第9話 続く物語


 尋常じゃないホモ、ランランロットとの戦が終わり3日

 本日キャロット城の円卓にはアーサー及び配下数名が集まっていた。


         ◇


「そしてこちらが今回の戦の戦利金になります」


 そう言いながらテディベアが用紙を配る。

 配ると言っても円卓に座っているのは現在俺と、アズリエルさんが初期に作った3人、それと量産型赤い騎士の生き残り一人、合わせて5人しかいないわけだが・・・随分と寂しくなったものである。


 元々は俺とランランの二人だけだったわけだから寂しくなったというのはおかしいかもしれんが、アズリエルさんが来てから大量の赤い騎士が城を歩いてたからな、同じ顔が沢山いて気味が悪いとも思っていたが、いないのはいないので寂しいんだよ。

 

 感傷に浸りながらも用紙に目を落とすと、これまた見事に今回の損害と同じくらいの数字が記載されている。

 おまけにあれからランランが事ある毎にキャロットを襲撃するようになったから、実質の総収益はマイナスと言っても過言ではないだろう。 


「まぁとは言っても、主力武器だったケツ・ホルグは戦利品として押収したから大した脅威ではないんだが」


 テディから渡された収益欄にある、ランランロット卿徴収金とケツ・ホルグを見て思わず失笑する。

 槍無しランラン程度なら、俺がいなくてもアズリエルさんやその配下がいれば大した損害無く勝利出来る。

 ちなみに俺とランランの男と男の戦いに関しては、素手で殴り合った挙句タイムアップという泥仕合だったので割愛する。


 後ろの純潔は守りきれたとはいえ思い出したたけでも寒気がする、こんな時は我が軍最強の養分にして最強の参謀を見て癒されるに限る。

  

 俺は円卓の周りで鶏を追いかけるアズリエルさんに視線を移す。


「こっこーこっこーこけこっこー」


 ・・・この子は本当にあの時の頭脳派キャラなのだろうか

 なんだろう、同じ鳥類同士惹かれ合うのだろうか?

 溜息を吐きながら顔を覆い隠すのモーションをしていると、唐突に美少女フェイスが画面を埋め尽くす。


「あーさー 元気ない?」

「のわっぷす!?そそそそんな事ねぇよ!?」


 逃げるように反対の画面に視界を移す俺を見て、アズリエルさんが不思議そうに首を傾げる。


 視界の先では円卓3番席に座るエレンと4番席に座るカーボンネックがクスクスと笑っている。

 

「あらあら、アーサー様は可愛らしい事」


 エレンは一時男になりランランに掘られ、ホモという状態異常にかかっていたが、最近では落ち着いて元の女性に戻っている。


「青春ってやつだなぁ!ガッハッハ!溜まってるなら俺と一発ヤルか?」


 カーボンに関してはまだ状態異常が解けていないので絶賛妻のエレンに頑張ってもらっている、今の彼だと一人で俺の傍に置くことは出来ない。


「うるせぇよ!生まれて三日のお前等に言われたくねぇんだよ・・・というかぁ!」


 俺は少し大きくなったエレンの腹を指さす。


「なんで三日で身ごもってんのぉ!?頑張って状態異常を解けとは言ったけど限度があんだろ!?」

「きっと ディープな方のキス 大人」


 俺の半狂乱な叫びに、アズリエルさんが訳の分からない事を言い出す。

 この子は本当に何を言っているんだ!?

 前より少し長くチャットを打てるようになり、少しだけ漢字変換を使えるようになったが、余計にアズリエルさんが何を考えているかがわからなくなってきた!


「ま、まぁ落ち着いてくださいアーサー王、はい、落ち着きますよ」


 俺はテディから渡された紅茶を一杯。

 キャラの混乱は解けたがリアルの俺の混乱が解けないんだが?

 ちなみにテディは戦後処理とか色々便利なので、俺の執事騎士として扱っている。


「まぁゲームだからな・・・気にしても仕方ないしそろそろ軍備を整えるか」


 俺がアズリエルさんに視線を移すと、アズリエルさんが用紙と睨めっこする。


「とりあえずは重歩兵だな、キャロット城がどの兵科を多く採用しているかバレるのは痛いが、コストから得られる能力を考えるとこいつは外せない」

「わかった」


 アズリエルは頷きながら用紙を記入していき、ピタリと動きを止めて顔だけ俺に向ける。


「せいべつ は おんな?」

「・・・別に男でも良いぞ?」

「ん!」


 少し嬉しそう?に再び用紙を記入していくアズリエルさんを見ながら息を吐く。

 最初は今度もハーレムかな?っとは思ったんだよ?思ったんだけど・・・

 用紙が宙に浮かび、人の形をした物に触れるアズリエルさんを見て何とも言えない心境になる。

 

 アズリエルさんはあくまでキャロットの養分、なのに何なんだこの気持ち?むしゃくしゃするぜ!


「おや?アーサー王、どこかにいかれるのですか?」 

「ちょっと散歩したい気分なんだよ、ついでにケツ・ホルグも売って来るとするよ」


 頭を掻きむしりながら円卓から離れ、街の方に足を向ける。


「しかし投資もしてないのにいつ錬金工房なんて出来たんだ?」


 基本的に領地の建物はその地の領主が投資をしないと建つ事もなければ成長する事も無い。

 例外の報告は今まで攻略サイトで見た事もないが・・・

 まぁ俺が作った店じゃないからもしかしたらケツ・ホルグも買い取ってもらえるかもしれんし、この際俺の糧になるなら出所不明でも何でも良いや。

 

 鼻歌混じりにケツ・ホルグを片手でクルクル回す。

 おっと手が滑った。


「にゃにゃ!?」


 あまり槍の扱いに慣れてないせいで落としてしまったが、落とした先に不幸にも小さい女の子がいたようだ。

 なるほど、大の大人がモザイク処理のかかった槍を女児に・・・事案だな。

 というか本当にこれ通報されたりしないよな?自分の領地の牢屋を監査する気はないんだけど?


 ビクビクしながら少女に手を差し伸べようとして、その姿に絶句する。


 黒い髪は光沢でも塗ってあるかのように艶やかで頭頂部には猫の耳、雪のように白い肌は転んだ拍子にほんのり赤くなっており、なんて物ぶつけるんだと言わんばかりの切れ長の瞳は獣のよう、おまけに裾の短いフリフリ和服なせいで視線に困・・・いや、俺は堂々と見るんだけどな。 

 こんな装備をしている奴がNPCな訳が無く・・・かつ俺はこいつと昔会った事がある。

 

 俺が転んだままの少女のスカートを堂々と覗いていると、少女は「プンプン!」と言いながら立ち上がる。


「ちょっとちょっと!いきなりなんて物ぶつけてくるにゃ!」

「あ、いや、事故なんだが」

「事故!?そんな言葉でみゃーが納得するとでも!?」

「おいおい、この領内での俺に大しての攻撃は極刑に処すぞ?・・・というか!」


激怒しながら俺のすねを蹴りつける少女に抗議の声を挙げる。


「なんでこんな所にのぶにゃががいるんだよ」



                 ・・・TO BE CONTINUED

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