第五十七話 初国交!
ジョニーも孤児だった。
俺の頃は孤児が多かったんだ、戦争が多かったし、そのため高い税金が払えなくて奴隷にされた者も多かったらしい。借金の年月分奴隷やってりゃ開放されるんだが、戦争に連れてかれてその解放前におっちんじまうことが大半だったとか。うちもその口かなぁ、、両親ともいなかったんだから、多分そうだろう。
教会の孤児院で育てられたんだが、、文句言える立場じゃねーけど、ひどかった。教会の者達は、ほかの人目があるところでは質素な暮らしをしていたが、裏ではかなり派手だった。俺らは子供だからわからんだろうとたかくくっててな、俺らはそういうのを見て暮らしていた。
いつもひもじい暮らししていて、なにかあるとすぐ飯抜きにされる。あそこがまだ汚い、飯抜き。顔が気に食わない、飯抜き、ってな。おべっか使う奴らはいい目見てたけど、俺はそんな気にならなかった。
だからとっとと最低限でも冒険者の仕事できる歳になったら出たよ。7歳からできるんだ。
採取とか溝浚いとかの仕事が無い場合、街のゴミを漁り、売れるものはキレイにしたり直したりして売った。
盗みとかやる奴らもいたが、俺は嫌だった。そんなんやったら、教会の奴らと同じところに落ちちまうと思ってな。
でも、見ててくれる者はいたんだな。
そのうち、冒険者が俺に稽古を付けてくれるようになった。
あそこらのギルドは冒険者を食い物としてしか見ていないから、教練とかやってくれない。
が、ベテランの者達が、やる気のある者を、暇な時に稽古付けてくれてたんだ。
オレもあるベテランに気に入られて、その人も孤児上がりだったんだけどな。
使い古しの剣を俺にくれて、狩りにも連れてってくれた。
俺が、この借りはいずれ返す、とか、ガキのくせに大層なことを言ったら、
「お前がベテランになったら、初心者を見てやってくれ。それでチャラだ」
ってな。
その人は、俺が独り立ちできるようになったら東に向かって出ていった。
「この国を、なるべく早くでろ。東に向かえ。海伝いに南に行くと、良い国があると聞く。」ってな。
俺が装備を揃え、一人で森でも生きていけるようになった時、おれは国を出た。
それから何年もかかって、今ここにいる。
お前たちの国が羨ましいよ。
そういう話をしながら、ジョニーさんは地図を埋めていってくれた。
ーー
それから数日、街でのんびりした。
狩りはしなかった。
俺らがやると、皆の分を狩っちゃうから。
でも、俺(ドーラ)とユータは魔法使いや剣の初心者の相手をしていた。
模擬戦を少しでも多くやってやれば、その分そいつらの経験になるから。
俺らが今彼らにできることっつーたらそんなことくらい。
数日そんなこんなしていると、お呼びがかかった。
「明日、できる。やってくれるか?」領主
「ああ、やるとも」俺(ドーラ)
「うん、できます」ユータ
翌日早朝。ジョニー、ギルマス、領主が一緒に行く。
荒れ地側からブレスを吐く。海側に街がない場所に向けて。
何度も吐き、幅がかなりの広さになった。
「幅、1キロくらいあるね」ユータ
両側が魔獣の森だ。両側に安全地帯や所々に茶屋・飯屋など設けるにはちょうど良いだろう。
深さが少しあるので、左右の側を渡るのは橋が必要かも知れない。
でも海から荒れ地に向かうにはその谷底を通ればいいので、魔獣に襲われる危険性は少ないだろう。
谷底は、それから数日掛けて俺とユータで均して、雨でもぬかるまないキレイな道にした。そして20キロくらい置きに、はばをでっかくして、宿場を作れるようにした。
街道完成後を見た領主は駅馬車を通せる、と喜んでいた。
馬車が増えれば冒険者が助かる。
この国の森は狂暴な魔獣が多い。他と比べても、ココ並の危険な森はあまり無いだろう。
でも、それが魔石の宝庫というわけだ。
冒険者が、狩り以外であまり疲労しないようにできれば、彼らは長生きできる。
行き帰りが駅馬車とか、宿場が多くてあまり野宿しないで済むとか、そういうことだ。
俺らの仕事が終わりに近づいた。
その晩、俺らの宿にギルマス、領主とジョニー、そしてもう一人が来た。
それを見て、宿の主人は他の客を外に出そうとしたが、
そのもう一人は
「よいよい、皆にも関係あることじゃ」とのたまい、跪いている皆を楽にさせた。
「さて、もう勘付いたろうが、、儂はこの国の王、ペレルギウス。今回の件の感謝のために、そして、お主の国と国交を結びたいため、そのお願いに、ここに来た。
ドーラ殿、お主、ドラゴニア王国の王族と違うか?」
「・・・ああ、そうだ。」
「よかった。あなた達、貴国の尽力によって、我が国は大いに救われた。感謝してもしきれない。この恩を、どう報いたらよいだろうか?」
「特に、いらない。ジョニーは言った。ここの領主も王も、、、、、いいやつだって。だから俺らはやりたかったからやったまでだ。恩に感じてくれるんなら、このまま良い国にしていてくれよ。」
「言われるまでもない。これからも、変わらずに。誓おう。」
「そして、うちの国との国交、、か、、、遠いよ?」
「そう聞いている。でも、街道を作りながらでも、何十年かかろうとも、ドラゴニアとの道を作りたい。」
・・・
「ユータ、、どうすりゃいい?」
・・・・
「うーん、、、音速で休まず半日以上の距離だよねぇ、、地球だと一周のさんぶんのいちくらい?
やっぱ転移扉しかないかなぁ、、」
「まぁ、とりあえずはそれだよなぁ、、とりあえずそれ作って、向こうと会わせるしかないよな?」
「うん、んじゃ今から作るね、、どこにしよう?」
・・・
「えっと、、ユータ?何するの?」ジョニー
「うちの邸とつながる扉を作るんですけど、、どこがいいでしょう?」
「「・・・・」」
「いや、このくらいで驚いちゃだめですよ?おふたかた!!」ジョニー、領主と王様にいい聞かせる。
ギルマスはわずかに驚いただけだった。ドーラに高空に転移させられたショックよりマシだった?
「じゃ、俺がダンマスと連絡とってみるから、、、、
・・・あ、ダンマス、まだ領地にいるの?よかった、、あのさー、東のあの国に着いて、いろいろあって、今王様達と会っているだけど、ウチと国交結びたいって、、ガンダに聞いて?これから連れて行っていいか?って」
・・・・・・
「うん、、いんじゃね?一応名目は王宮だし、、、食事?、、ユータの世界のがいんじゃね?珍しいだろ?え?ダンマスまだ食べてないっけ?んじゃ一緒でいんじゃね?ダンマスもダンジョンの王様だろ?おなじじゃん?
・・・・・・うん、んじゃユータが扉作ったらすぐ行く、、、わかった、半時くらいして?あましカッコつけないでいいよ?うち貧乏だからカッコつけてもしかたねーじゃん?・・・・・あっはっは!だよなー、、・・・・・・うん、ケーキは美味いの用意してねー、、んじゃあとでね!」
「・・・なんとなく、わかった、けれども、、、信じられないが、、事実は事実なんだろう、、実際に巨大ドラゴン、この間見ちゃったし、、、」
と、ギルマスはじめ王様達が何か苦悩しているようだが、ひとだからそんなもんだろう。
でかくなったドーラは山程度あったので、遠くの街からも見えたようだ。
「んじゃ、、あ?」
「うん、もうできたよ?」ユータ
っすが、、慣れてるね?
でも宿屋の壁に?
(当然、あとで領主の邸に持っていってそこに付けた)
ーー
「あっはっは!そうですか!お国はできて1年も経っていないのですか!!で、もう広大な農地も、川と呼べるほどの水路も、大きな街も、防護施設も、更に、こんなオイシイケーキとやらも、、できちゃうんですね!」
領主さん、なんか異常なテンション、、、
この部屋は一応名目上王宮の、広間。
普段は使ってない。なので急遽なんか敷物を強いて、ソファを用意して、などは皆ダンマスが作ってくれたらしい。
でっかいシャンデリアも。
で、
ドーラがダンジョン8階層主だったと紹介。一応この国の王だと。
その上司のダンジョンの王、ダンマスも紹介。
この国を仕切っているのが、銀月のリーダー、ガンダ。
そして銀月のジオ、ザク、満月のマキ、テイナ、ニヤがリーダとして現場を統括。
で、孤児院の院長先生。皆の親代わり。よその孤児院から子どもたちを引き取っていること。ほぼ全員が孤児だということ。
その子どもたちが、この国の重要な国民で主戦力だということ。
ユータのことはドーラのパートナーとして紹介。まだ全ては話せない。
ユータのことはウチの最も重要機密だ。(ドーラ)
ダンマスもそれに同意してくれていた。「あの大魔法使いの匂いもしますね」とも言った。
あの大魔法使いの後継者と言っていいのかどうかわからんが、その重要性は理解して「ダンジョン全てをかけても守りましょう」とまで言ってくれたのだ。
簡単に明かしていいことではないのだ。ユータ自身も気がついていないようだけど。
その東の国は、最初に国を起こした者の名を冠して、ゴンザール王国というそうだ。
(ゴンザ?日本人?)
(いや、ゴンザル、猿に似た権助みたいなやつなんじゃね?)
ドーラ、今どんな漫画読んでるんだ?
「面倒くさいんで、代々王は皆ゴンザール王で通している。もともとの名はミッチェル・ペレルギウス 、なので、前の王と区別付ける場合のみ、ミッチェル王とか言われるが、ゴンザール、ごんちゃんで良いよ?」
もうなんかが吹っ切れたような様子の王様、、
あとはもう銀月の3人に任せて、同盟やら決めてくださいと投げてきた。
やっと部屋に戻って、
「ドーラ、やっと落ち着いたねぇ、、」ユータ
「ああ、ここ数日、というか、、ゴンザルに入ってからのんびりする暇なかったもんなぁ、、」
「今晩、向こう行く?」
「あすにしねー?」
「うん、ボクも今日は疲れた、、」
ゴンザール王達3人(王、領主、ジョニーの三人のみ。ギルドマスターは来ていない)はそのまま数日滞在し、いろいろキメるらしい。その後、ガンダさん達が向こうに行ってみて、
人材のやりとりできないか?とか、特に子供達に自分達では教えられない船や漁に関してのこととか、なんかできないかな?と思っている様子。
また、荒れ地の開拓ができないか?などダンマスに相談している様子。
「荒れ地にダンジョン作っていいですか?そしたら、その周囲、森にできますよ?」
らしい、、
悩みどころである。頑張れ王様。
ちなみにスタンビードはダンマスでも抑制できないので危険です、とか言っている。
ゴンザール王と領主は護衛を一人も連れてこなかった。
「あれだけの者相手に、ひとの護衛なんぞ居たって、なぁ?」だそうで。
だったら少人数のほうがいだろ、と。信頼できる者のみで。ギルマスや騎士団長などは後日でいい、と。
国家機密になるほどなので、国家に属さない冒険者ギルドマスターは連れてこなかったのか、と納得した皆。
ちなみに、初日の晩メシはハンバーグ。
翌日の夜はカレーライス。
その次の日は川魚のバター焼き。きのこソティー。
全部にアイスクリーム付き。
お酒は、ドーラによって強制的に買わされ持ってきて「ドーラの秘蔵」として部屋に保管していた洋酒を、ユータが「ドーラ、こういう時に使わないとダメだよ。次行った時、倍買ってあげるから」と。
川船を、子どもたちが魔力で動かしているのを見て目を丸くし、
養殖でヒモノを大量に作っているの見てびっくりし、
山の中腹の監視所に行き、双眼鏡を見て驚愕し、
最後に、ガンダさん達の許可を得て、出来上がった地図をコピーして王様にあげたら信じられない顔をしていた。
ジョニーは結構想像ついていたらしく、王様と領主さんほどは驚いていなかった。
「なんか、懐かしい空気だな、、俺のとこも、こんなだったらもっと幸せだったのにな、、」ジョニー
「おう、じゃ、今から手伝えな!」ドーラ
「おうともよ!!」ジョニー
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