オレこそがキョウフソノモノだ!
〈血塗られた森〉。薄暗い林の中を、慎重に歩く魔王討伐一行。
「なんともクリーピーな場所……。ゾッとするね」
「スピラ、こわいのきらいだよッ!」
「狂いそうになるわ……」
「何処に敵がいるか分かりませんダ。」
皆口々に不安を漏らす。
「うわっ、これ血じゃない。血の雨っていうのは、比喩表現じゃないみたいね」
「金属臭は、これですダ。何人分の血ですダ?」
木にベットリと付いた血痕に、目をひそめる一同。と、不意にカラスが、バサバサと音を立て上空を翔んでゆく。瞬間。
「ッ!?[トルネードグラインド]ッ!!」
「「「スピラ!?」」」
ズギュシャァッ!!橙の目を大きく見開き絶叫。頭上のものを、雲まで含めて全て無に帰した。
「これは……ワッツシュッドアイドゥ?どうしようか?」
「ま、まあ?『バケモノ』から動いてくれると考えて……」
怖さのあまり動転したスピラの凶行に、エイプリルもアサクラも、その後の対応を急いで考える。だが、思考する猶予が充分に与えられることは無かった。
『ひっ、きゃぁあぁぁぁっっっ!!!』
「あっちですダ。急ぎましょうダ!」
林の奥から、恐怖に歪んだ少女の悲鳴が響き渡った。
『キヒヒ!おいおい?ニげるのか?オレをシらずにキたのかぁ?』
『やだ……こないで!!』
狂気的な女声、次いで、怯える少女の声。少女が襲われていることは間違いないだろう。
『シツモンしてるだけだろ?ナゼコタえない?えぇ?』
「あんたが『バケモノ』ね!少女から離れなさい!」
姿の見えない敵に、エイプリルが牽制する。奥で、動く気配。
「ナンだ……?ジャマモノか……?」
藪の隙間から、赤い光がちらつく。ブレインがすぐに光で照らす。
「[ライト]。姿を見せて下さいダ。」
「ぐっ、マブしいなぁ!おい!?」
そこにいたのは、齢十八程の、幼さの面影が残る女性。カウボーイハットにレザーロングコート、ジーンズ。西部劇のような服装で、インナーシャツには『LOVE LIFE』のペイント。分厚い灰色の皮膚に赤黒い髪。何より特徴的なのが、その瞳。くすんだ左眼の、毒を思わせる緑色に対し、鮮やかに輝く十字の傷印が刻まれた、血色の右眼。〈双極の瞳〉だ。
「テメエら、ナンだ?その眼……キヒヒヒヒ!ソウキョクのヒトミがフタリか!こいつぁオモシレぇ!つまんねえガキなんざどうでもいい!」
「フォアに囲まれてラーフィング……。クレイジーだ……[
明らかな不利状況でも笑う余裕。アサクラは解析のため、右眼の闇と左眼の光を解放。実像にノイズが走り、大量の0と1が周囲を廻る。
「キまりだ!キョウのエモノはおマエらだぜ!」
女の右手に、レザーグローブが出現する。血が染み込み赤黒く染まった、狂気の手が。
左手でカウボーイハットを押さえる。目元は陰り、爛々と輝く十字状の赤い光が不気味に浮かぶ。足を一歩踏み出し、張り裂けんばかりに嗤う。そして、右手を前へ。その姿は、まさしく。
「キヒャヒャヒャヒャッッ!!![スカーレッツ・ヘルバレッツ]!!シねっっ!!」
「……なにかまずい![
〈バケモノ〉だった。
「……あぁ!?ドコイきやがった!?」
血の弾丸が殺到した先に、四人はいない。周囲を見渡すバケモノ。その後方に、四人はいた。
「……サーチして判ったことがある。シーの特質だ」
声を潜めて話すアサクラ。
「奴の特質は〈
息を荒くして、出来るかぎりの情報を伝える。
「じゃ、後はアスク……[
そして、伝えるだけ伝えて、消えてしまった。
「えっちょっ?アサクラ?」
いきなり逃亡を試みたアサクラを前に、エイプリルは思わず声を出してしまった。速攻でバケモノが振り向く。
「ソコにいたかぁ?どーやってマワりコんだ?」
「ちっ、見つかりましたダ。[シールド]。あねさま、交戦しますダ?」
ブレインが水色に輝く円盤を構える。隣ではスピラも、左目の逆さ五芒星を灯していた。
「一撃でふっとばすよッ!」
だが、エイプリルは二人の肩に手を乗せ、静かに囁いた。
「……あんた達じゃ勝てない。……あたしに力を貸して」
重く、強く、語り掛ける。エイプリルの右眼は、『互』の印が藍色に輝き、左眼は、逆さ五芒星が橙色に輝いていた。双極の瞳に、明確な敵意を宿していた。
「承知ですダ。[ウィーアーアイテム]、最善をお尽くし下さいダ。」
「ねぇねが言うならしたがうよッ。[ウィーアーアイテム]、頑張ってねッ!」
主人の意図を汲み取り、二人の術具は目を閉じる。
「ありがとう。[
二色の閃光に包まれ、〈
「……アりガタくオモえ?わざわざマってやったんだからよぉ?ソウオウにタノしませてくれよ?ソウキョクのヒトミ?」
口角を上げるバケモノ。閃光の中から現れたエイプリルは、右手に藍の枷、左手に橙の槍を装備して、口もとを歪める。
「……正直助かったわ。あんた、名前は?」
「ふん。『ブブ・ララ』だ。キいてどーすんだ?イマからシぬのにさぁ?」
西部風の死神、ブブ・ララの赤い閃光が刺さる。エイプリルは左手で三角帽を支え、右手を掲げて応えた。
「あたしはエイプリル。[
「シるかよぉ![ブラッド・ブラスター]!キヒヒヒ!」
「……とは言ってみたけど、やっぱ辛いわね![
「おいおい?おいおいおいおいおい!?ニげんのかテメエ?そらよっ!」
右手で即席の盾を構え、飛来する血の弾丸を防ぐエイプリル。
「ほらぁ!ハンゲキしてみろよ!」
対してブブ・ララの方は、仁王立ちして、溢れる自らの血雫を紡錘状にして射出する。
「言われなくても![
今度は槍を構え、先端から直径15cm程の火球を放つ。だが、ブブ・ララのレザーグローブが、容易く打ち消す。
「[ロスト]ぉ!タイしたことねぇな![ガトリングガン]!」
その勢いで、血の滴る右手から弾丸が、真っ直ぐに殺到する。エイプリルは顔をしかめ、藍の右眼を光らせる。
「[
「[クイックセンス]!アメぇんだよ![スクラップバースト]!そんなタテはよぉ!」
長方形の防御壁を生成し、槍を振って、弧を描いた刃で迎撃する。しかし、刃は横翔びで避けられ、周囲の石を固めた砲撃で返される。
「[
『一旦退くべきですダ。ブレインの特質で、速度への恐怖も大丈夫ですダ。』
なんとか凌いでいたエイプリルの頭に、馴染みの声が流れた。道具の状態になっても、会話は出来るらしい。
「了解![
「あぁ!?」
ブレインの指示に従い、三角帽を押さえて後方へ跳ぶエイプリル。その慣性のまま、高速で飛行、後退する。
「おいおいおいおい!?ニげれるとでもオモってんのか!?[ジャンプ・カタパルト]!スぐにオいツいてやるぜぇ!」
多量の血弾を引き連れ、一踏みで迫るブブ・ララ。その時、今度はスピラの声が。
『今だよッ!なにか撃ってッ!』
「任せて![
向かって来るブブ・ララに、槍を真っ直ぐ構える。詠唱により、光が先端に集まり、直後、轟音と共に、斜め上、水平に稲妻が迸る。極端な破壊力を内包して。
「なあぁ!?クッソがぁ!ふざけんなよおい[アビスコア]ぁぁぁっ!!!」
右目を見開いて、絶叫の詠唱を反射的に行う。血塗られたレザーグローブに包まれた右手の先に究極の闇が発現する。直後、ブブ・ララの全身を、稲妻が貫いた。
「──っらあ!おいおいおいクソヤロウがっ!アトサキカンガえやがれぇ[スプレッドショット]!おらぁ!」
魔法同士の衝突により発生した魔素煙から、息を荒くして飛び出す赤い閃光。ブブ・ララだ。コートが多少傷ついたようだが、致命傷には程遠い。すぐさま血の散弾を浴びせてくる。
「あの直撃を受けて!?[
降り注ぐ血弾の雨を、右手枷の念動でずらす。槍を振ると、背後に無数の小さな
「[ランページ]!そんなもん!キかね、えぇ!?ナン、だこりゃ!?イテえ……ハキケがぁあぁぁ!?コソクなあぁぁぁあぁ!?[ペインキラー]ぁっ!」
血弾の嵐で氷柱の嵐に対抗するブブ・ララ。だが、物理干渉を受けない毒球を防ぐことは出来ず、腹部に直撃した。途端、内部からの激痛と吐き気に、喘ぎのたうちまわる。
「くはぁ……っ!キヒッ!キヒヒヒヒヒヒヒッッ!!ヒサビサにキれちまったぜもうユルさねえぜ!?イマからはぁ!ゼツボウのジカンだぜぇっ!!バケモノにメぇツけられたコトをぉ!コウカイしながらぁ!──シねぇっ!キヒャヒャヒャヒャッッ!!!」
応急処置をして、一度飛び退く。息を荒くしながらも、右眼に宿る赤き闘志は、衰えることを知らない。灰色の皮膚に汗はなく、鋭い
『まさか奴は……〈アビスコア〉以外で殆んど消耗していませんダ?』
ブブ・ララが笑っている隙に、息を
「確かに、血弾を飛ばす魔法の詠唱の時は、独特の揺らぎが無かった……」
『やはりブラフでしたダ。と、なればですダ。』
「ええ。あいつの特質〈
会話の最中に、スピラの声が割り込む。
『きをつけてッ!来るよッ!』
「わかってる!二人ともいくわよ!」
会話を中断し、槍を振りかぶる。
「キヒ![スカーレッツ・ヘルバレッツ]!」
「くっ![
無数の緋色の血弾と、無数の緋色の光弾が、交錯する。
「オレとオナじリョウのダンマクだぁ!?どーなってんだテメエのマセイ!?うおっ!」
「こっちの台詞よ!あんたこそ無尽蔵の魔精じゃないでしょうね!?[
緋色弾幕を掻い潜り、罵声を浴びせあう。
「[
「そのカンガえがアメえっつってんだ[バーンブレス]!モえろおらぁ!」
木を生やして弾を防ぐエイプリルだったが、すぐに炎の放射で燃やされる。
「あっついわね![
「テメエもイカズチぶちコんでたじゃねぇか!ぅおらぁ!」
急激に冷えた空間から退避しつつ、追加の弾丸を放つ。
「ってかダイマホウをバンバンウちまくんな!アタマオカしいのか!?そらよぉ!」
「[
更なる血弾を、巨大な大鎌にした槍で切り裂く。その振りに合わせ、右手の枷から十二、三の黒い誘導弾を放った。
「ツカってんだろ!アトそぉーゆーのぉヤめろ!ってんだろクソがぁ!?[ショッティング]!」
「勝手に新しいカナ創ろうとしてんじゃないわよ!?正しくは[
黒弾に被弾し、視界を奪われたブブ・ララ。その場凌ぎに、
「っちぃ![スカーレッツ・ヘルバレッツ]!ワカったからどぉした!オレをタオせねぇのはカわんねぇぞ!」
「[
絶え間無い弾幕を華麗に避けながら、エイプリルは思考する。
『わかったよッ!戦い続けてッ!』
「スピラ!?どうしたの急に?」
『まさか、勝つ方法を思い付いたのですダ?』
急なスピラの声に、少々動揺する。ブレインは不安を抱いた。
『そうだよッ!どんどん煽るのッ!』
『煽って何になりますダ!』
スピラがテキトーなことを言っていると思い、ブレインが発言を止める。
『煽ったところで、攻撃が激しくなる……、だけ……?まさか!?』
スピラの考えを疑い、そして気付く。この発言の真意に。
『そうだよッ!はげしくなって、血をいっぱいつかうのッ!』
「失血を狙うのね!了解!やるじゃないスピラ!」
相手の能力は、血を飛ばす。生物である以上血は有限で、失えば失うほど弱っていくはずだ。
「キヒヒ![スカーレッツ・ヘルバレッツ]!ウてばアたるだろ!いつかなぁ!」
「……あんた
「ウルセぇ!ミえねえなら、こーするしかねぇだろ!アブねえっ!?」
広範囲に乱射するブブ・ララ。跳ね返された弾を避けれる程度の勘の良さはあるらしい。
「そんなんじゃ、いつまで経っても当たらないわよー?[
「うおお!ミえたぁぁ!って、おいぃ![クレイジー・エスケープ]ッ!!コロすキか!?コロすキだったなアたりマエだなぁっ![スカーレッツ・ヘルバレッツ]!」
強引に視界阻害を打ち消したブブ・ララ。
「……あれも躱すのね。死ぬかと思ったわ」
『あねさまの方が、ですダね。巻き込まれなくて良かったですダ。』
強大な魔法は、己をも殺しかねない。冷や汗を流すエイプリルに、人の姿ならジト目であろう声色で、ブレインが語りかけた。
「……否定はしないわ。[
「キヒ?そろそろマセイがツきてきたか?さっきマデのドハデマホウはドコイったぁ?キヒヒヒ!」
周囲の葉を変質させて飛ばすエイプリルに、今度はブブ・ララが挑発する。
『おちついてねぇね!もう一発かまそッ!』
「了解。──あんたこそ、魔法は使わないの?[
「またソレかよ![スカーレッツ・ヘルバレッツ]!」
吹き荒れる鋭い吹雪と血弾。相殺で弾を減らし、尚飛来する弾は目視で躱す。
「[
「ナめやがって![スカーレッツ・ヘルバレッツ]!キヒヒッ!」
魔精の消耗に加え、大魔法の反動制御により、息があがってきたエイプリル。一方、ブブ・ララにそんな予兆はなく、目の前の爆発を回避する。
「[スカーレッツ・ヘルバレッツ]!テぇヌきやがって!」
「……あんた、なんか、その程度![
弾幕を掻い潜り、輝く右手を握って疲労を誤魔化す。士気も上昇させ、追撃に備えた。ブレインとスピラも応援する。
『そろそろ逃げるべきですダ。奴は激昂しており、冷静さを失っていますダ。』
『おんなじことしか言ってないねッ!もう少しだよッ!』
「任せて![
「マてごらぁ!!オレからニげれるワケねーだろ[スカーレッツ・ヘルバレッツ]ぅらあぁ!」
後方に水の弾を発射して後退するエイプリルを、赤い閃光が追う。あからさまに正気を失いかけている行動だ。
「とどめの攻撃よ!受け取りなさい!」
「コイツでサイゴにしてやるよぉ!」
ある程度下がったところで、足を止める。橙の逆さ五芒星と、藍の『互』の超異界文字。左右、両目を美しく輝かせ、槍と枷を構えた。対するは、セキガンを、赤く、紅く、狂気の色で灯し、右手のレザーグローブを突き出す。
「[
「[スカーレッツ・ヘルバレッツ]!!!」
「……で?その状態で、まだ戦う?」
〈血塗られた森〉。入ったときよりも、すっきりしてしまった林。武装を解いたエイプリルは、血だらけで倒れるブブ・ララを見下ろしていた。
「テメエらツエぇな……。キヒヒ……。」
右眼の光が収まり、毒色の左目が確認出来るようになったブブ・ララは、弱く笑う。と、急に空間に揺らぎが生じた。
「お疲れさーん!ハードバトルだったじゃんよ![
「ダレだテメエ!?コロすぞっ!?」
「おねーさんおちついてッ!?」
突如現れ回復を施したアサクラに、敵意を向けて襲おうとするブブ・ララ。スピラが止めに入らなければ、再度戦闘になっていただろう。
「まーまーシッダン、座りなされー♪」
「クソムカつくガキだなおい……。シりアいか?」
「認めたくないけど、知り合いね……」
なにもしていないのに進行役をしようとするアサクラを、二人で睨む。
「とりあえず!セルフインタラダクションだ!」
「セル……ナンつった?」
「自己紹介ね。解らないわよね、やっぱり」
アサクラの言葉をエイプリルが翻訳。地べたに座って会話をする。
「改めて。あたしは思者のエイプリル。十三歳よ。魔王討伐を依頼されて、旅をしているの」
大きな三角帽を持ち、お辞儀する。
「ブレインですダ。枷の鉱者ですダ。」
「スピラ!槍だよッ!」
両脇のスピラとブレインも、一緒にお辞儀。
「魔王ちゃんがアサクラだ。魔王だぞ!」
アサクラはいつも通りのふてぶてしい態度。そんなアサクラに、ブブ・ララは肩をすくめる。
「……アタマワリいガキだな。テメエもマオウトウバツとやらに、サンカしてんだろ?」
「トゥルー魔王なんだよ!信じろよ!」
「キヒヒ!イコジになるなよ?マオウサマ?」
「キル・ユー!」
「あ?やんのかおらぁ!?」
「おねーさんダメだよッ!」
信じてもらえずにキレるアサクラ。ブブ・ララも腕捲りして応戦しようとする。非常に相性が悪いようだ。
「ったく……。カッショクチビにメンじてユルしてやるが、ツギにアったらオボえてろよ?」
やれやれと頭を振り、再度、肩をすくめるブブ・ララ。
「おねーさんの自己紹介の番だよッ!」
「ああ、そんなハナシだったな」
カッショクチビことスピラの催促により、自己紹介を始める。
「オレはブブ・ララ。イルカの
胡座を組んで、手振りを交えて話すブブ・ララ。
「このスガタになってゴネン、ルイケイではジュウハチネンだ。トクシツは〈
「やっぱり、魔精消耗が少ないと思ったわ……」
脚を揃えて座るエイプリルが、タメ息を吐く。そんなエイプリルを見て、ブブ・ララが笑った。
「おいおい、オレはマセイもツヨいホウだぜ?チシキもソウゾウリョクもアるし、シンタイテキにもツヨい。ジブンでイうのもだが、キョウテキだったぜ?テメエらにゃマけたがよぉ」
鋭い歯を見せて笑うブブ・ララ。エイプリルも相手を讃える。
「こちらこそ、相手の感情に干渉出来る〈
「カられるガワはオレのホウだったか……」
エイプリルの説明に、頬を掻く。
「イエス!自分のポジションを考えてスピークしろよ?」
「キングは何もしてませんダ。立場を
調子に乗るアサクラを、ブレインが羽交い締めにする。よく見れば、オトそうとしているようだ。当然ながら、ブブ・ララは無視して続ける。
「ギブギブ!ヘルプ!」
「ふん。ツヅけるぞ。オレからテメエらにキきてぇコトがある。ナゼここにハイった?」
「あー……、えっと……、それは……」
先程の調子から一転、右眼を明るくして、静かに問う。エイプリルは言い
「ちから試しだよッ!」
それを聴いたブブ・ララは、少し呆けた後、腹を抱えて笑いだした。
「キヒッ!キヒヒヒヒヒ!そうかチカラダメシか!カッショクチビ!おマエ、ズイブンとショウジキだな!キにイった!」
「え?怒らないの?」
予想外の反応に、エイプリルは困惑する。
「そりゃナワバリアらされたのはハラタつがよ、オレはスナオなヤツがスきなんだ!ハラにイチモツカカえられるよか、ずっとイいぜ!だから、コンカイはユルしてやるよ!」
鋭い歯を剥き出して、大きく笑うブブ・ララ。スピラの行動がなければ、ここまで穏便にはいかなかったかもしれない。
「とはいえ、ここもボロボロになっちまった。カクれガとしてはキノウしねぇな……」
「隠れ家、ねぇ……。ブブ・ララさん、結構有名人みたいよ」
「マジか……」
木々が抉れ、陽当たりの良くなった林を見上げタメ息を吐く。
「それならッ!一緒に旅しようよッ!」
スピラが手を挙げて提案した。だが、ブブ・ララは首を横に振る。
「ヤめとくぜ。オレはセントウキョウなんでな、テメエらのアシをヒっパりかねん。」
「残念ですダ。貴方の戦闘能力は魅力的でしたダ。」
気絶したアサクラを捨て、顔を伏せるブレイン。
「だが、タビってのはイいアンだな。オレジシンをミツめナオすっつうことがヒツヨウかもしれねぇ」
血色の右目を閉じ、ブブ・ララが立ち上がった。
「てことで、テメエらにヒトつタノみてぇコトがある。このハヤシにハイってきた、バカなガキのことだ」
「そういえば、いたわねぇ」
「アイツ、顔はヨかったが、クマがデキてた。オレがコエをカけて、ヨーヤクオレにキズいたんだ。で、オレをカクニンしたシュンカンあれさ。アマりにヨワかった。ナンかあるにチガいねぇ」
深刻な顔で語るブブ・ララ。
「まかせてよッ!その人はどこにいるのかなッ?」
「おそらく、ヤマのホウだ。タノんだぜ、カッショクチビ」
ブブ・ララは、快く承諾したスピラの頭に手を置き、不器用に微笑んだ。
「ブブ・ララさんは、すぐ出発するみたいね。あたしたちもいきましょ。……アサクラはあたしが背負うわ」
「またねッ!おねーさん!」
「おう!タビサキでまたアうかもなぁ!キヒヒ!」
アサクラを背負って歩き出すエイプリル。スピラはブブ・ララに手を振って、エイプリルの元へ帰っていった。
「そうだ、クソガキがオきたらツタえてくれ!ツギアうトキは、ぶっコロすってなぁ!」
鉱物資源に富む山、サザン鉱。目を擦り、歩く人影があった。
『また、夢なの……?あそこは、何……?』
〈NEXTto『異界を夢見る少女』〉
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