第12話 今日も天の邪鬼

子供の時から軍隊並の父親の教育や躾、私が少しでも口答えするとよく殴られた。



天の邪鬼と言うと、ひねくれものをイメージするが私の場合、父親からの第二次成長期のための自立するための手段として残っていたのが、天の邪鬼になる事しかなかった。



一人娘にも関わらず、父親は大家族で育ったため、社会に出るには厳しく正しくがモットーだったため、戦中の男子かと思うくらい厳しかったのだ。



映画、後ろの正面だあれをご覧頂ければ、並大抵の教育ではなく、昭和でも平成でもない叩き上げの教育。



私はよそから来たおしんか丁稚かと思うほど、目が腫れるまで泣いて、変な方向へ人を頼らずに育つ。



父親のおかげで、学校でも体を壊すまでしていた仕事でも母親の入院や手術まで独りでなんでもこなした。



よく育てたように子は育つと言うが、案の定、たくましく育ったのだ。



たが、年頃も過ぎ、その上を過ぎようとたくましく生きる私に父親は結婚を焦りだした、当の私ならいざ知らず、父親が。



私の恋愛については、「今日も独身」を読んで頂けたら幸いだ。



ちなみに家では、自分から恋愛の話なんてしない、なぜなら軍隊だから(違う)




周囲が結婚し、子供を産んだりする事に焦りはあったが、いざと言う時に強気で(見た目は小柄で弱気に見える)天の邪鬼で私の複雑な家庭の事情までまとめて受け止めてくれるような人がいる気がしない。




自分で書いていて、悲しくなるほどだ。




父親の軍隊式で育ったので、実の父親にすら言われた隙を見せろ、がない。



本当に信頼している人には相談したり心を開いて良いことも悪いことも話すが、それ以外の人には隙は見せられなくなった天の川ぶりだ。



だって、隙を見せたら戦場だったら殺されるでしょ・・・と思う私は誰だ(泣)



しかし悲しいかな父親の教育が成功しているのは確か。



初めて会う人なんかには、心の距離が千メートルくらいある。遠すぎ。



「人に頼るな、甘えるな」がモットーだった(微妙に今でも進行形だ)軍隊式の父親に言われた容易く、治らない。



それから、大丈夫でない時ですら、大丈夫だと言って乗り切る。周囲からは、おっとりしているように見える私だが、人生の修羅場こえて地獄を3度以上は、一人で乗り切る。



もともと体力もなく内向的な私なので、全てがかたずいた時に、突然、辛くなり独りで泣く。



まるで、崩れない要塞のようだ。



その要塞に、外から入れず中にいる私自身、なかなか出られない。



そんな時、やすやすと私の天の邪鬼をものともせずに助けてくれる人がいる。



学生時代は、学年で成績トップや文武両道や冷静で頭の良い男子か、勉強出来なくても頭の回転が早く人の目を気にしない、なぜか私の心を読む男子だった





中学時代、修学旅行前に私を地味だが泣きそうになった悲劇が襲った。



当時、私は美術部の副部長(部長が幽霊部員のため、ほぼ部長)文化祭用の仕事とクラスの副部長と他の委員会の3つを掛け持ちしていた。



放課後は毎日、7時すぎに帰宅した・・・小さなサラリーマンか私は。



修学旅行の1週間前に、観光地のそれぞれの発表があり、班1人1人が発表する授業があった。


3つの仕事を掛け持ちしていた私は、すっかり忘れていた。



先生から「では4班の皆さん、発表お願いします」と言われ、クラス全員の前に立たされるまでは。



確か、私の担当は三島由紀夫の金閣寺。読書好きの私だが、読んだ事がなかった。


金色、三島由紀夫自害、京都、一度燃えた寺、そんな安い知識で乗り切れるとは思えず、うろたえた。



うろたえたのに、班の人にも天の邪鬼を発揮して言えずに途方にくれてたら、学年成績トップの班長の男の子が、私に黙って近ずく。



「長谷川さん、金閣寺、読んだ事ある?」頭を左右にふると、「これ、僕がまとめたやつだから順番きたら読んで」



そう言って渡されたのが5ページに渡る金閣寺の小説とれきしをまとめたものだった。



申し訳ないのと、感謝でいっぱいで、初見でスラスラ読めるほどまとまっていた。



仕事でもミスや時間のかかる仕事は徹夜で挽回し、睡眠すら削った。



そんな時に「大変だったでしょ」と心から労ってくれた年配の男性もいた。



母親が病気をし、辛い入院と手術の時も近所の人が気遣い声をかけてくれた事もある。



人生も半分手前まできている気持ちなので、天の邪鬼はなおしたいが、また言ってしまう、大丈夫だと、一人で出来るからと。



だから、今日も私は試行錯誤の天の邪鬼だ。


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