第百七十一話 ムータン引っ越し、支える者達
「俺らはやっぱ最後かな」市
「そうでしょうね。皆にギリギリまで稽古付けてなきゃ」タカ
「一度行ったことあるといえでも、やっぱりアレだ、少し不安というか怖いと言うか、、」市
「あはは、怖さをわかって一人前と師範言ってましたよねー。僕はまだそこまで行けてないようです。ワクワクが大半です。」タカ
「お前はユータと親友だもんなぁ、、」
・・・
でもタカは判っていた。もう裕太と自分は天と地の差が出来てしまっていて、昔のようには行かないんだということを。
ユータは責任を持って生きている。国を作った責任。一生背負って、その国を良くするために一生を費やすだろう。
僕はそこで一緒にやっていくつもりだ。が、僕が出来るところとユータ達ができるところは全く違うだろう。
でも、、
いつか、ユータのところまで届きたい。
今、市とタカが居るのはユータの実家のある世界。ムータン王国王都。
王宮敷地の端にあるユーリの小さめの邸の隣に、市とタカの住処でもある道場が作られている。
今は2以外にも新しく1人いる。日本の市の道場の練習生だった山田隆一だ。名前だと紛らわしいので山田とかヤマとか呼んで居る。彼も、「異世界に住めるなら移住したいです。戻ってこられなくなってもいいです。」と決心した。市とタカはもう決心していた。
市はもう血の繋がった家族はいない。だがタカとヤマは両親も兄弟もいる。どう話そうか、、が悩みどころだった。
が、
「ダンマス王国の王宮に仕官する、なので多分もうなかなか帰れないだろう」
と言えば、情報が無いダンマス王国、日本から連絡のとりようが無くとも仕方ないとなるだろう。
そんなえたいの知れないところに、と反対された。が、押し通した。兄弟がいたのがよかったのだろうと、2人は思った。
兄弟は理解してくれたのか、反対はしなかった。むしろ親の世話は任せろと言ってくれた。
なので、図らずとも2人は兄弟に同じことを言っていた。「多分、もう帰れない」と。
市とタカは皆に稽古を付けた後、道場で3人で稽古をし、風呂で汗を流した後に街に出て夕食を食べている。
街にある普通の食堂だ。
ヤマはタカと同じ世代。1つ下だかだったか、でもあまり気にしない。
ヤマは料理が出来る。なので道場で作りますと言ってくれたが、
「折角王様から良い給金もらっているだ、街で使わないと」と、市は昼と夜は街で食べようと提案し、皆同意した。
朝は少し食べるだけなので、ユータからもらっている向こうの世界の干し肉かひもの、それと握り飯1つと味噌汁だけだ。
向こうの食べ物を食べていると、魔力の付きがよくなる気がする3人だった。
市とタカはかなり魔力が着いてきている。今でも寝る前には魔力を使い切ってぶっ倒れて寝入っている。
まだ誰も教えていないが、魔力量的には転移くらいできるようにまでになっている。ドラゴニアの中堅のできる子レベルだ。
ユーリもダンマスも、市達には向こうに行ってから教えようと思っている。扉を抜けるまではなるたけ魔力を多く保持していてほしい。なので消費の多めの普段遣いの魔法は教えていない。
サイコキネシスタイプの飛行魔法ならさほど消費しないので、教えた。距離のある移動はそれで足りるだろう。
日曜には、未だに日本の道場に教えに行っている。今は3人で教えてる。転移扉が道場にあるから楽に行き来できるからだ。
道場の練習生はなぜか増えている。が、教えられるのはあと1−2年くらいか。ダンマスがそのくらいで引っ越しが終わるだろうと言っていた。
引っ越しは今は毎月5千人だが、そのうち1万人になる。
1年も経てば、最初に行った1万人くらいはサブリーダーほどにはなっているだろう。そうすれば、受け入れ先は増やせる。南の小島から国内転移門を使って来るので、極端に言えばゴンザールだろうか北西王国だろうがラットビアだろうがどこでもいいのだ。
毎日千人送れれば月に3万人。毎日3千人送れれば月9万人。あっというまに40万など終わってしまう。
最初の者達を鍛え上げられればいいだけ。本人達は何も知らないのだから、教える者達が頑張らねばならない。
ーーーー
その教える者達。
各班のリーダー、サブリーダー達はケロッとしている。若いっていいよな!!
しかし、
特に銀月メンバー、歳なのか。かなり疲れが溜まっている様子だ。
ドラゴニア防衛軍の冒険者でも、歳が20後半以上になると、ガンダ達同様になっている。
「あまり使うな、と言われたけど、、今が使い時なんだろうなぁ、、」
といいながら、ドーラはストレージからデカイ木箱を幾つか出した。
「ガンダ、これ、ダンマスから預かったポーション。体力がバテバテになった時に飲ませろって言われていた。でも、余り使わずに自然に回復させるほうが良い。とも言っていた。なので、うまく使ってくれ」
と、ポーションの木箱を渡した。
ガンダは疲れが取れないでいる者達に数本ずつ渡し、できれば使わないほうが良いとのことだ、と注意も伝えていた。
流石にユータはまだ若い。風呂に入って疲れを取って飯をがばがば食べてぐっすり眠れば、翌朝にはほぼ回復している。
今は研修に猫の手も借りたいくらいなので、ドーラとユータも教官や引率で参加している。
もう一般の第一陣5千名のうち、1000名くらいが教官補助として参加している。来月には第二陣の1000名くらいが参加できるだろう。
防衛隊も全員参加しても足りなので、ギルドからふさわしい者達をよこしてもらっている。
ーー
矯正村から戻れたのは、今の所5名。2ヶ月後に子供に会わせたのが効いた者達。会わせた直後から一気に人が代わったようになり、周囲のクズの言葉を無視して頑張った。
クズどもにも子供を会わせたが、その直後「もう会わないでいい。追放されても仕方がないと思う」と、子どもたちは見放した。
村で一番大きな家を得た者が代官気取りになっており、自分は何も働かずに他の者達を使役していた。勿論暴力を背景に。
なので、ドーラとユータはその者に選択肢を提示した。
「一人用の村に住むか、追放されるか、を選べ。選ばない場合は俺が決める」ドーラ
考える時間を一晩与えた。
その男はその晩の夜中に逃げた。が、村から外に出る道は森に入ったすぐのところで終わっていた。
森を舐めて分け入った男は猛獣に襲われた。
ユータが気づき、転移して助けに行ったので大怪我を負っただけで、それもユータの回復魔法ですぐに治癒された。
その後、その男はゲスザンスの大きい街に飛ばされた。
ーー
ダンマスがドラゴニアに時折帰ってくるようになった。
「もう転移門も調子良いですし、使うときだけ門の側にいればいいので、」と。
ユーリはというと、
「向こうの世界に私かユーリがいなければならないので、まぁ、まだ帰ってこられませんねぇ」
と、代わってやるつもりは無いらしい。
こっちに帰ってきても、自分のダンジョンに戻ってメンテなどいろいろしなければならないことをしているようだ。
あと1年も経たないうちに引っ越しは終了するだろう。
「そしたら、のんびりしまくるぞ!」
と、皆同じく強く強く思っていた。
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