第4話 KKRいで湯荘

リサは「KKRいで湯ってあるのよ。あちこちに。保養所。夜行列車の終点だとね、車掌さんとか開け番休日で、泊まるのね、そこに。」



「なんか、名前がいかにも戦前」と、れーみぃは半分笑いながら。



Naomiは「まあ、今となってはかえって

カッコイイね。伝統美って感じで。

変に外国かぶれするより」と。



めぐは「いで湯って、汽車の名前みたい」



れーみぃは「また汽車って言ったぁ」(笑)



めぐは赤くなって「そっかぁ、田舎っぽいね」と、笑う。




その、リゾート国鉄は(これも列車の名前っぽいけど)海岸沿い、と言っても

岬のほう。


「バス、出てないかな」リサは

時刻表を見てみたけど

ローカル路線バスまで細かく乗ってない。


「駅まで戻って見るか」Naomiは冷静に。


駅から歩いて来た道を辿る。



めぐは「うん」と、リュックサックを右肩に

担いで。



れーみぃは「また歩くのかー。来る時に

バス停見てくれば良かった」




リサは「愚痴るのおばさんっぽい」と笑う。




れーみぃは「おっとぉ」と、江戸言葉(笑)。



めぐも笑顔で、続いて歩く。





駅前で、バス停の時刻表を見て


言葉を失った4人。




「一日一本かぁ。それも5時間後とはね」



と、リサ。



「通学バスとか、そんなんだろね」Naomiの

想像は正しい。



鉄道のローカル駅や、路線バスがなくならないのは



通学需要がほとんど。



赤字ローカル線の駅でも、住人がいる内は


廃止にならないけど




通学の中学生とかが高校生になると

廃止とか



そんなのもよく聞く。



それで、ここの路線バスも。




「路線図を見ると、リゾートまでは行ってないから、路線バスは諦めた方がいいね」と、リサは冷静。





駅は、寝台特急の終点から

普通列車で3駅程のところ。

単線なので、突然ローカル駅になってしまう。



海岸沿いの高台に、土手を築いて

そこにレールを敷いてあるのは


高波とかの対策もあるけど


単純に土地が、そのあたりは国有だったと言う

そんな理由もある。




それなので、土手の下に

トンネルを掘って乗客が行き来するようになっていたり


道路が、土手の下を

潜って走っていたり。



線路が敷かれたのは、ずっと昔の事だから

たぶん、道路なんて無かったろうし

あっても砂利道だったのだろう。


自動車が走りやすいように舗装されたのは

ほんの、ここ50年くらいの事なのだ。



その頃、あの蒸気機関車は

作られたのだから

随分、時代遅れな感じもする。




「仕方ないから歩こうか」リサは現実的。


5kmくらいだから、歩けない事もないけど


次の駅からなら2kmだ。



「電車乗って行こうか」Naomiは言ったが

電車の駅からの道が解らない。


ここからの地図は貰ってあるけど。



「車掌さんたちはどうしてるんだろ」と

れーみぃは、歩くのが面倒っぽい(笑)。



リサは「解らないな。ここまで来ないで

終点の乗務員宿泊所で寝てるのかな」



そう、おじさんに聞いた事があるそうだ。




折り返しの日に休みだと

釣りに行ったり、温泉に行ったり


パチンコに行ったり(笑)



それで、国鉄の車掌さんは

パチンコが強いとか(笑)。


温泉に詳しいらしい。





「タクシーで行っちゃうのかな、それとも

送迎か」


駅にある看板には[送迎あり]と書いてあるが

団体様、となっている(笑)。




「団体って何人からかな」めぐは聞く。



リサは「普通、10人だよね、鉄道なら」と

割引運賃の事を思い出してそういう。



Naomiはそれで、電話を掛けて見たが「前日までにおっしゃって頂ければ行けたのですが」と、そこは公共の宿なので(笑)


やんわりとお断り。



「済まん」と、リサは

おじいちゃん言葉(笑)。



あ、待てよ、と

リサは「これは言いたく無かったが」と


KKRいで湯に電話を掛け「国鉄です」と、おじいちゃんの名前で予約した事を思い出して

言うと



「そちらはご予約頂いておりますので、送迎を致します、15時で宜しいですか?」


普通、ホテルのチェックインは15時くらいだが

国鉄の組織なので融通が効く。


のだが、一般利用者もあるので

マイクロバスで巡回するルートになっている、との事。



この駅を通るのは14時半くらいらしい。





「と、言う話らしい、アタシたちは早く来ちゃったから、寝台特急で来たし」と、リサ。



まだ9時半である(笑)。



「じゃ、泳ごうよ!」と、れーみぃは楽しそう。目の前は海、だけど

泳いでる人はいない。



「寒いよ、まだ」Naomiは笑顔で。


気温、23度(笑)7月でも

北は涼しい。



駅前は道路、国道っぽいけど

片側1車線、クルマはあんまり見かけないのは


山あいに高速道路が出来て、仕事の人は

そちらへ行ってしまうらしい。



何もない田舎は、ただの通過点だから

その方がいいのだけど。



静かな海岸は、砂ではなくて

玉砂利のようだ。そこに貝殻があったりする。



「水着、あったっけ?」めぐは気づく。



「荷物の中、送っちゃったもの」と、リサ(笑)。




「じゃ、水遊びしよ!」と、れーみぃは

とてとてとて、と



海岸道路を渡った。


緩やかな海岸線に沿っている道は

クルマが全然通らなくて。


風に舞った砂が、道路に溜まっている。



「あれ、怖いのよね」Naomiは、オートバイの事を思い出して。



「ああ、バイク?Naomi、滑らすの得意でしょ、スキーみたいに。」と、めぐ。



よく、Naomiのオートバイ、ヤマハTR1の

後ろに乗って山あいを走ったりした。

低重心TR1なら、滑っても怖くないと

めぐはなんとなく感じていた。


タイヤが滑る事を考えて作られているので

滑った時に怖くないように、低いところに

重いものを置き、人間も近くに乗る。

クルマのレーシングカーと同じである。


ところが、バイクは傾くので

スピードを出すと、傾けるのが難しくなる。



それで、レーシングバイクは

割と高い所に重い物を置いて

傾け易くしている。


代わりに、タイヤが滑ると

足元を掬われるので、転んでしまう。


梯子のてっぺんに乗るより、1段目の方が

安定してるのと同じ。


なので、NaomiはTR1が好きだった。



スピードを競うんじゃなく、楽しく滑らせて遊ぶ。


スキーに似ている。




「そう、でも前のタイヤが滑ると怖いから

砂は嫌い」Naomiはそういう。



TR1の前に乗っていた、XS1100で

前のタイヤが滑った時、咄嗟に足をついて

立て直した怖さをNaomiは思い出す。


その時も、砂だった。




「綺麗な貝殻みっけたー」れーみぃは

楽しそう。



あ、そうだ!と、れーみぃは突然

リサに

「ボイラー免許あったっけ」


突然飛ぶ娘(笑)れーみぃ。





「あるよ」

リサは、抜かりない、と言う感じ。



「動力車操縦者免許は、内燃もある?」と

さすがに法務を目指しているだけの

事はあって、遊んでいてもどこかに

覚えているらしい、れーみぃ。



「あるよ」リサはにっこり。



「今は蒸気機関車の免許って無いから、内燃とボイラで大丈夫だと思う。昔は蒸気動、だったらしいけど」と、れーみぃ。


「うわーおっさーん」と、今度はめぐ(笑)



「うるさい」と、れーみぃは笑った。


「今でも時刻表にディーゼルを気動、って書くのはその名残なんだって。昔は蒸気のがあったのかなぁ」と、れーみぃもそこまでは知らない。


列車ファンでもないのだ(笑)。




「ふーん。詳しいね」と、リサ。


国鉄職員の孫でも、そんな事まで知らない(笑)。



現場ってそんなもので、仕事

に関係ない事は知らない(笑)のがふつう。




趣味とは違うのね。



「それで、大丈夫なの?」Naomiは聞く。



れーみぃは貝殻を探しながら、波打際で


振り返って「大丈夫と思うなー。後は

機関車の検査だろうけど、こないだまで

走ってたら平気かな」と、れーみぃは楽観。



「検査って?」めぐは聞く。



リサも、それは知っていて「クルマの車検みたいなもの」と、波打際に寄って。


なぜか、その時突然大きな波が来て




「逃げて!れーみぃ」と、リサは叫ぶ。


波に背中向けてたれーみぃは「何?どしたの?」



「早く、こっち!」めぐは駆け寄ったが、自分が足を取られて。



れーみぃと一緒に、、波の中。


Naomiは「あーあ」


リサ「ついでに泳いじゃえば」


めぐは、起き上がって「そだね」なんて笑うけど


服着ててじゃ、と笑う。


れーみぃは「脱いじゃおか」と、胸のボタンを外そうとした、けど

めぐに止められた(笑)


「パンツで泳ぐの?」めぐは

少し赤くなった(笑)。


れーみぃは「あ、そっか。」



リサは「誰もいないよー」(笑)。



そういってもね(笑)。



誰か来るもん、絶対ってめぐは思った。




Naomiは黙ってたけど、ちょっと恥ずかしそう。

見た目と違って、意外に恥ずかしがり。

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