第14話 子どもが出来ました! サライエッセイ風
こんにちは、サライです。私の夫に子どもが出来ました。さっき生まれました。
男の子です。もう名前は決まっているそうです。イシュマエルですって。
他人事みたいでしょう。だって、私が産んだわけじゃないですもの。
エジプトを出てから色々ありました。カナンに行く途中で、養子のロトと別れました。群れが大きくなりすぎてしまったの。ロトはソドム地方に行きました。
私たちは、カナンになんとか着いたんです。あれからもう十年経ってるかしら。夫のアブラムは、神様から「貴方の子孫は天の星のようになる」って言われて喜んでいたんだけど、十年間、兆候が見られないのよ。子どもが出来ないの。
もう諦めてたの。だって私、今年七十六才ですもの。それでいい事思いついちゃったの。ほら、エジプトから連れてきた召使いのハガルを夫に差し出したの。子どもが出来なければそうするしかないでしょ。法的に認められてるんだから、これは私の権利なの。
善は急げと、アブラムに言ったわ。ハガルの産んだ子を私の子どもにするって。アブラムはすぐに聞きいれてくれたわ。嫉妬? そんな事より子孫が大事よ。アブラムも嬉しかったでしょうね。久しぶりに若い子と。知らないけど。
そしたらね、妊娠したのよ。でかしたわ。けど、ハガルったら、妊娠した途端に、私を見下すようになったのよ。もう怒れちゃうでしょう。奴隷女のくせに。
傷つくでしょ? 今まで夫に従ってきたのよ。自分の故郷をあとにして、豊かな生活も捨ててここまで来たのよ。エジプトでは、夫の命も救ったのに。
アブラムがハガルを甘やかしたの。きっとそうよ。夫を責めてやったの。そしたらね、好きなように扱っていいって。私、いじめたの。もしかしたら嫉妬?
まあ、少しはあったかもしれないわ。手厳しく扱ったら、ハガルどうしたと思う? 逃げたのよ。もう、最近の若い子は無謀よね。身ごもっているのに、私たちの天幕から逃げたの。どこへ行く気だったのかしら? ほっておいたわ。
けど、しばらくして戻ってきたの。私と夫にひざまついて謝ったわ。エジプトに逃げる途中で天使に会ったんだって言ったわ。
「女主人のもとに帰って、謙遜になりなさい。私はあなたの子孫を非常に多くし、数えきれないほどにします」って言われたんですって。
その時、その男の子の名前をイシュマエルと付けなさいって言われたんだって。アブラム、ハガルの言葉を信じたのね。
今、アブラムがイシュマエルを抱っこしてるわ。八十六才で出来た初めての子どもだもの、可愛いんでしょうね。けど、法的には私の子どもよ。
私だって、自分の子どもを産みたい。けど、今はハガルとその赤ちゃんを大事にしてあげないと。だってハガルが別人になって戻って来たんですもの。
「アブラム、次、私にイシュマエルを抱っこさせてね」じゃあまた。
ここで恒例プチ情報
ハガルは、イシュマエルに関して他の言葉も言われて帰宅しました。
「彼は野生のロバのような人となり、その手は全ての人に逆らい、全ての人に敵対します。彼は兄弟たちの向かい側に住みます」創世記十六:十二
この言葉は聖書の予言です。野ロバは独立心を表し、中近東、アブラムの子孫、特にイサクの子孫と敵対します。
イシュマエルの子孫は、アラブ民族です。イサクの子孫はイスラエル民族。
こんな大昔から仲が悪いと言われてるのですね。残念。
さて、次回はついに、イサクが誕生します。サライの子どもでしょうか?
乞うご期待!
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