは素直にそう思った。



「環境から見て、例えば動植物が生きていれば環境を侵食する。それが環境から見れば悪意だな、厳密には」と、フェルディナントは学者らしくそういう。


付け加えて「でも、生命維持にやむを得ない場合は別にして、の話さ。だから、お金を余分に欲しいからと言って、原発を良く考えもせずに作って爆発させたりするのは、環境から見たら悪意だろうね」と。



わたしは思った。



わたしは悪意がないんだろうか。そんなことない。


いっぱい、悪い事はしていると思う。嘘だってつく。


でもそれを、このレーザーは見分ける、と言う事なんだろうな。


どうやって?




「それは、この時代には出来ない事だけど、未来なら出来るのさ。例えば、精神分析学者のような能力があれば可能でしょう?脳の思考を読み取る事だって未来には出来るのさ」




...たとえば。

わたしは夢想。


もし、恋するとして。

片想いの彼が、ほかの女の子を思っていて。


それで、その女の子をライバルだと思ったりしたら

それは悪意かしら。



そうじゃない。

競い合う事は良いこと。


だけど、ライバルを攻撃しようとしたら、それは悪意。


わたしだったら、ライバルさんを片想いの彼が

本当に好きだったら


諦めちゃうけどなぁ。


だって、好きって気持ちは仕方ないもん。



天使さんみたいな感性だったら


彼の片想いが実ること、を祈るんでしょうけど


わたしはそこまでは思わない。


ふつうの人だもの(笑)。


でも、邪魔しようとまでも思わないな。





そういうひとたちが、レーザービームで

仲良しになれたら。


魔法みたいなことでしょうね。


未来って、魔法みたい。


わたしは、ぼんやりとそう思ったり、でも

未来に行かないと、フェルディナントに会うことは絶対に出来ないんだ。

同時にそう思って、がっかりしたり。





峠道から降りてくる。

爽やかなツーリング。


ゆっくり走っていると、後ろからスピードを出した自動車、銀のBMWがヘッドライトを点灯させて近づいて来た。


追い越して行けば、と

わたしは思った。


自動車を楽しまずに、周りの車を攻撃するのは、悪意なのかな。

ふと思い、レーザーをミラー越しのドライバー、サングラスの男に当てて見たら、男は、ふつうに追い越して行った。


「この機械、流石だけど

飛ばされた悪意は、どこに集まってるのだろう」


わたしは、そう呟く。


フェルディナントは「たぶん、どこかの世界。異次元じゃないのかな。地獄、だったりして。最近、この世界に事故が多かったり、争いが多いのは、どこかの異次元から悪意が転送されているのかもしれないね。ひょっとすると」

フェルディナントは、ちょっと怖い想像力を披露した。

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