第四十二話 タカとドーラとヒモノと畳


高校は給食ではない。ここも小さいが学食があり、売店でも弁当やパンなどを売っている。

お昼になると、隣のクラスからタカがやってきた。

「ユータ、学食行こう!」と。

ユータはドーラを紹介する。


あまり嘘の無い様にしたいなー、と思っていたんで、

僕の友達。僕は彼をドーラと呼んでいる。でもこっちでは竜雄(たつお)と呼ばれている。田舎から出てきて、今はうちに住んでいる。高校には行っていない。今ここ(学校)に居るのは、先生が許可くれてるから。

と、説明した。


(ユータ、こいつと仲いいんだよな?)

(うん、前からずっと友達。だから、いつか、向こうのことを話したいんだよねー。)

(いーじゃんいつかじゃなくったって。今日うちに呼んで話しちゃえ!、帰りに道場にもいくから、市にも紹介しとけよ。)


(だいじょぶかなぁ?)

(そーいうの、疑ぐる系なのか?)

(ううん、ボクが言えば大丈夫だと思う。あと、向こうのをなんか見せればいんじゃないかなぁ、、あ、魔法とか?)

(・・魔法は、まだやめとけ。)

(・・わかった。)


今日学校終わったらうちに遊びにこない?とタカに訊くユータ。

タカは喜んで返事を返してきた。



午後の授業中、先生にあてられたドーラは、とんちんかんな返事をしてクラス中にウケていた。

ドーラも、「ここはノリがよくっていいな!」とごきげん。


ぼくはドーラを見ているとはらはらして、それどころじゃなかったけどね!



放課後、道場に顔を出す。勿論ドーラとタカと一緒。

タカを市さんに紹介する。

タカはびっくりしていた。そりゃそーだよね、僕らと道場のオーナーなんて普通関係無いもの。

それも、あとでうちに行った時説明するから、と脇においといてもらった。


市さんは

「調子よくって、飯も倍食べてもなんか余裕あるような。精神的には高揚もいらつきなどもなく、逆になんかのんびりし始めている気がします。」


「うん、よかった。でも心配なんで、これからも顔出すから、今日のように自分の変化によく注意しといてなー」ドーラ




で、うちに帰宅。

母さんがタカに、まぁまぁ久しぶりね、晩御飯食べて行きなさいね!とか言ってた。

タカくんが来たから、あのヒモノにしましょう!とかも。


「このうちには、秘蔵のヒモノがあるのだよ」ドーラ

なんの冗談なのか本気なのかわからないで困るタカ


タカとドーラを部屋に置いて、ユータは下に飲み物と菓子を取りに行った。母さんがあれもこれも、とかいろいろ。


少し時間かかっちゃったけど。と部屋に入ると、、ドーラがドラゴンになっていた。

・・・・・・・・・・「ドーラ?」ユータ


「うん、説明しておいたから。ダイジョブだったぜ?」ドーラ


タカがメガネを外して拭き始めた。よーく拭いて、また掛けた。

「うん、、ドラゴンがまだ見えるな・・・」

またメガネを外して、、


「ドーラ、ぜんぜんわかってないじゃん、、、」ユータ


「え?俺をよく見たいんで、メガネを拭いているんだろ?」

「うん、まー、全く違うけど、、」


じゃ、タカはなぜ何度もメガネを拭くのだろう?

と、ドーラは不思議がっている。


「タカ、これを見て、」

ユータはユータの剣をタカに手渡す。


タカは、皮の鞘から剣を抜こうとすると、スラリと抜けた。

素人にも、その鞘からこの剣が頻繁に抜かれて、よく使われていることがわかった。


「これ、ユータの?」タカ

「うん、ボクの。向こうじゃこれなしだと危ないから。」ユータ


「・・・ホント、なんだ?」タカ

「うん。ほんとにある。」ユータ

「ボクも、、行ける?」タカ

「・・・・多分、まだ、行けないと思う。壁を抜ける力が無いと、、」ユータ

「ボクも、その力を付けられるかなぁ?」タカ


「やってみないとわからない。これだけは、まだ誰も試していないんだ。」ドーラ

「そっか、、、」

「僕ら、いろいろやってみるから」

「うん、まってる、、、、。でも、ボクもなんかできることあったら!!」

「うん、思いつたらお願いする。」


それから、ユータはタカに向こうのことをいろいろ話した。

ドーラも一緒になって話した。

タカも、いろいろ訊いてきた。


魔法の話になった。

「まだ、ユータはこっちでは使えなんだ。使っちゃいけないんだ」ドーラ

「わかった。」タカ

タカも、ユータみたいに、ドーラがそう言うのであれば、それなりの理由があるのだろう、と思ったのだ。



でも、ドーラはあのトンネルについて「何か普通に行き来できる方法があるはずだ」と思っていた。

なぜなら、でなければ、こんなトンネルなんか作るか?

なんかのために、人が行き来するためのものだろう?

それも一人や二人のためじゃない、とドーラは感じている。


なにより、あの大魔法使いだ。あれが関わっていて、これっぽっちで?いや、ありえない。もっとでっかいなんかの理由があるはずだ。


ただ、今、そう考えることができる者といえば、ドーラ一人だけだ。

ほかの者たちは大魔法使いを知らない。

やつの考えを読める可能性のある者は、いないのだ。


この部分は、俺が一人でやるしかねーな、とドーラは思った。




夕飯はヒモノ。

タカは魚はあまり好きではなかったのだが、そのヒモノはオイシイオイシイ!と言って全部食べきった。


夕飯を食べ終え、部屋に戻ってから

「あのヒモノ、向こうから持ってきたんだぜ?」ドーラ


それから少しゲームなどして、9時頃にユータとドーラはタカを送っていった。



翌日の学校では体育があった。

普通の運動であれば、ドーラはジャージを借りられるが、今日は柔道。学校にある予備の道着はでかすぎてドーラには無理だった。なので見学。


柔道場というものはないので、体育館に畳を引いて行う。

なので、始まる前に畳を裏から持ってきて敷いて、終わったらかたす。それが生徒たちには結構大変なのだ。

でも、

向こうの仕事の時に比べればそれほどでもないと感じるユータ。

皆は2人で1枚の畳を運ぶのだが、ユータは一人で背負って小走りで運んでいく。

それを面白そうに思った奴が、ユータに

「これ行けるんじゃね?」と、2枚重ねにした畳を立てていた。


「うん、、多分」

と、ユータはそれに背中を押し付け、よいしょ、と背負い、そのまましっかり2−3歩確認し、「あと2枚、」とユータがそいつに2枚追加させた。そっからまた小走りで運んでいった。

それを言った本人やそのユータのクラスの奴はあっけにとられていた。


「運送屋顔負けじゃね?」と。


その日からユータは「運送屋」と呼ばれたが、翌日

「運送屋」っていうと、うちが運送屋でたまに手伝うと客に運送屋と呼ばれているんで、俺のことだと思っちまうんで、少し変えてほしい、と朝のクラス会で運送屋の息子が提案。

んじゃー、

「ユータ運送」

「それでもいいけど、ふつーにユータ、で、いんじゃね?」


結局一回りしてユータに。

今までほとんどあまりクラスの者と話ししなかったが、一挙に名が通った。


それから、最初に畳2枚をユータにやらせた奴(当の運送屋)が、よく話しかけてくるようになった。

ユータとその運送屋が話をしているのを見て、それから他の者達も話しかけてくるようになった。


「おまえ、デカイじゃん?で、口数少ないじゃん?なんで、俺ら、お前は怖いヤツなんだろうな、って思ってたんだよ。」運送屋


(は?何言っちゃってるのかな?逆だよね?)

中学時代はいじめられるしかなかったのだから。


でも未だ口下手なので、あまり口を開かないユータ。

向こうに居るときと、なぜこんなに違うのだろう?と不思議に思うドーラ。



それから少しいろいろあり、その友人「運送屋」の実家でバイトをすることになった。更に、やはりクラスの、実家が金属加工工場をやっている者の実家でバイトをするようになった。両方共、仕事があるときだけ、ということで。

(18話参照)


ユータには、特に金属加工のほうが、旋盤、ボール盤、ミーリングマシンなどを使うので、非常に勉強になった。もともとユータはそれらに大いに興味を持っていたから。


タカはユータの紹介で運送屋のバイトを始めた。


その間も、ドーラは向こうでもこっちでも、なにか、大魔法使いの足跡、形跡が無いかいろいろ探していた。


向こうでは、新領地の方に皆引っ越しを始めていた。

ガンダさん達が調査した結果、森の中には魔獣もいたが、大半はブレス跡の外の森にいて、ブレス跡の中に入ってこようとしないという。

なので、ブレスの内側の森を探索し、ほぼ強い魔獣や狂暴は猛獣を狩り尽くして安全を確保したとのこと。

イノシシやウサギや鹿(山の方)などは、狩らなかった、という。それらは「食べるときだけ狩るものだ」と。

ユータとドーラは、帰った時は新しい森で狩り。相変わらず食材調達係りだ。


ユータも、タカも、異世界の皆も、うまく行っていた。

ただ、ドーラだけは、まだ何か引っかかっているものを感じていた。

そして、

できればその何か、を、放置しないのが望ましいのではないか?と、感じていた。

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