第34話 今日も喫茶店が好き

今現代、お洒落かつ注文が高度な喫茶店、否、カフェが多くてただですら新しい場所に緊張する私は、そんなシャレオツ(死語)のお店に入って頼めるのは、オレンジジュースがオチだ。



私は幼稚園児か。



とにかく、今流行りのスタバ様、ドトールコーヒー様など、会計を済ませて注文をするのか、同時進行で注文か、後ろの人を待たせている焦りで断念か、の三択しかないようなお店には、知人か友人が同伴以外は無理。



独りで焼き肉屋さんに行った事はないが、よっぽどイケる(何が)



スタバ様の飲み物の種類は、囲碁の百手先を読むような難解さで頭が真っ白になる。



ドトールコーヒー様の最初に飲み物を決めて熱々の食べ物を待つソワソワする時間ですら、レジが、長蛇の列にも関わらずおばあちゃんがコンビニの店員さんと話しているくらいソワソワする。



さっきから「様」呼びは何でだろう。



私が「喫茶店」と言うのは「様」がつかない(逆に失礼)故人の祖父母の時代からある、木造で作られ、小さめの音楽が流れ、メニューがペッタンコの本の喫茶だ。



今はなかなか見なくなってしまったが、改装されたり、逆にお洒落にして老若男女をとりこにしている喫茶店も増えてきた。



私が住む街にも2、3件あり、お気に入りの喫茶店には半年に1度は必ず行く。



スタバ様やドトールコーヒー様のように、パソコンやお洒落グッズを持ち込んで仕事や話しに花を咲かせているお店も素敵だが、私は5分も持たず店から出たくなる。



木造で作られた喫茶店は、席にある程度の距離があり、テーブルや椅子はウッディなブラウンで、灯りは間接照明なので、本当に落ち着く。



「様」カフェとは違い(様カフェって何)パソコンやお洒落グッズを持ち込む人も少なく、ほとんどはコーヒーや会話や静けさを楽しむお客で溢れているので、ほっこりする。



店員さんもお冷やを出して、注文をして頼んだ物をテーブルに置いてレジを済ますまでは、放っておいてくれる。



今のご時世、黙食や時間制限はあるが、それでも家でもレストランでも味わえない、ひっそりとした、人はいるけれど、誰もみんな自分に集中している空間が好きだ。



私は文庫本の本を一冊だけ持って行き、軽食と飲み物を頼んで、本を読んだり、窓の外をぼんやりながめる。



孤独な趣味だが、大人になってからなぜかずっと続いている。



暖かな間接照明も、静かに入れ替わる人々も、木造の空間も、全てが世間の雑音や自分の雑音を洗い落としてくれるような気がする。



気持ちが落ち着くと文庫本をカバンに入れて、レシートを持ちレジで会計をする。



最後に「ごちそうさまでした」と言う口ぐせは故人の祖父母が礼儀にだけは、厳しく身に付いたものだ。



私はまた雑音の世界に戻るが、また喫茶店は沈黙と静けさで私を迎えてくれる。



私は今日も喫茶店が恋するように好きだ。





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