第8話 boy friend

「ボーイフレンドとかいないの?」と、フェルディナントは

あっさりと。


「男の子とつきあったことない。女子高だったし、なんか怖いし」



それは事実で、サービスエリアで絡んできた連中と

似たようなもの、だと思っていた。



「僕には、ふつうに話せるのに」と、フェルディナントは

楽しげに。


「だって、あなたは紳士だし、それに...」ラジオの向こうだし、と言い掛けたところに


パーキングに、国産のバン、トヨタのボクシーだろうか、

黒いそれを、サングラスを掛けた女が運転して

乱暴に停車し、子供と亭主らしき連中、どやどやと

降りてきて。



木陰のいい場所に止まっていたワーゲンを、いかにも

邪魔そうに見、奇声を上げる子どもを叱りもせず

サングラス女はタバコをふかしはじめた。

高原のさわやかな空気は、タバコの臭いと

騒ぐ子供の声で台無しになった。


まだのんびりしたかったが、ワーゲンのエンジンを掛けて

出ることにした。



「だからイヤなのよ、家族連れって。自分さえよければいい、って最低」と、わたしはワーゲンのクラッチをつないでロードに出た。


「そうだね、ドイツにはあんなのはいないなぁ」と、フェルディナントは言う。


「そう?」意外、と思ってわたしは。



「うん。日本だけじゃないかなぁ。ドイツであんな事してたらすぐに警官がくるよ」


フェルディナントはさらりと。



わたしはおどろき「ホント?」



「本当さ、陸続きの国じゃみんなルールは守る、のが当然なんだ。そうしないと国、が守れない」と

毅然とフェルディナントは言う。


車を路上駐車してても、邪魔でないところなら違反にはならないが


日本のように、繁華街に止めたりすればすぐにレッカー移動、だそうだし


子供が国道に飛び出して轢死しても、運転手の罪にはならない、なんて事もあった、なんてフェルディナントは言った。



「ドイツって徹底してるのね」私は感心して。



「そうさ、日本もそうすればいいのに。なぜしないんだろう」



フェルディナントは不思議、と言う雰囲気で言った。


「規則が緩いし、いい加減なのよ、日本人って」

わたしは、諦めるように言った。



「こないだもね、原発が爆発して。放射能まみれになったのに管理者は責任も取らずに、退職金を6億円も貰って。その上、その会社を税金で生かし続けるとか」

と、わたしは、よくわからないニュース原稿を読んだ(笑)


「知ってる、ドイツ気象庁は放射能拡散予想もしたりして心配したし、原発は廃止する事にした」と、フェルディナントはまた、ニュースキャスターみたいな合いの手を(笑)


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