第49話 使徒ヨハネ イエスの弟子になる

 前回、使徒ヨハネは四福音書の一つ「ヨハネによる書」の筆者である事をお伝えしましたね。


 今回はそのヨハネ様をスタジオにお招きし、弟子になった経緯いきさつをお伺いしたいと思います。知る人ぞ知るインタビュー形式です。


ハナス───ヨハネさん、本日はお忙しい中お越し頂きありがとうございます。今日はですね、ぜひヨハネさんが弟子になった時のいきさつを聞かせて頂きたくお呼びしました。宜しくお願い致します。


ヨハネ───こんにちは、ハナスさん。弟子になった時ですね。わかりました。んー、何から話そうかな。私はイエス様の弟子になる前は洗礼者ヨハネの弟子だったんです。あっ、その事はご存知でしたね。


ハナス───はい、知ってます。洗礼者ヨハネは立派な方でしたね。


ヨハネ───そうです、とても勇敢な方でした。ラビが投獄されてしまい、私は動揺しました。イザヤの巻物にはその事が預言として書かれていましたが、実際そうなると現実を受け入れるのは難しかったです。


ハナス───お気持ちお察しします。それでみんな一度故郷に戻ったんでしたね。


ヨハネ───はい。ペテロもその兄弟アンデレも、私もガリラヤ湖で仕事をしました。兄弟ヤコブも一緒です。私は父親の会社を継ぐつもりでした。


ハナス───仕事? ああ、みんな漁師でしたね。しかもヨハネさんの家はお金持ちで、船を所有していたとか。ペテロやアンデレを雇っていたんですか?


ヨハネ───いや、彼らも小さいですが舟を持ってました。まぁ、漁師仲間って事ですね。特にペテロは漁師が天職だと言えるほどでした。


ハナス───知ってます。ペテロさんは泳ぎも得意なんですよね。知らんけど。


ヨハネ───ハハ、そうでした。ペテロは復活したイエス様を見た時、一番に泳いで近づいたエピソードがありました。それだけイエス様を慕っていたんでしょう。高熱の姑を癒やしてもらってますし、信仰も一番あったかもしれません。


ハナス───あっ、イエスの事を忘れていました。バブテスマを受けた後、荒野で四十日間過ごし、聖霊に満たされて奇跡をたくさん行ったんでした。

病気の人を癒したり、悪霊に憑かれている人から悪霊を追い出したり、いわば有名人になっていましたね。


ヨハネ───イエス様は癒しの奇跡だけでなく、会堂でも立派な事を教えておられました。ナザレやカペルナウムでは、イエス様がメシアだという噂で持ちきりでした。


ハナス───ヨハネさんもイエス様がメシアだと信じてたんですか? 


ヨハネ───まあ、はい。けれどこのあと確信できる出来事があったんです。その事についてお話ししますね。イエス様は群衆に追いかけられて疲れていたんでしょう。ある時ガリラヤ湖の北ゲネサレ湖にやって来ました。舟に乗って群衆に話をするためです。波のおかげで音響効果もあり、多くの人が落ち着いて話を聞けます。イエス様も舟の上なら座って話せます。選ばれたのがペテロの舟だったんです。


ハナス───ああ、ちっこい方の舟ですね。ペテロ嬉しかったでしょうね。


ヨハネ───そうでしょう! イエス様の話を間近で聞けたんですから。それよりもっと嬉しい事があったようです。イエス様は話終わった後、ペテロに沖に出て網を下ろすように命じたそうです。前夜一匹も魚が捕れなかった事を知っていたんでしょう。


ハナス───イエス様は舟を出してくれたお礼をしたかったんでしょうか?


ヨハネ───ハハハ。それもあったかもしれませんが、ペテロに奇跡を見せて信仰を強めるためだったと思います。いやペテロの従順さを確かめるためだったかもしれません。


ハナス───どういう事かしら? ペテロはすでに奇跡を見ていて、イエスがメシアだと信じていたはずですよね。どうやって試したんですか?


ヨハネ───ペテロはプロの漁師です。そこでは真昼間に魚が捕れない事を熟知しています。ハナスさんはガリラヤ湖で獲れる魚の種類を知っていますか? 十種類くらいいてニシンくらいの大きさの物から、長さ七十五センチ、体重七キロの魚がいるんですよ。昼間は海底でひっそりとしているでしょう。


ハナス───ふうん、釣りした事ないので。で、ペテロはイエス様の命令を無視したんでしょうね。私なら『あなた大工じゃね? こちとら漁師ですけど!』って言ってしまいそうです。


ヨハネ───とんでもない。ペテロはイエス様のおっしゃる通りに網を下ろしました。そしたらですね、網は裂けたし、舟は沈みそうになって助けの舟を呼びましたよ。助け舟も沈みそうになるほど大漁でした。


ハナス───それはみんな驚いたでしょうね。それを目撃したヨハネさんも驚いたでしょう。


ヨハネ───もちろんです。驚いてる私たちにイエス様は何をおっしゃったと思いますか? 有名な言葉ですからハナスさんも知ってるでしょう?


ハナス───えっと、思い出しますね。みたいなプロポーズのノリでしたね。ん〜と。


ヨハネ───正解は。なんですよね。これからは魚ではなく、人間を獲る、つまりキリストの弟子にするしごとに変わるって事です。


ハナス───わぁ、素晴らしい招待の言葉ですね。簡単に言えばパートタイムからフルタイムのお誘いですね。あっ、そうか、分かりました! イエスは大漁の奇跡を実感させて食糧の不安を持たないようにしてくれたんですね。ペテロとアンデレは資産がないからすぐに捨てられたでしょうね。ヨハネさんは?


ヨハネ───もちろん私も捨てました。船もお金も。父親からの相続財産も……そして父親も。キリストの弟子になるという事はそういう事です。


ハナス───ヨハネさん、カッコいいです。イエスを神の子だと信じきってなければ出来ない事ですね。さすがイエスに一番愛された弟子です。感動しました。このあともイエスの弟子としてどんな活動を行ったか紹介したいと思っています。ありがとうございました。


 ヨハネさんにインタビューのお礼を渡しました。彼は喜んで受け取ってくれました。笑 


次回、ヨハネの瞬間湯沸かし器性格を暴露します。お楽しみに!



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