第3話 サービスエリア

いつも、ここに来ると

ソフトクリーム、名物の梨ソフトを頂いたりする。

葡萄シャーベット、とか

面白いものがいっぱいあって

ここのサービスエリアは好き。


ちいさい頃、父がドライブ好きだったから

よく、ここに連れて来てもらった。


父は、トヨタクラウンが好きで

モデルチェンジする度に買い替えていた。


わたしは、クラウンはあまり好きじゃなかったけど

でも、父は好きだった。


優しくて、大きくて。

いつも夢を追っているような人で

夢を追ったまま、遠くに行って帰って来なかったんだけど

そういう生き方もいいな、男らしくて。

そんなふうにも、思ったり。



思い出の中の父の幻影と

一緒に、展望台からアルプスを眺めた。


山の景色は変わらない。


でも、時は過ぎ去って行く。


as time goes byなんて

父が好きだったシャンソンの一節を口ずさむ。でも

わたしが歌うとシャンソンには聞こえなくて

ただのフレンチポップスみたいだ、と父は苦笑してたっけ。


人生と共に、歌える歌は変わるんだよって父は言っていた。


今のわたしは、何を歌えるんだろう。


そう、感慨に耽っていた。



振り返ると、パーキングしてあるワーゲンちゃんを

男の子たちが眺めていた。

わたしと同じくらいの、よく見かけるような感じの。


何か声かけて来るのかな、と

ちょっと鬱陶しく思って

キッパリと、知らん顔してワーゲンのドアを素早く開き(笑)


バタッと閉め(笑)嫌な女の子を演じた。


男の子たちは、BMWの5に乗ってたみたいだった。

BMWなんて大嫌い(笑)。

見えっ張りの意地悪ドライバーばっかりで。



わたしは少しいらいらしながら、でもワーゲンちゃんのエンジンをかけたら


そんな気持ちはどこかに行ってしまった。


のんびりと走ろ、ってワーゲンちゃんが言っているような、そんな気がした。




ラジオをつけた。

ドイツ語で書かれている、クラシックなこのラジオ。なぜ日本のラジオが聞こえるのかわからないけど

最初は、ドイツ語が流れてくるかな、とドキドキした(笑)でも違ってた。


810KHZに合わせてると、アメリカの放送が聞こえて。

それが楽しかった。

今の時間は、カントリー。

のどかなサウンドは、ワーゲンちゃんも好きかな?




「好きさ」



ラジオの音楽に混じって。



誰かの声かしら....



「僕の声だよ」




空耳?



「そうじゃない。僕はvolkswagen type1,つまり、今君が乗ってる。君の体重は43kg、ヒップはかなり大きめで....」



あー言わないで、そんな事。


思わず叫んじゃった(笑)。信じられないけど、それはワーゲンちゃんの声?

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