第52話 使徒ヨハネ 弟子訓練 教えから学ぶ

「すべて、疲れた人、重荷を負っている人は私のところに来なさい! 私があなたを休ませてあげます。私は心優しくへりくだっているからです。私から学びなさい。そうすれば魂に安らぎが来ます。私と共に働く事は心地良く、私の荷は軽いからです」マタイによる書 11:28〜30


 使徒たちはイエスと働く事を心地良く感じていたのでしょうか?


 ヨハネはイエス様の「教え方」からどんな点を学んだのでしょうか。エッセイから二つのエピソードをご紹介しますね。


☆*:.。. 罪のない者が最初に石を投げなさい!.。.:*☆


 イエス様は仮小屋の祭りが終わると、毎日会堂で教えられた。モーセの律法に通じる学者もパリサイ派もイエスの話を苦々しい顔で聞く。


 ある朝早く、イエス様がいつものように民衆に囲まれて教えておられると、パリサイ派と律法学者が女を連れてきた。


 その女は姦淫の罪を犯したらしい。真ん中に立たされて怯えている。


「ラビ、この女は姦淫の現場で捕らえられたのです。───モーセの律法の中で、こういう女を石打ちにするように命じられています。ところであなたは何と言われますか?」


 私は、すぐに分かった。イエス様を告発したいのだ。私も他の弟子もイエス様の返答に耳を傾ける。


 もし、「石打ちをするように!」と答えればローマに対する反逆罪になる。ローマの支配下にあるユダヤ人が死刑を宣告する事は許されない。イエス様を罠にかけている。


 イエス様はただ身をかがめて地面に何かを書いておられる。思案しているのだろうか。パリサイ派は苛立ちながら、同じ問いを繰り返す。


「この女を許してあげなさい!」とイエス様が返答するのを期待していたかもしれない。その答えはモーセの律法に違反していると罪に定める事が出来る。


 私はパリサイ派のやり方は汚いと思った。イエス様は何と言うのだろう。


「あなた方のうちで


 素晴らしい返答だ。モーセの律法に違反した事のない者、罪のない者が一番に石を投げるようにと。それは正当な手続きである。

 

 最初に石を投げた者に罪が有れば、その者が裁かれて石打ちにあう。自分に罪がない者などいない。パリサイ派も律法学者も民衆も、誰一人女に石を投げる事が出来なかった。


 気がつけば取り残された女とイエス様だけになっていたという。私はこの話をずっと後から聞いた。女はイエス様の言葉を待っていたという。死刑になる覚悟もあったのだと言った。イエス様がどんな言葉をかけたのか教えてくれた。


「私もあなたを罪に定めない。行きなさい。今からは決して罪を犯してはなりません」と。


 イエス様は全ての人の罪を取り去る子羊として、贖いとなった。この女はその日から罪を犯さず、イエス様の死に感謝して生きてきたという。


 この出来事から罪を憎んで人を憎まない事、また義と憐れみ深さを学んだ。


☆*:.。. 互いに愛し合いなさい.:*☆


 最後の過ぎ越しを祝うために、エルサレムに入った日の出来事である。


 二階で食事をするためにサンダルを脱いで部屋に入った。みんな客であると思って、足を洗わないでいた。それは奴隷がする卑しい仕事だからだ。


 私は最初の弟子だ。あとから弟子になった者がすれば良い。いやなんならペテロがやればいい。


 みんなも同じ考えだったんだろう。誰一人として水と拭き布を持って来る者はいない。


 するとイエス様がペテロの足を洗い、拭き始めた。当惑する私たち。イエス様は十二人全員の足を洗い拭いて下さった。そしてこう言った。


「私が主また師でありながら、あなた方の足を洗ったのであれば、あなた方も互いに足を洗うべきです。私はあなた方のために模範を示しました」


 私たちはイエス様の模範から謙遜になる事を学んだ。


食事のあとは、残念なことにまた誰が一番偉いのかという口論が始まった。ペテロは私だと言わんばかりに胸を叩き、ヤコブも私だと言い張る。


 イエス様はそんな私たちを叱りつけるのでもなく、優しく諭す。

「私はあなた方に新しいおきてを与えます。それは。私があなた方を愛した通りに、あなた方も互いを愛する事です。あなた方の間に愛があれば、それによって全ての人は、あなた方が私の弟子である事を知るのです」


 そうだ。イエス様はどんな時も私たち弟子を大切にしてくださった。モーセの律法は規則ばかりだが、新しいおきてはただ一つ、互いを愛する事である。


 簡単なようで難しい。イエス様の弟子である事を証明するには互いを愛する事だと学んだ。


 ヨハネは素直ですね。イエスから教えられた事を受け止めて、謙遜で愛のある人になるよう努力しました。


 次回、三人だけに与えられた特権です。ペテロとヤコブ、そしてヨハネだけがある物を見る事が出来ました。何でしょうか? 乞うご期待! 

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