禁断の恋の結末

 沈んでいた意識が浮かび上がるのを感じる。

 白い世界に包まれる感覚を覚えそっと目を開けてみる。


夜月ないとさん!」

 聞き慣れた声がした方向に目を向けると、泣きそうな顔をした愛しい恋人の顔があった。

「ゆき……」

 掠れた声で名前を呼ぶと、彼女の目から涙が溢れてきた。

「夜月さん、2週間くらい目が、覚めなかった……んだよ。もう目が、覚めない、じゃないか、て私……」

 後から後から出てくる涙を拭ってやりたくても体が動かない。どうすればよいか思案していると部屋の扉が開いた。


 魔法少女たちが入ってくる。

「雪ちゃん、どうしたの!? 彼が目覚めてる、看護師さん、看護師さ〜ん!」

 バタバタといきなり騒がしくなり、医師や看護師がやってくる。

 診察やら何やらが終わってやっと落ち着いたのはそれからだいぶ経ってからだった。


 いろんな人からの話を整理したところによると、僕が倒れた後、幸運にも魔法少女たちがやってきてステラたちを倒したらしい。それから、まだ息があったらしい僕は、魔法少女の一人の父親が経営している病院に運ばれ、大手術の末に助かったそうだ。

 今はまだ体が動かせない状態で今しばらく入院治療が必要だと言われた。


 物思いに耽っていると、ドアがノックされた。どうぞ、と返事をする。

「夜月さん、具合はどう? しんどくない?」 

「大丈夫だよ、雪。心配かけて本当にすまなかった」

 彼女は首を横に振る。

「謝らなきゃいけないのは私の方。私を守ってくれたせいで大怪我を追ってしまって、ごめんなさい」

「雪のせいじゃないから謝らないで。君に怪我がなくてよかった」 

「夜月さん……」

 僕と彼女は見つめ合った。


「この雰囲気、なかなか話に入っていけないクルン」

 いきなり声が聞こえて首を回すと、ベッドサイドの椅子に大きいネズミのような小動物がちょこんと立っていた。

「クルン!」

 クルンと呼ばれたこの不思議生物が言葉を発したらしい。

「雪たちココドールに感謝するクルン。敵だったお前を助けたのは雪たちが必死に頼んできたからクルン」

「それはどうも?」

 クルンは魔法少女より立場が上らしい。

「フン、まだ状況がわかってないみたいクルンね。お前たち秘密結社はココドールたちの活躍で消滅したクルン」

「消滅……」

「お前たちの社長は元の世界へ還され、他の連中は記憶を全て消したクルン。お前の記憶も本来なら消すべきクルンが、記憶を消すと雪との記憶もなくなってしまい、雪が悲しむから消せないクルン。己の命を賭けて守った雪を幸せにするのがこれからのお前の役割クルン」


 僕は彼女の方を向く。

「雪、これからも一緒にいてくれる?」

「もちろん。これからもよろしくね」

 僕と彼女は微笑みあった。

 悪役幹部はただの男になって、ずっと彼女を守っていく。


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ゾロ目企画:悪役幹部の恋 万之葉 文郁 @kaorufumi

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