秘密の露見

「おとといの夜、何してた?」

「家にいたよ。なんで?」 

 探るような彼女の問い掛けになんでもないかのように問い返す。

「似た人を見かけた気がして」

「きっと他人の空似だよ」

 その言葉が妙に空々しく響いた。


 何かを言い募ろうとする彼女。

 その時、彼女のスマホが鳴った。

「あっ……」

 送られてきたメールを見て彼女は逡巡するように視線を泳がす。

「どうしたの?」

 僕の問いかけに、急用ができて、と小さく答える。

「急用ができたなら早く行かなきゃ」

「でも」

「僕のことは気にしないで行ってきなよ」

「ごめんなさい」

 謝る彼女を抱き寄せ、キスをする。

「雪は何があっても僕のものだよ。それを忘れないで」

 僕の言葉に頷いて、彼女は思いを振り切るように部屋を出ていった。


 一人になった部屋で僕はこの関係が長く続かないことを悟った。



 ***


 数日後。

 社の自室で、部下の報告を聞いていた。

「──魔法少女の排除には未だ至っていません」

「引き続き任務を遂行しろ」


 腹心の部下は淡々と言う僕に歯に衣着せず疑問を投げかける。

「これ、やっぱり氷室さんが直接やった方が早いんじゃないですか?」

 そんな部下に怒りもせずに答える。

「僕は前線に立つのは性に合わない。それに水面下で動いている。お前は言われた通りやれ。これで魔法少女を倒したら巨人ジャックの座を奪えるかもしれないぞ」

「俺にチャンスを与えていると」

巨人あれよりは優秀だと思っている」

 僕の言葉に部下はやる気になって勇んで部屋を出ていった。単純なやつだ。


 これで表立って魔法少女の彼女と相見えることはなくなった。それでもいつまで保つか。

 そして、僕の予想は正しく、間もなく二人の関係は社長に知られるところになった。



 ***


「お前が魔法少女と通じているというのは本当か」

「本当です」

 社長の質問に、僕は平然と答え言葉を重ねる。

「社長。これも作戦の一つです。魔法少女の一人を籠絡し魔法少女の絆にヒビをいれて動揺しているところを倒します」

 でまかせの僕の言葉に疑問を持たずに社長は頷く。

「そうだったのか。では、さっさと遂行しろ」

「承知致しました」

 僕はその足で自分のマンションへ戻った。



***


 家に帰ると、彼女が食事の支度をしていた。

「夜月さん、早かったのね」

 笑顔で言う彼女を居間に呼び寄せ、僕は彼女を見据えて言う。

「僕は秘密結社の幹部だ。僕と一緒に社に来てくれないか」

 彼女は急な僕の申し出に当惑する。

「え……そんなこと急に言われても。友だちを裏切れないよ」

「雪はもうとっくに気付いていただろう? 友を裏切って、敵である僕と一緒にいた。そうだろう?」

「違う!」

「違わない」

 僕は彼女を抱きしめた。

「君は僕と離れられない。そうだろう」

「夜月さん」

 彼女は僕にしがみつく力を強くした。





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