「でもさ、さくらんぼって食べちゃったら芽が出ないよね」と

僕は素朴な疑問をつい、口にした。

かすみは、穏やかな表情のまま...

「はい。でも、食べられてしまっても

その、さくらんぼさんは、召し上がった方の記憶に残ります。美味しかったと、さくらんぼってこんなに

可愛くて甘くて。そう言われる事でしあわせになれるでしょう。

そして、その方の体の中に、形を変えて生き続けるのです。

それもまた、生なのでしょう。」

そうか...僕は誤解していた。

そういう生もあるんだな。と

広く、視界が開けたような気がした。

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