第36話 金の子牛崇拝& モーセの怒り

 モーセは祈りが終わると、スタコラサッサ山を降ります。二枚の石板を大事に脇に抱えてスタコラサッサ。石板は神が書いたものです。両面に書かれています。


 聖書の中で両面に書かれるとは、とても重要なメッセージという意味があります。よく黙示録に両面に書かれた巻き物が出てきます。


 二枚。一枚はコピーなんです。重要書類はコピー必要。その石板を抱えてスタコラサッサ。中腹で待機していたヨシュアと合流。ヨシュアは忠実です。四十日間、ここで待っていたんです。良かった。私の好きなヨシュア、誰ともエッチな事してないよね。ちなみにこの時、ヨシュアは五十代半ばです。ハナスと同じくらいです。〈ヨシュアについては、「ダビデに恋して1」をお読み下さい。宣伝〉


「宿営で戦いの声がします」ヨシュアには民の声がそう聞こえたのでしょう。モーセは首を横に振り、「勝利について歌う声でも、敗北について嘆く声でもない。別の歌が聞こえる」と答えます。あれは祭りの歌声ですものね、モーセ。


「モーセは宿営に近づき、子牛と踊りとを見ると、怒りに燃え、山の麓で、手にしていた石板を投げて砕いた。モーセは彼らが作った子牛を取って火で焼き、粉々に砕いた。そして水面にまき散らし、それをイスラエル人に飲ませた」


 モーセ、めちゃくちゃ怒ってます。大事に持ってきた石板を投げて砕きました。神様直筆ですが、構いません。結婚間近で浮気をされた方が、婚姻届をビリビリに破くようなものでしょうか。契約破談。モーセの怒りはおさまりません。


 おヒスを起こして皿を叩き割るレベルです。温厚なモーセがここまで怒るんです。みんなドン引きしたことでしょう。金の子牛粉砕水を大人しく飲みます。


 偶像子牛ちゃんの金は、そのままウ◯コと一緒に排出。汚れた物扱い。


 モーセの怒りは、兄のアロンに向かいます。きっと民に脅迫されてあんな変な子牛の人形〈黒須様のコメントより〉を作ったんでしょう? アロン答えなさい!


「我が主よ、どうか怒らないで下さい。あなたもよく知っている通り、この民はすぐ悪い事をします。彼らは私に言いました。『私たちの前を行く神を作って下さい。私たちをエジプトから連れ出したあのモーセがどうなったか分からないからです』そこで私は言いました。『金を身につけている人はそれを外して私に渡しなさい』そして私がそれを火に投げ入れると、あの子牛が出てきたのです」


 アロン、弟がよっぽど怖かったんでしょうね。我が主よと呼びかけて、怒らないでって嘆願してます。そして、イスラエル人に責任転嫁してます。


 そして嘘までついてます。子牛のデザインを考えて、鋳物の型を作ったのはアロンです。そこに金を流し込んで作ったくせに、火に投げ入れたら、勝手に出てきたよ! 奇跡だよって言ってます。モーセ、親の顔が見たかったでしょう。残念。


 モーセは呆れて、もう一度民を見ると、衣服が乱れている裸の男女を発見。敵たちに恥を晒していると言って再びご立腹。そうです、アマレク人があちこちで監視してますからね。聖なる国民? ちゃんちゃら可笑しいわ! って嘲笑案件。


「神の側にいるのは誰ですか、私の所にきなさい!」32:26


 モーセはここで聖別します。偶像崇拝の首謀者を見つけて制裁するためです。レビ族がモーセのもとに集まりました。ちゃっかりアロンもモーセ側です。


「各自、剣を帯びて、門から門まで宿営の至る所を回り、自分の兄弟、隣人、友人を殺しなさい!」32:27

 

 ヒョエー。神に反逆した偶像崇拝首謀者たちはレビ族に殺されました。レビ族とは、神の仕事をするために取り分けられた民族です。祭司として犠牲を捧げる仕事をします。モーセもアロンもレビ族です。アロンは、金の子牛事件では、処罰なし。首謀者ではなく、受け身ゆえです。なんか解せない。


 この金の子牛事件で殺された男子は、なんと三千人です。せっかくエジプト脱出してきたのに。モーセも凹んだ事でしょう。しかし、リーダーです。翌日、またスタコラと山に登ります。何をしに行くんでしょうか? 神に会いに行きます。


「この民は本当に大きな罪を犯しました。自分たちのために金の神を作ったのです。ですが、今、もしお気持ちがあれば、彼らの罪をお許し下さい。そうでなければ、どうか私の名前をあなたの書から消し去って下さい!」32:31〜32


 なんて男らしいんでしょう、モーセ。民を許して下さいと祈り、もし無理なら、この民の罪を私の命で贖うって言ってますね。私の命を捧げるので、どうかイスラエル国民を無事に約束の地に導いて下さいと言ってます。


 責任の取り方がかっこいい。けれど、神様はモーセの命を取りませんでした。これからも罪を犯した人たちだけを罰するので、引き続き、指導者として民を連れて行くように命じられました。良かったね、モーセ。アロンも見習いなさい。


 さあイスラエル国民は心を入れ替えました。モーセにごめんなさいして、従順になりました。十戒の石板も新しいのをもらって、建てたばかりの天幕の契約の箱に納めました。アロンは大祭司に任命され涼しい顔で、弟を支えます。


 約束の地、カナンを目指して民は進みます。まだまだ前途多難です。


 モーセ、アロン、みんな頑張れー!




 

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