第59話 すずらんさんの心
「でも・・・わたしの事を、あのひとは知りません。」
すずらんさんは、そう言って。
少し淋しそうに。
「あなたは、どうしてわたしが見えるのですか?」
すずらんさんは、僕の方を見て。
すっきりとして、きれいな人だな・・・と。僕はそんな事を思いながら。
「僕にも判らないんです。ある日、突然に。花の香りがいっぱいな
夜。ラベンダーの香りだったかな。それから。」
すずらんさんは「そう・・・ですか。」
僕と同じ事をしたとしても、同じになるかはわからない。
すずらんさんは、なぜ・・・?その人に見てもらいたいのだろう?
僕はそんな風に思った。
すずらんさんは「でも・・・いいんです。わたしは、ずっと、あの人のそばにいられれば。窓辺から、あの人を見守っています。
わたしにできるのは、それくらいですから」と。
僕は、思った。そして
「その方は、いつもあなたを愛でていると思います。花の姿のあなたを。
それは、とても素敵な事だと思います。姿は見えなくても、美しい花を
愛でる事で、心は豊かになれると思います。」
すずらんさんは「そう・・かしら。」
僕は「はい。そうだと思います。それで、ずっと、すずらんさんに
お水をあげたりしているのでしょう。」
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