第22話 モーセ召される。

 エジプトから逃げて四十年、モーセは妻チッポラの尻に敷かれて働きました。

毎日、毎日杖で羊を追い、草を食べさせる生活です。舅のエテロもご満悦。


 そんなある日、ホレブの山でイバラの木が燃えているのを発見するモーセ。近づきます。なぜ? 燃えてしまわないイバラの木。八十才でも元気で、好奇心旺盛です。不思議な現象に小首を傾げた事でしょう。その時です。天から声が。


「モーセ、モーセ」と神様の声です。モーセはすぐに気が付いたのでしょう。すぐに返事をします。神様が人間に声をかけるのは、四百年ぶりの事です。


「……サンダルを脱ぎなさい。あなたが立っているのは神聖な場所だからである。───私はあなたの父祖の神、アブラハム、イサク、ヤコブの神である。私は、エジプトにいる私の民の苦悩を確かに見た。叫びを聞いた。彼らの苦痛をよく知っている。───私は彼らをエジプトから救い出し、広くて良い土地、乳と蜜が流れる土地へ連れて行く。───さあ、あなたをファラオのもとに遣わす。あなたは、私の民であるイスラエル人をエジプトから連れ出すのだ」三:五〜十一


 そこでは靴を脱げと軽く叱られたあと、エジプトに行けと言われました。モーセはどう反応したでしょうか? 嫌な思い出しかないエジプトです。指名手配犯。


「いったい私が何者だというので、ファラオのもとに行ったり、イスラエル人をエジプトから連れ出したりするのでしょうか?」


 あたしゃ、ただの羊飼いでございやす。かつてはエジプトで有名だったかもしれやせん。けんど、今じゃ前科者の流れ者。毎日羊のケツを叩いて、なんとか暮らしている婿養子。こんな男にゃ、そんなこたぁできやせん。ああ、こんな男に誰がした。と本音は言い返したかったでしょう。知らんけど。


 神様は、私はあなたと共にいるっと言って弱気のモーセを励まします。


 モーセは今度は、イスラエル人に突っ込まれた時の心配を言い表します。神様の事、あんたが何で遣わされた? そもそもどうしてモーセなの? って言われたらなんて答えるのか心配です。神様は一つ一つ丁寧にお答えになります。


 自分には資格も、知識もない。そんな男に神様が現れるはずがない。イスラエル人に信じてもらえない事が怖い。モーセはまた言い訳をします。


 神様はモーセが手にしている杖を地面に投げるように指示します。今、ここで奇跡を行い、それをイスラエル人にも見せなさいと言いました。


 モーセは言われた通り、杖を投げます。コブラに変身。尾を掴むと杖に戻る。そして手を懐に入れると、皮膚病になり、また入れると完治。


 手品の練習ですか? こんな子供だましだと言われたらどうするんですか? モーセの問いに神様は答えます。ナイル川の水を血に変える事も出来るから安心しなさいって言います。イスラエルの神は、エジプトの神より強いんです。全能者。


「お許し下さい。私は口が重く、舌が重いんです。流暢に話せません。───どうか他の人を遣わしてください!」モーセ、奇跡を見ようが、嫌なものは嫌なんでしょうね。とにかく言い訳しまくります。うん、分かる。分かるよ、モーセ。


 モーセの言い訳に神様、めちゃくちゃキレます。


「誰が口を与えたのか? 私ではないか! さあ、行きなさい。話すときは私が一緒にいて、何を言うべきかを教えよう。───あなたにはレビ族の兄アロンがいる。私は彼が上手に話せる事を知っている。アロンがあなたの代弁者になる」


 じゃ、最初からお兄ちゃんアロンを遣わしてよ。モーセはそう思ったかもしれませんね。しかしリーダーシップを発揮したり、勇気があるのはモーセです。


 モーセはだったら仕方ないと引き受けたようです。エテロに挨拶して、妻チッポラと二人の息子を連れて、エジプトに向かいます。ロバに乗ってエジプトに。


 旅の途中の宿で、神はモーセを殺そうとしました。熱病のように瀕死の状態に陥りました。何で? モーセやっちまった。ゲルショムには割礼しましたが、下の息子エリエゼルには、やってません。たぶん、妻が可哀想だと思ってしなかったのでしょう。おきてに背いたら、リーダー失格です。


 妻チッポラは石の短刀で割礼。エリエゼルの包皮をモーセのチン◯ンに当てると、モーセはたちまち回復しました。罰ゲーム? 家族四人で何をしてるのでしょう。宿屋に倍増し料金払いましたか? 血液付着はクリーニング代倍です。


 ここからはモーセ一人で旅を続けたようです。


 でも、すぐに嬉しい再会です。ホレブ山で、アロンが待っていました。アロンにも神様コンタクトしてくれたみたいです。四十年ぶりの再会。


 モーセはアロンに、神さまから命じられた事と、奇跡の詳細全てを話しました。アロンは全て信じます。さすがアブラハム、イサク、ヤコブ、レビ族の子孫です。信仰があります。妻チッポラの信仰と違います。


 さあ、二人でエジプトを目指します。まずは同胞イスラエル人の長老たちに信じてもらわなければいけません。


 モーセとアロン頑張れ〜! 八十才と八十三才の老人兄弟だけど、頑張れー。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る