第31話 今日もおじいちゃんおばあちゃん子

厳しい両親が、私が小学校低学年に上がる頃には共働きだった。



一人っ子ということもあり、昔から周囲の大人や同級生に「寂しくないの?」と耳にたこ焼きが出来るほど聞かれるが(たこ焼きって何だ)本気で寂しくない。



兄弟、姉妹がいる方の生活が兄弟、姉妹に囲まれて暮らしているのが当たり前のように、一人っ子は1人が当たり前の生活だからだ。



小学校低学年から風邪をひけば、1日分の食費と病院代がテーブルの上に毎朝置かれている。



高熱が出ようが病院代を持ってフラフラとかかりつけ医まで歩いて行き点滴を打ち薬をもらい薬局にあるテレビで奥様が見る午前中のワイドショーをぼんやり見ていた。



.......大人になりよくよく考えれば寂しいか(笑)



なので同級生のような両親という感覚がなく一緒に暮らして保護して養ってもらっている2人という感じだった......書けば書くほどこれではもっと寂しいではないか、私は。



話をタイトルに戻すと端から見て寂しいが本人は凡庸に生きていたため寂しくない私が唯一、無邪気で子供らしくいられたのが、母親方の亡き祖父母だった。



祖父母は、初孫の私に甘く戦中産まれのため、食べ方や礼儀には諭すように厳しい面があったが甘いため、私はよく祖父母の家では笑っていた。



ちなみに30代からすでに頭の毛が後退していた祖父はすでに私が幼稚園の時には、ブルース・ウィリス顔負け、禿げていた。


その祖父の頭が祖父の家の窓から差し込む光で光るものだから幼稚園の時の私はよく祖父に言っていた。



「おじいちゃんのあたま、はげ♪はげ♪ひかる♪はげ♪はげ♪ひかる♪以下略」

子供って残酷ね♪.. .私がひどいのか。


そんな私を見たがら祖父は、怒るどころかニコニコずっと笑っていた。娘じゃなくて孫で本当に良かった。いや、孫だからこそ何でも許されたのだろう。



祖母は祖母で、珍しく金歯をしていた。この流れからお読みになっている方は分かるだろう(コナン風)



「おばあちゃんの歯がキラキラキラキラきんば♪キラキラきんば♪以下略」

今祖父母が元気に生きていたら、即効で土下座して謝りたいほどに私は無邪気に歌っていた。



父親が軍隊なみに厳しいと以前書いたが、父親に怒鳴られ幼い私が出来ない事を勉強させようとした後日、私は祖父母の家に行き泣い。



祖母が作ってくれた特大のおむすびを食べながら「お父さんひどいんだよ!わあああ(泣)モグモグ、ひどいんだよ!わあああ(泣)モグモグ、ひど以外」

と器用に泣きながら両親の厳しさを訴えながら食事をしていた。



祖父母はそんな私の話を聞きながら微笑んだ。


「それは、お父さんひどいねえ」

そんな相づちをうち私が泣きやむまで話を聞いてくれる。



今思えば、生きていくためのシェルターのような私にとっての安全地帯だった。



私が苛められ人間関係に悩み不登校になりかけた時に母親が学校に行きたがらない私の悩みを祖母にした。


祖母は一言で母親を諭した。

「◯◯の命と学校、どっちが大事なの?」

その一言で母親は我にかえっていた。



戦争でシベリア抑留者の少年兵として15歳で命からがら日本に帰ってきた祖父。



14歳で父親を戦死で亡くし、働く母親代わりに4人の(乳飲み子を含めた)姉弟を育てた祖母は、何より人の命を大切にする人だ。



それ以外は何とかなるでしょとおおらかにかまえ、しかし自分の意思は曲げないしなやかな精神の祖父母。


今でこそ、老害と言う言葉があるが戦中戦後を経験した父方の祖父母も母方の祖父母も同年代の高齢者は、人にもよるが背筋を伸ばし、若い人を大切にして、独りで生きようとする。



頼る国も家族も親戚もなかったと言うバックボーンがあるが私は亡き祖父母のような生き方をしたい。



誰のせいにもしない分、苦しい生き方だが人を大切にして自分を曲げないしなやかさがある人間に。



だから、私は亡くなってしまったが私は今日もおじいちゃんおばあちゃん子の本当は甘えたなのだ。




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