冬。

第24話 冬休みが始まる。

 ぴちちち……と、小鳥がさえずる声が聞こえる。

 でも、その声は機械的だ。枕元のスマホが起きる時間だと知らせているのだ。

 日菜はむくりと起き上がって、


「……っ」


 でも、すぐに布団にもぐり直した。

 今日は終業式だ。今日まではがんばって布団から出て、学校に行かないといけない。のだけど――。


「寒い……」


 布団の外の世界をにらみつけて、日菜はぽつりとつぶやいた。


 ぴちちちち……と、スマホが再び鳴いた。目覚ましをこんなに短い間隔で鳴るようには設定していないはずだけど。

 不思議に思いながら画面をのぞきこんだ日菜は、唇を引き結んだ。

 メッセージが届いていた。ロック画面に全文が表示されるほどに短いメッセージ。


『今日って終業式よね?』 


 家族グループに届いたお母さんからのメッセージだ。


『通知表、もらったら見せなさいよ』

『スマホで撮ったのでいいから』

『いいかげん、電話に出るか。返事くらいしなさい』

『そっちの学校のようすだって聞きたいんだから』

『何も知らないんじゃ、先生と話すときに困るでしょ』


 次々と届く短いメッセージに、日菜は顔をしかめたて。むくりと起き上がって、ベッドの上に正座した。

 スマホのロックを解除して、届いたメッセージは開かないまま。家族グループごと削除した。

 通知をオフにするとか、非表示設定にするとかすればいいのかもしれない。でも、そこまで思い切ったことをする勇気はなくて。


 唇をきゅっと噛みしめると、日菜はベッドからいきおいよく立ち上がった。

 冷たい空気に身体を強張らせて。学校カバンの外ポケットにスマホをねじ込んで。

 靴下を履いた日菜は、顔を洗うために二階の洗面台へと向かった。


 今日は終業式。

 明日から冬休みが始まる。

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