第13話 今日も傷心

子供の頃から、感受性豊かで繊細で傷つきやすいと言われてきた。


いざとなると実は、図太い面もあるのだが見た目の大人しさと内向的な性格から言われ放題。



それで傷つく。やはり繊細なのかもしれないが。



外向的な両親は、私が子供の頃からつまらない冗談をよく言うので、私は真に受けては傷ついた。



例えば、母親はおへそから出るゴミはご飯で食べたゴマだと言い、幼稚園児の私は本気で信じ、人間のへそからはゴマが生涯でると信じた。



後日、大爆笑しながら冗談だとあざ笑う母親を見て私は軽く傷つく。



父親は、軍隊式の厳しい育て方をし、

町中でも私が一言でも父親にそむく事を言うと「勝手にしろ!独りで生きていけ!」と怒鳴り、小学生低学年の私を置いてきぼりにしたので、私は低学年にして、これから独りでどうやって生活していこうかと、真剣に悩んだ。



けっこう、今にして思うと、ハードな人生の始まりだ。



幼稚園の時、幼稚園の奥にある小さな林の中に、小さな小屋があった。



毎月一度、母親達が入っていくので私はあの小屋は何だと怯えたら、友人の一人が「あれは魔女の集会の小屋だ」と言うので、私含め、みんなで怯えた。



後で母親に聞いたら、たんなる親の集会所だった。あのおおぼらふきの友人の顔が思い出せない。



逆に、幼稚園の時からサンタクロースを信じていなかった私は、幼稚園のクリスマス会で冷めきっていた。



元をたどると、大好きな亡くなった戦後生まれの祖母が毎年「クリスマスにはお母さんからプレゼント何をもらったの?」と聞くため、プレゼントは両親、叔父からもらうもの、サンタクロースは寒い国に住む老人だと思っていた。



結婚40年の夫婦より冷めすぎてる。



クリスマス会で、サンタクロースの格好をした副園長先生がおやつが入った袋を配って回っていた。


「サンタさんだ!」と騒ぐ純粋無垢な友人達を見ながら、同じ幼稚園児の私はさっさと帰りたかった。



時間外労働を嫌うサラリーマンか。



つまらなくなってきてしまった私は、ワクワクしている横にいた友人に口をすべらせてしまった。


「あれ、サンタクロースじゃなくて副園長先生だよ」

今でも彼女の真っ青な顔が忘れられない。幼稚園児といえど申し訳なかった。


サンタクロースを信じられない自分が悔しかったのかもしれない。


その反面、大人になった今でも真面目に冗談を言われると真に受ける。



泣きそうになると相手が慌てるので、怒る。



繊細なんだが図太いのだか分からない。



でも、いろんな事が重なると幼稚園から冷めきっている私は傷ついて独りで泣く。



同世代が笑い飛ばす事でも、抱え込んでは、数えきれなくなった傷に泣く。



何だかんだ言って、今日も私は冷めきっている性格なのに、傷心している。


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