第16話 今日もお宅チェック
性別は女性だが、異常なほど人の家の間取り図や生活空間を見るのが好きだ。
なぜなら、子供の頃から集合住宅暮らしで貧乏だからだ。
特に子供の時、近所の家の子供や友人の誕生日に呼ばれるたびに、私も子供だったが、子供達がケーキとご馳走にはしゃぐ中、玄関から私のお宅チェックが始まる。
ケーキはいつでも後でも食べられる。
しかし、お宅チェックはは玄関から始まるのだ。
その家庭、家庭には自分の家とは違う匂いがある。
料理好きのお母さんがいる家、お酒を飲むお父さんがいる家、地主の古い木造の家、兄妹がたくさんいる家、新築の家、洒落ているが落ち着かない家。
とにかく、下手なアトラクションより見所満載だ。
書いていて、自分の貧乏感がむなしくなるが、書き出したからには負けない。
最初に幼稚園の時に住んだのは、小さな二間のアパート。ちなみに最近、取り壊されていて、更地になっていた。
幼稚園の友達に、お金持ちの海外に仕事に行くお父さんの家族がいた。
海外に転勤前、戸建てを借りた衝撃は、幼稚園児の私は、雷様におへそをとられるから隠せと父親からの嘘を越える。
姉妹で姉と友人の私は、その戸建てにお呼ばれした。
ちなみに、小学生に入学する時、一般的には新しい勉強机を買ってもらうが、一人っ子にも関わらず、私は祖父母の家にあった母親が使っていた40年もののお古だった。
書いていて、むなしくなってきた。だけど見たことないけどクローズゼロの映画で山田孝之が「貧乏人なめんなよ、強えーぞ」言っていたし。強いと思う。
話を戻すと、戸建てでまだペンキの香りのする家の2階にはガラスばりの姉妹の部屋があった。
普段はおっとり気味の私の目の色は変わり、姉妹の顔色が変わった。
「わー!勉強机が2つと本棚が2つある♪このガラステーブルは二人で使うの?♪」
普段はあまりしゃべらない私が部屋を縦横無尽に歩き回りながら、話すので、元気な姉妹がうなずき、ドン引きしていた顔を私は今でも忘れられない。ごめんね(今さら2)
「お、お菓子あるよ!」
突然、お宅チェックに覚醒した私に怯えながら友人の姉がお菓子に気をそらそうとした。
「大丈夫!あとで食べるから」
私にしては、珍しい自己主張の激しさだ。貧乏の底力。
部屋を2、3周してからお菓子を食べだした。今、思うと嫌な客でしかない。
その後、私の家族は転居し集合住宅に住んだ。
上階には、同じ小学校に通う上級生の女の子がいてお誕生日にお呼ばれした。
同じ間取りだが、軍隊なみに厳しい父親は、子供部屋なんて与えてはくれない。
そのこの子家に入った瞬間、私は衝撃を受ける。
二間あるうちの一つが兄妹の部屋なのだ。
ケーキとご馳走に騒ぐ子供達を尻目に、私は部屋を見てよいかと許可を得る積極性を発揮する。
「わー!♪机が2つに、ピアノがある!床マットは編み込みだあ♪」
ケーキに目もくれず、部屋に歓喜する私に、上級生のお姉さんがたじろいだ。
「床マットは、花の形だ!○○ちゃんが選んだの?ああ!お母さんなんだ!いいなあ、編み込み♪」
編み込みマットをさわさわさわりながら、うっとりしている私に、ドン引きしていたお姉さんの顔が忘れられない。
ちなみに子供部屋を与えられなかった私は、小学生で小さな可愛い子供部屋を与えるれた友人の部屋がうらやましく、3回もお部屋チェックばかりしていたら、出入り禁止をくらい、それからは仏間に通され、友人と遊んだ武勇伝すらある。
あれから大人になり、祖父母の家に転居したが、買い出しなど外に出るたびに戸建てを見てしまう。
今日も私はお宅チェックが止まらない。
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