第68話 回復されたパラダイス

 バビロン捕囚から70年後(70という数字は人の一生分という意味もあります)キュロス大王はイスラエル国民を祖国に帰します。ただ帰還させるのではなく、エルサレムに神殿を再建設出来るよう資金も持たせてくれます。太っ腹。


 バビロンの地からエルサレムまでは1000キロ以上。東京から直線距離で種子島まで歩いて帰るんです。帰還しない事を選ぶ高齢者もいました。預言者ダニエルは九十代でしたね。ダニエルはバビロンで亡くなりました。


 では、70年放置されたエルサレムの状態と、どのように回復されていくのかイザヤの言葉から見てみましょう。私の好きな聖句から抜粋。新改訳です。


『狼は子羊とともに宿り、ひょうは子やぎとともに伏し、子牛、若獅子、肥えた家畜が共にいて、小さい子どもがこれを追っていく。雌牛と熊とは共に草をはみ、その子らは共に伏し、獅子も牛のようにわらを食う。乳飲み子はコブラの穴の上で戯れ、乳離れした子はまむしの子に手を伸べる』11:5〜8


 放置されたエルサレムは雑草が生い茂り、野獣が住み着いています。危険ですね。しかし神様はしばらくの間、野獣が家畜に害を与えないようにされます。


 赤ちゃん、幼児だって蛇に噛まれる事のない地にしてくれます。まさにパラダイスです。荒れた地はどうなるでしょうか。


『荒野と砂漠は楽しみ、荒れ地は喜び、サルランのように花を咲かせる。盛んに花を咲かせ、喜び喜んで歌う。レバノンの栄光と、カルメルやシャロンの威光をこれに賜るので、彼らは主の栄光、私たちの神の威光を見る』35:1〜2


 荒れた地は美しい花で満たされるんです。パラダイスです。帰還した人間の状態はどうなるのでしょうか? パラダイスになったらテンション上がりますね。


『心騒ぐ者たちに言え。「強くあれ、恐れるな。見よ、あなたがたの神を。復讐が、神の報いが来る。神は来て、あなたがたを救われる。そのとき、目の見えない者の目は開き、耳の聞こえない者の耳はあく。そのとき、足のなえた者は鹿のようにとびはね、口のきけない者の舌は喜び歌う。荒野に水がわき出し、荒れ地に川が流れるからだ』11:3〜6


 今まで神を無視していたユダの民は、霊的な健康を取り戻すんですね。目が見えて耳が聞こえるようになるんです。比喩的に神を見、神の声が聞こえるんです。


 このイザヤの預言通り、二十万人以上のユダの民が神の庇護を受け、神殿再建に着手しました。従順な民には他にも祝福がありました。


『見よ。まことにわたしは新しい天と新しい地を創造する。先の事は思い出されず、心に上ることもない。だから、わたしの創造するものを、いついつまでも楽しみ喜べ。見よ。わたしはエルサレムを創造して喜びとし、その民を楽しみとする。わたしはエルサレムを喜び、わたしの民を楽しむ。そこにはもう、泣き声も叫び声も聞かれない。そこにはもう、数日しか生きない乳飲み子も、寿命の満ちない老人もない。彼らは家を建てて住み、ぶどう畑を作って、その実を食べる。

彼らが建てて他人が住むことはなく、彼らが植えて他人が食べることはない。わたしの民の寿命は、木の寿命に等しく、わたしの選んだ者は、自分の手で作った物を存分に用いることができるからだ。彼らはむだに労することもなく、子を産んで、突然その子が死ぬこともない。彼らは主に祝福された者のすえであり、その子孫たちは彼らとともにいるからだ』65:17〜25 抜粋


 新しいエルサレム。まさに自分たちの手で回復していくパラダイス。荒野が庭園になり、もう他国軍に政略されないという保証の言葉です。


 嘆きも叫び声も上がらず、安心と平和のうちにユダの民は暮らせるんですね。


 このイザヤ書の言葉をある宗派は、天国の様子と捉えます。天国は花畑。そこでは泣くことも死ぬ事もないパラダイスです。


 またある宗派は将来、地上がこのようにパラダイスになると信じています。同じ聖書の言葉で解釈が違うのが面白いですね。


 いずれにしろ、この神様の祝福のおかげでユダの民はある事に気がつきました。なぜ我々の先祖はエジプトで苦しみ、またバビロンで苦労したのか? それは神の契約を守らなかったからだ! 神さまに逆らってきたからだ。これからはトーラー(モーセの律法)を守ります。


 モーセの十戒、モーセのおきてを守り、契約の民としてヤハウェを崇拝し続けます! とバビロン捕囚をきっかけにユダの民は誓いました。


 そうです、この時にユダヤ教が成立し、ユダの民がと呼ばれるようになりました。


 バビロン捕囚で全てのユダの民が殺されていたら……ユダヤ教もキリスト教もなかったのです。ヤハウェが守ったからこそのユダヤ教。メシアの到来を信じ続けたユダヤ人。イエス・キリストの誕生でキリスト教も生まれました。


 次回、ユダヤ人の現在と、大預言イザヤの晩年についてお伝えいたします。

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