第54話 heart to heart

かすみは、僕には


店長より少し下、みたいな年周りに見えるけれども

いくつなのかな、なんて

人だったら、と言う事だけれども、と前置きして

僕は、ちょっと空想したりした。



元々、彼女たちの世界の実態が

僕らの世界に合う筈もない、のだけれど。



そもそも、僕らの世界で言う、かわいいとかきれい、とか

言う表現も

かなり曖昧な物だと僕は思っていた。


見た目は、どうにでもなるし。


大切なのは、心持ちで

それは、きれいだったり

かわいかったり、愛おしかったりするものだと

僕は思っている。


そういうものは、なんとなく外から見えるもの、だし。




「それで、クロッカスさんはどうなさるのでしょうね」と

かすみは、言問い顔でそう言った。



うん、忘れてしまいたいみたいだよ、と

僕が返すと


かすみは、そうですか、とだけ言い


それから何も言わずに、キッチンの方へと静かに向かった。

いつもみたいに、楽しくお食事。


カツレツふうフリッター・ハワイアン。


シーフードサラダ。

冷製ポテト・ポタージュ。


食べたあと、どこか遠くへ飛んでしまえば太らなくていいけど(笑)なんて言いながら、僕はクロッカスさの事を回想していた。



失恋を思い出したくないから、遠いこの地に旅立った。


彼の地には、ただ、お花の姿だけが残る。


もっとも、彼はクロッカスさんの心に触れる事はできないから

永遠に、このままだ。


ただ、お花は季節の巡る度

彼の地に咲き続ける事だろう。



でも、もし

彼が、僕のように

彼女たちと心を通わす事ができるようになったら...




「かすみ」


僕は、ふと思い出した。

あの夜、百合の香りの気体で気を失ってから

植物と言葉を交わせるようになったこと。

もし、彼に同じ事ができれば。



「はい」


かすみは、穏やかな笑顔で、僕の言葉を聞いていた。

そして。



「それは、良いお考えですけれど...」


そのためには、彼の地に行かなくては。



そう、かすみは答え

その方法が解らないです、と

ちょっと残念そうにかぶりを振った。





「クロッカスさんが、こちらの世界の人になっちゃえばいいのにね」


ふたばは、にこにこしながら。


ちょっと見、ふたばは

少し幼いような感じに見えたりもするけれど

それも、僕からそう見えると言うだけだ。


ふたばの心が、僕にとって

そういう存在なので

そうみえる。そういう事なのだろう。





だとすると、クロッカスさんが

彼の心にとって、必要な存在感を持てば


彼に、見えてくるかもしれない。





僕は、かすみ草が散った時

淋しいと思った、だから

かすみはこちらの世界に戻ってくる事ができた。



そう、だとしたら...

いいアイデアかもしれない。

僕は、ちょっとワクワクした。

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