第2話

完璧にうっかりが災いした。

知らん、と突っぱねれば済むのに何で願いを聞いてしまったのか。

自分のルーツが関わっているせいかも知れない。


俺は見た目はだが日本人とのハーフだ。とはいっても日本率は25%。父がハーフだから日本の血に関しては実質クォーターになる。

詳しいことを語りだしたら赤毛の母だって純粋な母国民じゃないし、地続きで多国が存在する大陸で生きればごっちゃになるのは当然だろう。長年切り離された島国でもない限り。


父が話す日本語まみれの実家から離れて幾ばくかの、久し振りの日本語。

少し感傷的になっていたのも事実だ。

弱いなぁ、俺。


「図書館はそこ、講堂はあっち、カフェテリアはこの奥、以上」

「いやいや、ザックリし過ぎだろ、方向音痴でも判るようにしてくれよ」

…………面倒臭い。

必要最低限の範囲を歩きながら案内する。


「あっちの建物は?」

「殆ど使われてないから覚える必要ない。下手に近付くと面倒事に巻き込まれるから止めとけ」

んん?と首を傾げる筋肉質。

「やりたい放題の溜まり場」

「あぁ、サボり組の」

「それだけじゃなくアッチのも」


両手を前に出し腰を軽く一振りしてやるとやっと察したように、うわぁ、と呟く。

「ヤリたい奴がやり、見たい奴が見るWIN―WINかと思えばカツアゲされる。行くだけ無駄」

「はぁ、そこまでしてヤりたいかねぇ」

「俺にも謎、ってのもってのも。っていうか、そもそも男女の営みには興味ないし」


キョトンとした目で見返してくるので伝えておく。

「俺、ゲイなんで。判る?ホモってやつね。だからこれきりで、はい、サヨナラ」

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