人類半殺し計画
人類半殺し計画①
ミンヨウ大陸の某国のとある教会、その一室。
豪華な家具が並ぶ部屋。ローテーブルにかじりつき、中央に置かれた
カトレアは前から右から左から、そして見上げて見下ろして、じっくりと人形を観察したあと、ふぉぉーッと溜め息をつき――
「くぅー、この造形がたまらん!」
と、満面の笑みを浮かべた。
そこへサザンカが駆け込んでくる。
「カトレア様ッ!」
「……サザンカ。おまえ、いつも
カトレアは不満そうにほっぺをふくらませた。
「はぁ……すみません……いいえッ、急ぎです! ついに見つけました!」
カトレアはポカンとした顔でサザンカを見つめ、『はて、何のことだっけ』と、乱れた髪をポリポリと掻いた。
「ついに見つけたのです、あのデ――」
「いわないでッ! 当てるから!」
カトレアはサザンカの言葉をピシャリとさえぎると平らな胸の前で腕を組み、まぶたを閉じて『んむむ……』と首をひねる。サザンカは
待つこと二呼吸。
カトレアは『あ、わかった!』と目を開けると右の瞳をキラリと輝かせ、サザンカへ笑顔を向けた。
「ついに見つけたのかッ!」
「はいッ!」
サザンカが嬉しそうに笑顔でこたえる。
「あのレアものが出品されたのだなッ!」
「いえ。そちらはまだです」
◆
夕刻。とある宿屋。
その一階のにある、酒場。古い造りだが床や柱は綺麗に磨き上げられている。店内には大小十台ほどのテーブルが並び、客入りは八割。客の大半は仕事上がりの肉体労働者風。胸板が厚い屈強な男たちが酒を片手にたわいのない話で盛り上がっている。
「――ったく、やってらんねぇよッ!」
テーブルで黙々と酒を飲んでいた赤ら顔の男が突然声を荒らげ、ジョッキをテーブルへ叩き付けた。テーブルに乗せられたジャガイモフライとサンドイッチとチーズタッカルビの皿が軽く
「おい、暴れるんなら
目つきが鋭い店主がカウンターの中で低い声を出すと賑やかだった店内が一瞬、時が止まったかのように静まり返った。店主がフランクフルトソーセージ焼く音だけが店内に響く。この店主、すでに初老の域に達しているとはいえ、客たちに負けず劣らず頑強な体つきをしている。若い頃はさぞかし暴れまわっていたのであろうか、その声にはただものではない
「……す、すみません」
赤ら顔の男が肩をすぼめて店主へ
その様子を横目で見ていた
「まあ、確かにアイツらは人使いが荒いが、金払いはいいじゃねぇか。我慢して働けよ」
「アニキぃ……」
赤ら顔の男は『アニキ』に頭が上がらないようだが、まだ愚痴り足りないらしい。
「でも、目的も教えられずに毎日モグラみたいに穴を掘ってばかりじゃ、ほんと、やってらんねぇすよぉ……」
「んー? 掘るだけでこうして酒が飲めるんだ。命がけで冒険者をやってた頃よりマシだろ。嫌なら別の仕事を探すんだな」
「そりゃそうですが……クソッ! やっと何かを掘り当てたと思ったら今度は『今日は帰っていい』とか抜かしやがって! お宝を独り占めしようってんだな!」
赤ら顔の男はふたたびジョッキをテーブルに叩き付けようとしたが――店主の視線を感じてその手をピタリと止める。そしてジョッキをテーブルにそーっと置くと、自分の腿をピシャリと叩いた。
「クソッ! ダンチョネ教の奴らめ! アイツらいったい何を考えてやがるんだ!」
ぽん――と、肩に手を置かれて赤ら顔の男は振り向いた。
最初に目に入った肩をたたいた腕にきざまれた赤い紋章。そして、ブロンドの、
「その話、聞かせてくれないか。『ダンチョネ教の仕事』について」
ブロンドの少女は赤ら顔の男にそう言った。
◆
チョイトを発ち、次の街エッサへ向かう旅の途中、アデッサとダフォディルは街道沿いの町『コリャサ』へ立ち寄っていた。
コリャサは大陸東部の大都市エッサと、リゾート地チョイトを結ぶ街道の中間地点にある町だ。町の区画は二分割されている。ひとつはエッサとチョイトを行き来する金持ち向けの高級宿屋街。そしてもう一つは商人や一般の旅人向けの安価な宿屋街。
アデッサとダフォディルの二人が泊っているのはもちろん、安価な方の宿屋だ。
その宿屋の酒場で二人の耳に入ってきたのはまたしても、ダンチョネ教の情報だった。聞いた話をまとめると、どうやらダンチョネ教は仕事にあぶれている元冒険者たちを金で募り、町はずれにある丘に大きな穴を掘らせているらしい。
金払いが良いのでみな黙って言う事を聞いているが、その目的は誰にも知らされていないという。
「ダンチョネ教、なにを
ダフォディルはダブルベッドの端に下着姿で腰かけ、つぶやいた。
その手には町の雑貨屋で買った高級美肌ローションの小瓶を持っている。チョイトでエステにいけなかった代わりにしてはかなり見劣りするが『頑張っている自分へのご
アデッサはいつものように下着を脱ぎ捨てて全裸になるとベッドへ上がる。
「塗ってあげるよ」
そういってダフォディルから小瓶をあずかった。
ダフォディルは軽く頷き、ベッドへうつぶせになる。
「ダンチョネ教め……穴を掘っているのか……」
アデッサは呟きながら寝そべるダフォディルをまたいだ。
そして、尻の上へそっと腰をおろし――
「ふふ。柔らかい」
と、言ってその感触を楽しむように軽く腰を振った。ダフォディルは尻をすこし緊張させる。
アデッサが慣れた手つきでダフォディルの黒いブラジャーのホックを外す。指先が肌に触れるとダフォディルの背中が一瞬、
ダフォディルがシーツに口元を押し当ててひそかに深呼吸をし、体の緊張を緩めようとしている様子が、馬乗りになっているアデッサにはよくわかった。
アデッサは美肌ローションを手のひらに取り、そっとダフォディルの腰へ当てる。ダフォディルの体が大きく反応した。細い指がシーツをぎゅっと掴む。
そのまま背中を滑らせるように塗り広げる。そして、もう一度、今度は両手にローションを取り、なんども背中をすべらせた。アデッサがなでるたびに、ぴくぴくと反応していたダフォディルの体は、徐々に力が抜け、かわりに、体温があがっていった。
「コリャサには遺跡があると聞いたことがある。確か、古代の魔道兵器が関連していたと思う」
「……そ、そう。あやしい……わね」
アデッサの言葉にダフォディルは息を詰まらせながらこたえた。
「なかなかいいローションだね。肌に馴染むよ」
「……ぅん」
小さな肩甲骨、細い腕、脇、首筋へとアデッサはくまなくローションを塗ってゆく。
そして――
「前も塗ってあげるよ」
そう言うと尻に密着させていた腰を浮かせ、ダフォディルの体を抱えて仰向けにさせる。途中、二人の乳房と乳房が軽く触れあうと、アデッサは少し照れ臭そうに笑い、ダフォディルは背をのけぞらせた。アデッサはダフォディルを仰向けに寝かせると、その鼠径部へそっと腰をおろす。アデッサの、手のひらよりもずっと熱い部分の感触が、下着越しにダフォディルへと伝わった。
「んんッ」
ダフォディルが鼻から抜けるような声を漏らす。背中も足もピンと伸びきり、やり場を失い宙をさまよっていた手が、シーツをきつく掴んだ。意思とは無関係に腰がよじれるが、アデッサを
「――ふみぃ」
どこからか吹き込んできた風が白い花びらを二人の周囲へ嵐のように舞い散らせた。
「あはは、ダフォは本当にくすぐったがりだなぁ」
相変わらずの勘違いとともに、アデッサはオイルで光る手をダフォディルの下腹へと近づける――と、同時につぶやいた。
「穴を、さぐってみるか……」
ダフォディルも勘違いした。
「い、いやッ!」
突然の防衛本能に反応して【鉄壁の紋章】が青く輝く古代文字の帯を噴き出す。
「「……あ」」
【鉄壁の紋章】吹き飛ばされたアデッサが壁に激しく打ち付けられた。
ダンダン!
ドアが叩かれる。
「おい、暴れるんなら
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