静の海

だぶぴ

愛餓

【かすみ草】

赤ちゃんの吐息

吐息のように優しげな花

ぴすぴすと寝息をたてて眠る花

あなたと、居られたなら。

かすみ草も起きたのかな。


ぴすぴす、ぴすぴす

かすみ草は眠る。


【慟哭】

超新星爆発のように、予兆はあった。だが、それがいつなのか、という問いにはどんな天才も頭を捻らせた。ほら、ほら、大丈夫、大丈夫ですよ。「うんぎゃぁあぁああ!!」希代の天才でない父母は、赤子一人ために動く。


【ゆるし】

ただ普通の家族みたいに、愛されたかった。

そう言った彼女の横顔を、ぼくは何とも言えずに見つめていた。

家族からの寵愛を受けながらも堕落したぼく。そんなぼくときみとじゃ、雲泥の差があった。ぼくは甘え、きみは環境。だって、そうだろう?悪いのはいつだって、環境か自分だ。相手か自分がいつも敵で、仲間なんていなかった。

「ごめんね、こんな、ぼくで」

「…『かわいそう』なんて、思わないでね?思われたら自分は、不幸な人間になっちゃうよ」

はっきりとそう言った彼女の目は、綺麗な黒色をしていた。あんまりに綺麗で、ぼくは思わず、目を反らしてしまった。


【道草】

彼らは何を思う。

踏みにじられて、唾吐かれて、一瞥もされず

彼らは何を思う。

まだ生きているとの叫びが聞こえんか

大地の叫びが聞こえんか


【琥珀色】

ドロリと熔けるは蝶呼びのいろ。害虫がうじつく色。私もその害虫の一員だった。彼女は美しすぎた。ただ、それだけの話。


【神】

僕の神様は教師だった、親だった、クラスのアイツだった。

彼らのためならなんだってした。テストで満点も、手伝いも、万引きも。

結局、

それがおかしいって神様は言ってはくれなかった。

愛想良くしてればいい、ジブンなんてさらけ出せば、みんな蜘蛛の子を散らすように逃げていく。


【惨劇な恋】

あの頃の君はきれいだった

必死に生きて、

生きて生きて生きて、

そして血を流した。

僕はそんな君が大好きで、

真似事の血を流した。

そしたら君の黒髪が、

僕を癒していくような気がして。

でも君さ変わったね。

変わったのは、いや、変われなかったのは、

僕か。


【ながれながれて。】

運命は流転する。これは、私が信じている事だ。案外、運命論者なのかもしれない。


【ごっこ遊び】

あぁ、母の真似事と嘲られても、この子を抱き締める手つきは母のそれその物だろう。

あぁ、この子さえいれば

その他に何も世界に望まない。

すくすくと、

育っていってくれ。


【吸血鬼】

彼女にはたくさんの隷属がいた。しかしながら、彼女は隷属だなんて思わずに、一人ひとりを愛し続けた。「あなたにはこんな服が合うわ」「あなたは肌が真っ白で綺麗ね」「あなたは躍りのセンスがあるわ」

月が綺麗な晩、彼女はある少女から呼び出しを受けた。天鵞絨のドレスをまとい、少女のまえへと向かう。「なぁに?」解ってはいたけれど、敢えて聞いた。だって少女の手は力が入りすぎて、白くなっていたから。

黄色の肌を撫でる。

「なぁに?」

「…わ、わたしだけの、血を、吸ってください……」声は震えていた。「それはできないわ。貴女のことも、愛しているから」「残酷です、すごく……綺麗な残酷」

それだけを言い残し、少女は立ち去った。吸血鬼は考える。博愛の残酷さを。


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静の海 だぶぴ @DABURUpiece

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