魔法少女との戦い

 僕と彼女は逢瀬を重ね、やがて僕の家で二人の時間を過ごすようになった。


 僕の家は高級マンションの高層階にある。彼女は最初は気後れしたようだが、すぐに慣れ、使われていなかったキッチンはすっかり彼女専用となった。


 彼女が食後のコーヒーを淹れてくれる。

「最近忙しいみたいだけど、ちゃんと休めてる?」

 このところ彼女に急に用事が入って逢えない日が続いたので、聞いてみる。少し疲れているようにも見えた。

「友だちに誘われてクラブに入ったの。まだ慣れなくて」

 あの「お助けクラブ」とかいうやつか。あの三人が憎らしくなる。

「無理に付き合うことないと思うよ」

「私でも人の役に立てることが嬉しいから」

「でも、それで雪が体を壊すの僕は嫌だな」

 手を重ねると、彼女は嬉しそうに顔を伏せる。

「心配してくれてありがとう。私は大丈夫だよ」

 僕を安心させようと笑顔を見せる彼女を抱き寄せた。このまま時間が止まればいい。そう願った。



 ***


 宵闇コーポレーション本社ビル。


 照明の落とされた社長室。正面の大きな机にひじを付いて座っている社長の顔はよく見えない。


「君を呼んだのは他でもない。君に我々の計画に邪魔な魔法少女ココドールたちを屠って貰いたい」

 社長は年齢不詳の声で司令内容を口にする。

「討伐を任せたクラブの巨人ジャックとダイヤのステラは無様にも毎回負けてくる。魔法少女如きに最高幹部の君を使いたくはないが致し方ない。方法は任せる。早急に駆逐しろ」

 

「謹んで拝命致します」

 僕は恭しく礼をして社長室を後にした。



 ***


「私は友愛 ココスプリング!」

「私は勇気 ココサマー!」

「私は癒し ココオータム!」

「「「ココドールここに見参!!」」」


 名乗りを上げてポーズを決める魔法少女三人を建物から見下ろす。


「我はスペード。お前らを葬り去る」

 仮面を付けていているので正体はばれないが、巨人と星あいつらは毎回これをやっていたのか。神経を疑う。


「スプリングストーム!」

「サマーブラスト!」

「オータムグランダー!」


 魔法少女が繰り出す技を次々といなし、僕は手にした剣を振りかざした。

「唸れエクスカリバー」

 剣から放たれた強力な衝撃波で魔法少女たちは呆気なく倒れる。魔法少女なんてこんなものか。


「みんな!どうしてこんな……!」

 遅れてきた真っ白な衣装を身に纏った少女と正面に相対する。

 僕は彼女を見て驚愕する。

「雪……」小さく声が溢れたが、それは風にかき消された。

「よくもみんなを!ウィンターブリザード!!」

 隙きを突かれ反応が遅れたがなんとか攻撃を受け止める。そして、それをそのまま返した。吹き飛ばされる彼女。


「……魔法少女とはこんなものか。興醒めだ」

 僕は身を翻し、その場を立ち去る。

 そこには傷だらけで倒れた魔法少女たちが残った。

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