第9話 4姉妹
「本当に、なんて言っていいか」と、リサ。
おばあちゃんは笑って「なーも、孫さ4人増えた”と思って”るんだぁ。いつまで居るの、こちさ」
Naomiは「たぶん、8月の終りまで」
「んだか、時々遊びに、、、と。あんだら、ずっとここに泊まる?」と、おばあちゃん。
「いえ、工場の宿舎に」と、れーみぃ。
「あー。ほんじゃ、時々行ったげるよ、暇だから、ばあちゃんは、ははは。野良のついでに
野菜持って」と、にこにこ。
日焼けの顔は、四角くて、タクシーの
おじさんそっくり。
「ありがとうございます」と、めぐも頭が自然に下がる。
おばあちゃんは「なも。あんだらはもう、わだしさ孫だぁ。あだしが決めた。遠慮は要らん。ほんじゃ、晩飯の支度すっから、またな」と
おばあちゃんは、笑いながらクルマに乗って
エンジンを掛けて。
走り去った。手を振りながら。
「良かったね、いい人で」
と、リサ。
「うん」と、Naomi。
「ずっと、居たくなったな、ここの町」と
れーみぃ。
「冬、さーむいぞー」と、Naomi。
「それはやだけど」と、めぐ。
「お客様ーーー」と、KKRのフロントが
気遣い。
中へどうぞ、と。
「邪魔だって、大きい人」と、れーみぃ。
「そんな事言ってないって」と、リサ。
「幅取ってるのも邪魔だべ」と、Naomi。
「あ、ひっどー。おばあちゃんかいな、あはは」と、れーみぃ。
「移ったかな。訛り」と、Naomi。
めぐは、れーみぃとNaomiを重ねて見て
「幅も変わんない」と。
「お客様、中ほどまでお進み下さい」と、リサは車掌さんの真似。
そっか、と
3人はエントランスから。
つるつるの床は、石造り。
大理石かな、と
めぐはなんとなく見た。
「いらっしゃいませ」と
にこやかなフロントの方。
若い女性ではなく、すっきり男性。
「お帰りなさい、じゃないのね」と、れーみぃ。
「ごしゅじんさまぁ」と、めぐ。
「それは違うって」とNaomi。
「ああ、たまにあるね、でも、ホテルだと。
リピーターだったりすると」と、リサ。
「ごしゅじんさまあ」と、めぐは
両手を重ね、かわいいポーズ。
「それは違うってば」と、リサ(笑)。
「ご予約の、はい。海辺のお部屋ですね。608号です」と、フロントの人は
届いた荷物は運んでおきました、と。
エスコートはなし。それは保養所である。
「でーもぉ、豪華だねー」と、れーみぃは
見回す。
キラキラするシャンデリア。
白い石造りの壁。
大きな硝子の窓の向こうは、なんでもない
海辺だけど
芝生が敷かれて、大きなフェニックス。
「すごーい」と、めぐ驚く。
「掃除大変だろな」と、リサ。
「なんか主婦っぽい」と、Naomi
「そっか、あはは」と、リサ。
鉄道職員の家族は、結構時間が不規則なので
お母さんもついつい、疲れるから
リサがお母さん代わりに朝起きて、なんて事もあった。
始発の乗務だったりすると4時起きとか。
夜行の乗務の後だと、朝、掃除洗濯が出来ないから
学校が終わった後、リサがしたり。
そんなところで、ちょっと大人っぽくなるかも。
「でもまあ、これじゃ赤字国鉄廃止なんて
誤解される訳だよな、郵便もそうだけど」とNaomi。
「うん、でも国有だから、黒字って変なんだよ。考えればわかるけど」と、リサ。
「そだね。財務で言うと、国鉄の債務って
国鉄のせいじゃないもの」と、れーみぃ。
うんうん、と、リサ。
「どういうこと?」と、めぐ。
「うん。あのね、こういう施設を作るのは
国鉄じゃなくて国なのね。それで、過疎地に
雇用を、って。新幹線なんかも、新線もそうなの」と、れーみぃは詳しい。
「赤字ってのは?」と、めぐ。
「それを、郵便貯金とかで借りてるから」と、れーみぃ。
「そう。なので、郵便そのものは赤字じゃないの。同じ事なのね、郵便リゾートも」と、Naomi。
「そうなんだ」と、めぐ。
「まあ、だけど結構要らないお金が
政治家とかに流れてるんで、国鉄、郵便民営化、って言ってる訳」れーみぃはさすがに詳しい。
貿易商のお父さんは、世界で
そのお金の流れに沿っているから。
「そうそう。まあ、民営化しても
政府が管理すればいいんだけど」と、れーみぃ。
「どうして?」と、めぐ。
「お金の流れが株主に全部公開されるから、悪い事できない訳」と、れーみぃ。
「株主か、あの工場も株式会社だったんだよね」と、リサ。
「うん。まあ、非公開だろうから、ほんの身内だけ、だと思う」と、れーみぃ。
「非公開って?」Naomi。
「普通には買えないって事」と、れーみぃ。
それだと、あんまり心配しなくていいのだが。
と、れーみぃは、まあ経営者でもないのに(笑)
そんなことを考えるのはお父さん譲りかな。
エレベーターに乗って、6階へ。
夏休みなので、そこそこ人が居る。
廊下は絨毯敷きで、照明は控えめ。
608は、端っこの部屋。
「いいお部屋だといいなー」と、れーみぃ。
ドアはマホガニィ色。
オートロックじゃないので、開けっ放しになる
「無用心かしら」と、めぐは心配。
「国鉄に悪い人いないから。いたら懲戒免職だもの」と、リサ
「なるほど」と、れーみぃはさっきの
おばあちゃんの事を思い出していた。
「みんな、田舎だったらいいのにね」と、れーみぃ。
お部屋は広いけど、意外に簡素。
ベッドふたつ、ふた部屋。
リビング。
キッチンがあれば2Kのマンションみたいだけど
窓は広くて、硝子一枚のサッシに
厚いカーテンと、レース。
開けてあるから、海が見えた。
「いいね。」と、めぐ。
あんまり、きらびやかなのは好みでなかったり。
洋服とかも、質素なのが好きだった。
「うんうん。そだねー。」と、れーみぃ。
「社会って難しいね」と、リサ。
「まあ、いろんな人がさ、楽しようと思うからね」Naomi。
そんなのは、郵便配達のアルバイトでもある。
経験があるけど、あんまり仕事が多いと
楽な地域を担当したくなるんだけど
そんな時、人件費を安くしたい、なんて
人を減らす事をしないのが、国有。
あくまでサービスなので、儲かるのが変なのだ。
実際、それで赤字にはなっていない。
国鉄も郵便も。
んだけど、現場にいない人がお金を
持っていってると(笑)
そういう事らしい。
民営化すれば、それを
会社の外が持っていくだけ、だが(笑)。
「都会に帰りたくなーい」と、れーみぃ。
「うちの学校だって都会じゃないよ」と、めぐ。
少し、都会と言うか山の中にあるのは
鉄道なので、広い場所が必要だから、ってあたり。
「うん。学生寮食堂のおばちゃん、元気かなー」
なんて、れーみぃは思い出す。
「さて、ほんじゃ、夕食までお風呂でも行って来ようか。ここ、砂風呂があるの」と、リサ。
「砂風呂ってなーにぃ?」と、れーみぃ。
「あ、ビーチみたいに埋めるんでしょ」と、めぐ。
「そうそう。温泉で砂が暖かいの」と、Naomi。
「やだーぁ。挟まっちゃう」と、れーみぃ。
「どこに?」めぐはのどか。
「言うなって」リサは空手で叩く真似(笑)。
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