第八十六話 残りのクズども


人の口に戸板は立てられないということで、ドラゴニアに入ってくる冒険者たちが、向こうのギルドの情報を持ってきてくれる。

情報っても、主に各ギルド支部周辺に流れている噂だ。


ギルド本部が雇った傭兵を殲滅され、面目が潰されたと本部の連中が騒いでいると。支部の上の方も、冒険者がドラゴニアに行かないように締め付けが激しくなっているとのこと。


「え?逆だろ?ドラゴニアに行かせたくないなら、ギルドの取り分ゼロにすりゃ誰もこっちに来ないだろ?」ドーラ


ご尤もである。ドラゴニアは売上の5%を手数料として取っている。仕事が増えればギルドの収入が増え、OTもきちんと出せるわけ。暇ならOTする者はいないので収入も少なくて良い。基本給はゴンザール持ちなのだ、ゴンザール王宮直属組織になってるから。


でも、ゴンザールとドラゴニアが言っている北の森、北側の国々が言っている南の森に、冒険者が行くのを禁止した。そっちの方に少しでも行くと、違反として罰金らしい。いいがかりつけられてその場でカネをむしり取られる冒険者が続出とのこと。

「国の兵士や、ギルドに雇われた傭兵の良い収入源になっている。奴等の給料やすいので」

だそうだ。


だから冒険者たちは余計居心地が悪くなり、峠の方か南の森(ドラゴニア側では北の森)を通り抜けようとする。

今は峠付近で邪魔をする者達はいなくなった。とりあえずあそこの領都と王都がなくなった(81話、78話)ので、あの国(他の奴等)が動くまでフリー状態だ。

監視所の報告に因ると、夜昼無くひっきりなしに人びとが峠を越えているとのこと。


「・・・万人単位になったら、今の場所じゃ足りないよな?」

ガンダの危惧も当然だ。


「ま、一杯になったらまた俺とユータで近場を切り開いてやるから。それを新入植者たちにも見せつけるほうがいいだろ?」ドーラ

「まぁ、、一度わからせておくほうがいいけどな、どっちにしても」ガンダ

「ですね、あっちの者達は一癖もふた癖もあるものも少なくないですからね。」

というジョニーは森の北側の国々を時間を掛けて通ってきたので、よく知っているのだ。


峠で篩を掛けて入るが、入植してから変わることもあるだろう。

図々しくなるやつ、欲深くなるやつ、我儘になるやつ、そういった者共はドラゴニアには必要ない。

できればそうならないようにしたい。本当に山よりでかいドラゴンが支配している国だとその目で見れば、少しは自重するだろう。


ちなみにゴンザールから入ってきた者達の責任は王が持つ。なので、街から警告を受けても良くならない場合など、王の判断で退去させる。その場合、船長に当該人物を見せてブラック登録してもらう。もしモモンガの守備範囲内にはいったら、その瞬間飛ばされる。


ドラゴニアとゴンザールは、すべての者が自分の言動に責任を持って生きている。責任を取る、とか逝かれた基準はない。責任を持って日々生きていれば、ろくでもない行動はしない。でも、間違いは容認される。意図的行動を間違いだと嘘付いた場合、その時点で、その者は飛ばされる。自分の言動に責任を持つ、というのはそういうことだ。クズの居る余地は全く無い。

孤児の子ども達はそれができているのだ。大人ができないわけないだろう?


というわけで、ドラゴニア国民である子達がダンジョン側の街で商売や警備をしてても、騙したり難癖付ける大人などいない。もしいても、その場で周囲の大人たちが子供に加勢してクズを取り押さえるかボコボコしてダンジョン入り口に放り込むだろう。その時点で飛ばされるので、処理が容易でいいのだ。



「なので、向こうのギルドは必ず何かしてくると思う。」ジオ

数日、北の森の吊橋の警備詰め所に居たので、北から入ってきた冒険者達にいろいろ話を聞いていたのだ。

冒険者たちも、吊橋を渡りきり、やっと緊張を解くことが出来て、茶や食い物を馳走になりながら知っていることを話してくれた。


一部では国の軍と一緒になってなんかやらかすんじゃないか?とも言っているそうだ。

そういうこともあり、強制徴兵とかそんなのに巻き込まれちゃたまらんと、ほぼ全ての冒険者達のみならず、男の一人者も大半は逃げ出しているか逃げる算段をしているとのこと。

家族連れだと、やっぱ峠回りのルートでなければ危険なので、大回りしているとのこと。


峠の向こうの国、つまりユータ達が以前いた国の王都は滅亡している(78話)。教会の本国もその時に滅亡させている(同)。そして先日峠の向こうの領都と領主を滅亡させた。多分、もう峠ルートを邪魔する者は向こうの冒険者ギルドか残った他の領主ら以外ないだろう。でも最も峠近くの冒険者ギルド支部は領都ごと消え失せているので動きにくいはずだ。


「つまり、向こうのギルドと、まだ生き残っている国の王族とソレに加担する貴族達が消え失せない限り、難民流入が続くわけだ。」ドーラ、かなり怒ってきている?


ウチなんか自給自足で質素に暮らしてるだけで皆幸せなのに、、欲は欲を呼ぶ、と言うように、意地汚いゲスの欲は雪だるま式にでかくなっていくようだ。

生かしておけばおくだけ、被害はでかくなっていく。


「わかった、ユータ行こう。一刻でも早いほうがいい。で、消したほうがいい、まで含めて、どれだけなんだ?」ドーラ

「まてドーラ、今そこらへんの王家まで全部消したら、ゴンザールとドラゴニア以外の地域は支配層がいなくなり混乱だけになるんじゃないか?」ジオ

ふーむ、、と唸る皆。


「でも、今でも似たようなもんじゃない?各地領主が残っているし、そいつらの誰かが王になるだろう。いいやつが王になれば交流すればいい。悪党がなったらまた消せばいい。いい国ができるまでそれを続けていけばいいんじゃないかな?」マキ


「だよな、俺らが向こう側の面倒までみる必要はない。悪だから退治するだけ。後は、そこの奴等が全部退治されないようにまともになる努力をすればいいだけだ。それはそこの者達の自分のことだ。自分のことには自分で責任持てばいいだけ。俺らに頼るなってとこだよな。」ドーラ


「まぁ、それが当たり前だよな、子供だって、うちじゃそうしているし」ガンダ

「まぁ、、そうだな」ジオ

「うむ、、だな」ザク


「決まりだな」ドーラ。


んじゃ、と、向こう側をよく知っているジョニーを中心に、潰さねばならないことろ、をチェックしていく。

最初は「めんどくさから全部滅亡が手っ取り早い」とドーラが主張し、マキもユータも、いいかな?と傾いたが、

「できれば、少しチャンスをあげて欲しい」とジョニーがたのんできたので、飲んだ。


今王家が残っている国、つまり王都が残っている国は2カ国らしい。

元の国の東の国、これは先日ユータ達が元いた国に攻め込まれたけど、王家は降伏し、まだ滅亡していない。

聖光国にも協力し、向こうの冒険者ギルドの拠点も多い。


その東の一部と北に広がる大きめの国。ここも冒険者を見下すような連中だという。聖光国を隣に持っていたが、聖光国が滅亡してからは教会をすぐに廃止し、関係者を処分したという。ただ、ゲスザンスと隣接するのに、ザンス王家が滅亡しても全く動かない。昔から隣国に戦争を仕掛け無いようだ。拡大欲は見られない。

商人にとって魅力がない国らしく、あまり人の出入りがないので情報はない。


それらの話を聞いたあとで、

「とりあえず、両方の王に直接あってみて、ドラゴニアに降るかどうか聞いてみては?」

というマキの意見を採用してみるか、と楽しげにドーラが言ったので、とりあえずそれにしてみる。


勿論現地に行くのはユータとドーラ。

子供のなりを見て見下すようなら即国ごと燃やすから、いちいち選っててもめんどくせー、と。

確かに安全策なら、全て消すほうがベストである。選って間違えてゲスを残したら、被害を受ける者が多数出るだろう。見知らぬ他国の者より、自国の仲間優先はアタリマエのことだ。


「んじゃ、行くか?」ドーラ

「いつでもおk!」ユータ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る