第53話 使徒ヨハネ 弟子訓練 特権

 ヨハネは「ヨハネによる書」の中で自分の事を、と記しています。ナルシストですか? いえそう書きたくなるエピソードがあります。いくつか取り上げますね。


 イエスは弟子たち全員に不思議な事を言いました。

 

「真実に言いますが、ここに立っている人の中には、死を迎える前に、神の王国が力を持ってすでに来ているのを見る人たちがいます」マルコ九章一節


 ん? 何を言ってるのかな? 使徒たちですら理解出来なかったでしょう。


 それから六日後、イエス様は高い山に登ります。何のためでしょう? その証拠を見せるためです。その時、ペテロとヤコブとヨハネだけを指名し連れて行きます。


 どこに連れて行かれるか分からなくても、ご指名されて嬉しかったに違いありません。高い山とありました。資料によるとカエサレアのヘルモン山の可能性が

あります。標高二千八百十四メートルです。どこまで登ったのかは不明。


 酸素も薄くなっていった事でしょう。三人は疲れてうとうとします。


 体育座りで眠り込む三人の前にイエスが現れました。外衣はキラキラと輝き、真っ白です。イエス様がめちゃくちゃ輝いています。


 三人は驚いた事でしょう。イエスだけではないのです。イエスを真ん中にしてエリヤとモーセが両脇に立っていたのですから! この二人もキラキラです。霊者。


 イエスとモーセとエリヤは語り合っていました。何を? 分かりません。


ですが、空気を読まないペテロは、お話中を無視。イエスにこう言います。


「ラビ、私たちがこの場にいられるのは素晴らしい事です。三つの天幕を立てさせて下さい。あなたとモーセとエリヤのためです」


 今度はイエス様が無視。ペテロ君、そういうとこだぞ。ヨハネを見習って下さい。けど幽霊見ちゃったと思わなかったんですね。変貌と記述してます。


 三人がガクブルしていると、もっと恐ろしや。神様の声がしました。

「これは私の愛する子である。彼の言うことを聞きなさい!」

 

 三人はもっとガクブル。すでにモーセもエリヤもいません。ペテロが話しかけなければ、どんな会話していたのか聞けたのに。飲み会の相談とか。知らんけど。


 特権。大勢の中から使徒に選ばれ、またその中から三人きり。ヨハネが愛されていると優越感に浸るのも無理ありません。


 しかもそれだけではありません。最後の晩餐の時、イエス様が隣に座らせたのはヨハネです。十二分の一の確率です。ヨハネが舞い上がるのも無理はありませんね。あっ、もしかして? もしかすると? いやなんでもありません。卑猥な想像はいけません。


 そして極め付けが、イエス様が十字架に付けられた日の出来事です。


 処刑の場にいたのは、ヨハネ。愛するイエス様の苦しむ姿を見る強さも天晴れですが、イエスの母親マリアを心配して、ずっとそばについていました。


 イエスは苦しむ中で、息も絶え絶えにヨハネと母マリアに言います。


「見なさい、 あなたの子です!」「見なさい、あなたの母親です!」


 おお、何という事でしょう。イエスは大事な母親の世話を、自分の肉親に託すのではなく、使徒ヨハネに託したのです。


 雷の子と呼ばれたヨハネにです。気性が激しかったヨハネです。ヨハネです。ヨハネです。ヒロシです。(懐かしい)


 マリアが息を引き取るまで、ヨハネは自宅で世話をしたとありました。


 ヨハネはイエス様のそばにいた事で、愛を身につけ、人格を変化させる事が出来ました。


───イエスの変貌を見たこと、隣に座らされたこと、母親を託されたこと、どれも特権ですが、「イエスが愛した弟子」と堂々と書き、四福音書として今日ま

で認識された事が何よりの、これこそが特権だと思います。


 さて、使徒ヨハネはイエスの死後、どうなったのでしょうか?


ヨハネについて書く前に、他の使徒たちの最期をお伝えしますね。


 ヨハネのメンタル大丈夫かしら? 皆さまも応援宜しくお願いします。


 

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