第4話 尋常じゃ無いホモ
プリテン キャロット領配下、ランランロット
ピッチピチの純白タイツに、形容しがたいイチモツのような形をした槍を持つアーサー王の側近。
その槍の真名は、アイルランドの英雄クーフーリンが持つゲイ・ボルグの兄弟槍・・・と勝手に言われている、ケツ・ホルグ。
兄弟槍でありながら敵の急所を穿つ能力は健在、伝説の槍から放たれる一撃は敵の
故にキャロットに攻め入る男は必ず尻の装備を強化する事を忘れてはいけない、それが決して無駄なあがきだったとしても、気を許したと悟られればリアルでも掘られると言われている。
そんな彼の正確はとても温和であり、無類の男好き。
♂であればどんな人間でもホイホイと食っちまうし、中身が♂であれば女アバターにも擦り寄ってくる、ちなみに美形であれば尚良いらしい。
その性格のおかげかケツ・ホルグとの相性は最高、まるで辻斬りのようにケツを掘っていく姿から、プレイヤーの間では現代の人斬り以蔵になぞらえ、ケツ堀ランランと恐れられている。
◇
「アズリエルさん、しばらく尊い禁止で」
「わかった」
息も絶え絶えに、冒険者ギルドから城に向かっている俺はアーサー、そして隣を歩く無表情っ子は新規ギルドメンバーのアズリエルさん。
本日は入団初日という事で、教育・・・・もとい城下街の案内をしていたのだが、アズリエルさんが冒険者ギルドで少しおいたをしたのでしばらく追い回される事になったのだ。
まぁその話はどうでも良い、精々俺の事を愚ーサーと侮辱した一般市民が色々やらかしてしばらく奉仕活動をする事になったぐらいだ。
「さて、そうこうしてる内に城までついたわけだが」
「ちかい でっかい」
アズリエルさんは驚いたよう?に城を見上げている。
ちなみに表情は相変わらず読めないので脳内保管する形をとる事にした。
「まぁ狭い領地だから近いんだよ、街の入り口から徒歩5分、素晴らしいだろう?」
「すごくいい」
「スパシーバ、初めてアズリエルさんから肯定の言葉を聞いた気がするよ」
俺は得意気に城の扉に手を当てる。
「そしてここが我がキャロット城、サービス開始後一度も落ちた事が無い難攻不落の要塞です」
「おお」
ふふふ、そんなに期待に目を光らしちゃって!俺じゃ無かったら今の「おお」じゃ何も伝わらないぞ?
ギィッという音と共に扉が開き、中世ヨーロッパの要塞のような室内があらわになる。
「おお」
アズリエルさんはしばらく目を丸く?したような感じで城の中を徘徊しだす。
ふふふ、好きに見て好きに探索すれば良い!
久しぶりに自尊心を満たされた気分になり、天狗になっている俺の視界の端でアズリエルさんがガサゴソとタンスを漁り出す。
「なにもな い」
「・・・勇者行為に関しては許してないからな?」
「ゆーしゃこうい?」
もしかして勇者行為の意味を理解していないのだろうか?
ま、まぁオフラインゲームでは当然の行動だし、オンゲー初心者のアズリエルさんなら・・・いや、やっぱおかしいわ。
俺がニート細胞を働かせて見逃すべきかペナルティを与えるか考えていると、アズリエルさんが再びキョロキョロしだす。
「だれもいな い」
「・・・ああ、実はこの城には俺とランランっていう男しかいなくてな」
「くにとり なのに?」
「俺とランランは統率力のステータスが0なんだよ、このステータスは1につき100人まで軍を雇用できるんだが・・・つまり」
わかるな?とアイコンタクトを送ると、アズリエルさんが静かに頷く。
「まぁそこでアズリエルさんを拉致、もとい勧誘したんだけど・・・統率力はどのくらいあるんだ?」
翼人種は統率力がとても高いので少し期待している、でもまぁ統率力はランダムだし、プレイヤーが高い値を持ってる事なんてほとんどない。
ここで俺やランランと同じ0だったとしても問題は無いんだけどな、人の事言えないし。
アズリエルさんはしばらく無言で虚空を見つめると、チャットアイコンが現れる。
「98」
「そっかそっか98か、やっぱ翼人種でもそんなに高い数値は・・・98!?」
いや高すぎるだろ、何その数値!?
じゃ何か?この子一人で約1万の兵士を雇用できるの?どんだけだよ!?
「・・・まぁ統率力が高いと基本ステータスが低くなるからな、やっぱウチのギルドで頑張った方が良いと思うぞ?」
「そっか」
・・・これはいよいよアズリエルを手放す訳にはいかなくなった。
アズリエルが少し落ち込んだように地面を見ているが、そんな事はどうでも良い。
若干娘的扱いになりつつあったが、これだけの才能があるならばキャロットの養分としては僥倖。
最悪前線に出なくても兵団だけ派遣してくれれば良い・・・
俺は黒い笑みを隠すように二階に上がる開けた階段を登ろうとして・・・やつの存在に気が付く。
「ああ、我が親愛なるアーサー!お帰りなさいま・・・せ?」
満面の笑みで俺を出迎えてくれたランランの顔が一瞬で鋭くなる。
「アーサー、隣の女は誰ですか?」
「誰って新メンバーのアズリエルさんだよ」
ランランはアズリエルに少し目を向けると再び俺に視線を向ける。
「少しお話があります」
やっぱ来たか・・・
俺はヤレヤレとアズリエルさんを手招きする。
「悪いけどちょっとランランと話をしてくる、何処か暇を潰せそうな場所教えとく」
「いい もうねる時間」
はて?まだ20時にもなっていないが・・・まぁあまり聞いても仕方ないか、そういうロールプレイなんだろう。
「わかった、じゃあまた明日」
「うん」
俺は粒子となって消えていくアズリエルに頬をゆるめると、ランランが待つ怪しい気配を放つ部屋に入室する。
そこはまるで面接室のような部屋が・・・おいおい、ここはさっきまで食卓だったはずだが?どうやって改装したんだ?
ゲーム特有の不思議現象に頭を捻りながらも、ランランの座る椅子の対面に座る。
「私は反対です」
「開口一番あんまりだな」
ランランは机に立てかけている槍の穂先を撫でる。
「今まで私とアーサーだけでなんとかなってきたでしょう?」
「まぁな、けど折角の国盗りゲーだぞ?俺はやっぱ天下統一したいし、ランランも良い加減自分の領地を持っていくべきだと思うんだよ」
「私はアーサーの配下である事を誇りに思っている、自分の領地はいらない」
「さいですか」
俺はインベントリからレッドブルを取り出して紅茶カップに注ぐ。
んん、やはりこういう場では優雅さが大事だと思うんだよ。
「それにもしあの娘が我が領地に加われば、私達の不敗戦術も使えなくなるぞ?」
「その分アズリエルさんにはずば抜けた統率力がある、100%負けない事は出来なくなるかもしれないが、その分勝つ事が出来るようになる、攻城戦を仕掛けて領地を奪う事も出来る」
「りょ、領地が欲しいのであれば私が奪ってきます」
「奪いに行ってる間キャロットはどうする?俺はお前みたいに伝説クラスの武器も無いし、1日にログイン出来る時間は精々22時間だ、間違いなく陥落するぞ?」
俺の反論にランランが少し顔を渋らせる。
まぁアズリエルの統率力は俺も今知ったんだがね、なんか全部計画通りにいってるカリスマ的存在みたいでカッコ良くないか?
なんか興が乗って来たし、次にランランが何か言ってきたら少し遊んでみよう。
「ですが・・・もしかしたらあの娘は敵国のスパイの可能性も・・・」
「意義あり!ランランはさっきから言っている事が支離滅裂だ、何かを隠している風に見える」
「!?」
ランランがごにょごにょと妄想話を喋り出したので、机ダーンをしてみた。
効果はバツグンだ!
ふっふーん!どうよあのランランの驚いた目!作戦大☆成☆功
ドヤ顔をしながらランランの次の言葉を待つ。
「あ」
「あ?」
今の俺はひじょーに機嫌が良い、さぁ何でも言ってみるが良いさ。
俺は優雅にレッドブルを啜る。
「あんな女がアーサーの傍にいるのが気にくわないのですよ!アーサーの純潔は私のものだぁ!」
ブフーッ!
うわ・・・こいついきなり何言ってんの?思わず吹き出しちまったじゃないか。
なんでもとは言ったが限度があるっつうの!
「そうです!あのような女が私とアーサーの愛の巣に」
「愛の巣言うな」
「当然のように住みだし、あまつさえ私の旦那であるアーサーの」
「誰が旦那だ」
「お傍仕え?っは!体目当てなのがバレバレではないか!アーサーの体は頭の先から足の先まで私の物だ!」
「体目当てはてめぇだろうが!このホモ野郎!」
俺は目から怪しい光を放つランランから距離をとる。
「アーサー、これでわかったでしょう?我が儘を言わず、私と一緒に今まで通りの生活を続けましょう?」
「今の会話で俺を説得できると思ったのか!?」
なんかめんどくさい彼女見たいな事言い出したぞ!?
俺がこめかみを押さえて溜息を吐いていると、ランランが再びクワッと目を見開く。
「私がこの領地にいる限り!誰一人として、アーサーの側近にさせるつもりはない!」
「・・・そうか、そこまでの覚悟だったのかランラン、わかった、俺の負けだ」
俺は込み上げてくる感情を抑えながら、ギルドメンバーの加入脱退画面を開き、ギルドメンバーの欄をクリックする。
それを見たランランは顔を輝かせる。
「アーサー!流石は私の見込んだ」
【ランランロットが キャロット領から追放された】
「ランランは出荷よ~」
「アーサーーーーーーーーーー!!!!!!????」
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