第五十六話 この土地と、少しかかわってみる


この街はおっきい街だが狭くもあった。

冒険者と兵士達のための街だったから。

街道を守り、周辺の魔獣や猛獣を減らすための街。


この国の誰も、普段は荒れ地に用は無い。が、もし、北から攻め込まれた場合、荒れ地方面に逃げ道がないと、南への一本だけになってしまう。

船で先回りされて抑えられていたら?お陀仏だ。

だが、荒れ地に逃げ道があったら?

荒れ地は広大だ。いくらでも逃げることはできる。ただ、水も食料も得られない、というだけだ。

当然、軍も同様。追っ手はこないだろう。


昔は、この街までしか無かった。

森の開拓が中途半端だった。

だが、当時、この国が攻め込まれ、僅かな手勢でここに引きこもり、魔獣の森を抜けてくる敵軍が勝手に消耗していくので、どうにか助かった。

敵が引き上げ、それからこの国の人口も増え、冒険者も兵士も増えた。

その食い扶持を稼ぎつつ、荒れ地への回廊を作り、維持している。


これが、この荒れ地への回廊があるから、敵はこの国の殲滅は不可能だと思っている。

それだけでもここを維持するには十分に価値があるのだ。


そういうことをジョニーさんがユータ達に教えてくれた。


「んじゃなにか?ここから東に行くと、この国のホントの街がたくさんあるのか?」ドーラ

「まぁ、そうだけど、、ホントの街って、、、まぁ、、そんな感じになるのか、、、ふーん、おもしろいなぁ」ジョニー


「・・・んじゃ、、この森の街道をもっと広げればいいのに」ユータ

「出来たらな、、。広げる作業なんかすりゃ魔獣が襲ってくるんだ、、その警備だけでも大仕事、それをかなりの距離やらにゃーならん、できないよ。」ジョニー


「「・・・・」」

((うん))


「俺らがやってやろうか?」ドーラ。

「ジョニーさん、この国はいい国なの?」ユータ

「・・・ああ、俺は、この国は好きだぜ?いい人が多い。領主も、王も、悪いやつじゃねぇ、、」ジョニー


「やるか?」

「うん」

・・・

「・・何を?」ジョニー

「まぁ、見てな!」ドーラ。


「あ、この街道そのものじゃ無くたっていいんだよな?、、例えば、この街道に沿って、少し向こうにぶっとい街道をつくっちゃうってんでも、いーんだろ?」ドーラ

「まぁ、そうだろうけど、、でも森には冒険者達が入り込んでるぞ?」


「あー、、、んじゃ、明日から数日誰も森に入れないようにできないかな?」ユータ

「まぁ、、来週くらいからならできるんじゃないか?。領主とギルマスと兵隊の隊長に話を通さないとできないので、これから行こう。」ジョニー


飲んだ翌日の朝、あの食堂で朝食を食べながらそんな話をした。

他の客達も起きはじめていたので、そこそこの人数がその話を聞いていた。


(そいつらの雑談)

まぁ、、普通じゃ、まずできないことだよな?

でも、ジョニーさんがまともに取り合ってるんだぜ?

ああ、できそうだ、ってことなんだろうよ。

あの二人、まだ子供だろ?

いや、なんか大魔法使いだってよ、、

一人は精霊の関係だとか言うじゃないか

まじ?精霊ってホントにいたの?

おめーには見えなかっただけだろ?

あ?んじゃおめーに見えるのか?

いんや、見たことねーよw


みたいな事を皆が後ろの方で勝手に言っていた。


(ジョニー、信用あるんだなあ、、)ドーラ

(そうだねー、すごいねー)ユータ

・・・・


ユータ達が前に居た場所の近くの街と同じくらいの大きさなのは、この街に領主がいるからだという。

「最前線に領主がいないでどーする!」と言っているらしい。


「それだけでも俺らにとっては信頼に値するんだよ。最前線に出ている指揮官を信用するからな、冒険者や兵隊は。安全な後ろに篭っているやつを信用するバカは居ない。」ジョニー

「それは言えるな!」ドーラ


ギルド。

受付でギルマスいるか?と聞いて、いるとのことなので、「んじゃ勝手に行くけど」「いーよ」と、上に昇るジョニーさん。に、ついていくドーラとユータ。


小一時間話し、それでもいまいち信じられん、というので

「ドーラ、、いいかい?」ジョニーさん

「あー、ユータ、みんなで荒れ地の端にお願い」ドーラ

「うん」

シュン!!


・・・・・あっちの方にあのでっかい砦が見える。


「・・・・・」ギルマス

「・・・・・やっぱ、、すげぇ、、」ジョニー


「んじゃ、ユータ、俺が向こうの方に行ったらでっかくしてなー」

「うん、合図してね!」


ドーラがビュン!と飛んでいく、いいぞー!

ユータが、魔力をドーラにどんどん注ぐ。

そのパワーのでかさに当てられ、立っていられずに座り込む2人。


ドーラがいつの間にか竜になっていて、どんどんでかくなっていく。

・・・・

・・・・

もう足の先がこちらのすぐ目の前。

下から見上げても、もう顔は霞んでよくみえない

(ドーラ、ボクら足のすぐ前なんで、踏まないでね!!)

(おう!動かないわ、じゃー、、、荒れ地に向けてブレス吐くぞー)


「ドーラが荒れ地に向けてブレス吐くので気をつけてくださいね!」

といいながら、砦の前面と、ユータ達の全周囲にバリアを張るユータ。


ぶわっつ!!ぐをーーーーーー!!!

遥か彼方、でも山くらいなドーラからすればすぐそこにブレスを吐く。

その地面はマグマのように溶け、小さな谷のようになっていく。


「ふう、、。ドレインしてくれー」

「おっけー!」


どんどん小さくなっていくドーラ。

手乗り竜より少し大きめにして止める。

ぽん!

と、ドーラは人間形態になる。


「あー疲れた、、」ドーラ

「おつかれー」ユータ


・・・・・

「・・君達、、こんなこと、、いつもやってるの?、、」ギルマス

「まぁ、、たまに、な」ドーラ


あ、砦、、とユータが指差す

なんか大騒ぎになっている。

「まずいな」ジョニーさん

「んじゃ転移しますんで、説明してあげてください」

とすぐ転移

シュン!!


小一時間ギルマスとジョニーさんが砦の隊長達に説明などしていた。


「なんか、すげー時間かかったな?」ドーラ

「そりゃー、、在りえないことが目の前で起こっちゃ、自分の目を疑うだろ?」ジョニー

「そうか?俺は見たことを信じるぜ?」

「うん、ボクも、信じられないことだって、目の前であったらそのまま信じるけど、、」


「・・・君達は、素直でいい子だ。だから伸びたんだろうね。」ジョニー

「おう、、捻くれている大人たちには、無理なんだよ」ギルマス


「うちの大人たちは捻くれてないぜ?」

「うん、そのまんま信じてくれたし、考えてくれるし、、」

「・・・どこの?」

「「ドラゴニア王国!!」」


(地図は出すなよ?あとでジョニーにだけ見せる)ドーラ

(わかった)


ギルマスとジョニーと一緒に2人は領主の邸に転移した。

で、ギルマスは緊急として、すぐに面会を求めた。


もたもたしていると、この2人がどっかに行ってしまうとおしまいだからだ。

これがどんだけでかいチャンスなのか、ギルマスはわかったのだから。


領主は流石。ギルマスとジョニーの話を聞き、了承した。

で、ギルマスに

今森に入っている者達が戻ってくるのは、最も遅くていつくらいになる?と聞き、

「全員戻ってきたのを確認し、それが終わったら即時始めてくれるかな?ドーラ殿、ユータ殿」

「ドーラとユータでいいよ。ジョニーもそう呼んでいるから」ドーラ

「そうか、、ではそうさせてもらおう。ただ、、儂の領地はあまり裕福ではなくってな、、」

「いや、ロハでいいぜ?俺らはやりたくってやるだけだ。仕事じゃない。だから金とかいらないぞ?」

「いやそー

「それは終わってからにしてくれないか?」ドーラ

「終わったらそのまま消えるつもりじゃないだろうな?」ジョニー

・・・・・・・・

「やめてくれよそれは、、」ジョニー

「あー、わかった、消えるときはジョニーには言うよ」ドーラ


関係各所には領主とギルマスが動いてくれるとなった。

なので、

ボクら3人は宿に戻る。


ボクらの部屋。

ジョニー入れて3人が居る。


「んじゃ、ユータ、地図」

ストレージから、今までを書き込んだ地図を取り出す。


「これが、今のところわかっている地図です」

床に広げる。


ジョニー、、目が釘付け。

じっくり見始める。

半時くらい見て、、

「この、北側とか、俺が書き込んでいいか?」


「おう!ありがたい!」ドーラ

ボクが鉛筆を何本か用意する。

ジョニーが書き込んでいく。書き間違いを消すために消しゴムも出しておく。

ジョニーは消しゴム見て「べんりだなぁ」と。


「で、ここが、俺が子供の頃居た街だ。」

そこは、ボクらが以前いた国の東隣りの国だった。

ジョニーは、歩きで、一人で、ここまで来たのだろう、、何年も掛けて。

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