第1話
人の噂も七十五日。
そんなに待ってられない短気な俺は噂が立った翌日から全ての関係を遮断し放棄した。
様々な要因でもともと腫れ物状態だから大して不便はない。逆に過剰な気遣いがなくなって楽になった。
それからは必要以上に関わらない、欲しがらない。周りが求めてないから。
でも、たまに求めるヤツもいる。
好奇と冷やかしの眼差しで。
そういうのは、本当に、反吐が出る。
◆ ◆ ◆
長期休業期間が明けた、一発目の講義。
今期からの留学生4人が紹介される。
「君は彼の隣に」
唐突なご指名を受け、朝から気分がダダ下がる。
一人で居たいから余計なことしないでくれ、先生。
「宜しく」
妙にガタイの良い男は緊張混じりに俺の隣席につく。身体に似合わず頼りなさげな笑みが印象的ではあるが、筋肉質は嫌いだから全く興味が湧かない。
はい、終了。
俺は、常に目立たぬ端の席でひっそりと講義を受けている。この時間だけは、自分に関心が注がれる事がないので心が落ち着くのだ。
どうせなら休みなく続けば良いのに、とさえ思う。
「今日は以上、レポートの提出期限を忘れずに」
あぁ、終わってしまった。
面倒くさい視線を避けるためにもさっさとここから抜け出そう。
「あ、あの」
隣の留学生が声を掛けてくるが無視。
「ま、待ってください、お願いが有ります」
知らないし、そんなの。
急ぎ立ち去るがドカドカと後をついてくる。
俺だって決して小さいわけじゃないが、たかが頭半分違うだけでそんなにリーチが変わるのかよ、クソ。
「何なんだよ、ついてくんなよ!」
振り向きざまに言い放つと、筋肉野郎がハッとして驚く。そのあとの破顔が意外と可愛い。
「日本語……通じる……早く言ってくれよ!俺、ビビりなんだよ!………って、判るかな『ビビり』」
「判るわ!で、何、もう行きたいんだけど」
「学内案内してくんないかな、全然わからんのよ」
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