第40話 姉〈ミリアム〉の死& モーセの失敗
「イスラエル人の全会衆は、第一の月にチンの荒野に入り、民はカデシュにとどまる事になった」民数記二十:一
イスラエル国民がエジプトを脱出してから、ちょうど四十年が経ちました。長かった。約束の地カナンを目の前にしながら、ぐるぐると荒野を彷徨っていたんです。カデシュの地名覚えていますか? 十二人の斥候を送った場所です。
あれから何人亡くなったでしょうね。子どもたちは成人に、おじいちゃん達はもっとおじいちゃんになっている事でしょう。
アロンは百二十三才です。モーセは百二十才。年寄り兄弟です。お姉ちゃんのミリアムはもっとババア、もとい、高齢者になっていますね。
ミリアムは約束の地を前にして力尽きました。そうです。お亡くなりになりました。もう少しだったのにね。女預言者としてモーセを助けてきたのにね。
皮膚病になったあとは、縁の下の力持ちになって、民を励ます役目を担いました。二人の弟のために、民と平和な関係を築いてきました。さすが長女です。
水がなくなると、民を励まし、井戸掘れワンワン。長老たちは、ミリアムの掛け声に元気をもらって井戸を掘ります。そんなイスラエルの母が亡くなりました。
モーセとアロン、泣いたでしょうね。ずっとお姉ちゃんに守られてきましたものね。ミリアムお疲れ様でございました。
ミリアムが葬られると、たちまち水もなくなります。井戸掘れワンワンの掛け声が無くて、民はやる気も失せたのでしょう。モーセとアロンに文句を言います。
「仲間達が死んだ時に、私たちも死んでいればよかった。どうして私たちをエジプトから連れ出してここで死なせるのか。ここでは種を蒔けず、イチジクやブドウやザクロも育たない。飲む水もない」
モーセに逆らっています。そのセリフ聞き飽きたんですけど。うん、でも分かるよ。いまだに食物はマナですから。そのうえ水がなければ泣きたくなるね。反逆すれば神様に殺されるし、戦いに出れば敵国に殺される。忍耐の時ですね。姉を亡くしたばかりのモーセとアロンを気遣うどころか、イライラさせるイスラエル人。学習能力ゼロです。
モーセとアロンは神様の前にひれ伏します。神はモーセに水の出し方を説明します。
「杖を取って民を呼び集め、あなたと兄のアロンが民の前で大岩に話して、水を出させなさい。あなたは民のために大岩から水を出し、民と家畜に飲ませます」
モーセは神様の言う通りに杖を取ります。そして大岩の前に民を集めて、
「さぁ聞きなさい、反逆者たち! この大岩から私たちがあなたたちのために水を出さないといけないのですか」と叫びました。
そして杖で、大岩を二度打ちます。たしかに水は出ました。が、何か違う気がする。神様の指示と違う気がします。岩に話すのではなく、杖で打ちました。
柔和なモーセ、よっぽど怒っていたのでしょう。指示聞き間違えも耳が遠いからだと思います。神様、ごめんなさいね。モーセ、もう年ですもの。
遠くで神様の声がします。ハナスには聞こえました。モーセとアロンの耳には届いているでしょうか?
「あなたたちは、私に信仰を示さず、イスラエルの民の目の前で私を神聖なものとしなかったので、私が与える土地にこの会衆を連れて入る事はない」
何ですと! あなたたちってモーセとアロンの事ですよね。
四十年以上、民の文句タレブーに耐えて、耐えて、耐えてきたモーセ。
ここにきて失敗してしまいました。神様、考えな直してください。モーセとアロンを約束の地にどうか連れて行って下さい!
悪い時には悪い事が重なります。モーセとアロン頑張れー!
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