第5話

出逢いを兼ねてバイトを始めた。

だが、サバ読みの年齢は呆気なく看破され裏方仕事しか回ってこない。不満が募る。

みんないい人ばかりだし店に迷惑掛けられないから仕方がないか。


生ゴミを集め裏口に出ると客らしきサラリーマンに誘われる。

「キミはお店に出ないんだな、ずっと気になってたんだ、この後暇なら遊ぼうよ?」

「俺、遊びに行くの禁止されてるんで」

黙ってれば大丈夫、と酒臭い息で近付いてくる。タイプ的には嫌いじゃないが課題が残ってるし今日は帰りたい。

ていうか俺、そっちじゃない。攻める方。


しかし、あっという間に壁際に追いやられて身体が密着してくる。耳に息がかかり首筋にちろりと舌先が這う。

「いや、本当、ごめんなさい」

いい加減にして欲しいと大通りへ目を向けると見知った顔がアイス片手に呆然と立ち尽くす。

思わず声をあげる。

「み、見てないで助けろよ、ボケっっ!」


突然の異国語に驚いたリーマンは見られたことに気付きそそくさと帰っていく。

入れ替わるように駆け寄る大きな影。

「声かけ遅れて悪い、襲われてるとは思わなんだ」

ていうか、何でこんなところに居るんだよ。

「飯買いがてら散歩してたら、ここにいた」

以前聞いたコイツんちは逆方向だったはず。

どんだけ方向音痴なんだよ。

「もう終わるから送ってやるよ……」

「助かるわー」

ぐぅぎゅるる~。

きゅるるる~。

「腹減った…………」


ということで、ここから近い我が家で飯を食うことなってしまう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る