第35話 cherry blossom

桜並木は、丘の上。


もう、盛りをすこし過ぎたこの季節、風吹けば

花弁がさっ、と雪のように散り


華やかで、でも儚く美しく。


無情なようで、でも美を感じてしまうのは


やはり、僕も限りある生の者であるからだろうか。




かすみは、なにも言わずに

散りゆく桜の中に佇んでいる。



ことば無きコミュニケーションをしているのだろうか?



桜の花はなんと言って散りゆくのだろう?



「きれいですー。」と、ふたばは

空を見上げて。


桜の花と、青空を見ながら。


にこにこと。



花が散ってゆくのを見て「きれい」って

言うあたりは、とても同類の言葉とは思えない(笑)


でも、そんなものかもしれないな。


僕だって、少年の頃に

自分がいつかこの世からいなくなる、なんて

考えもしなかった。



...この世?



僕はふと気づく。


今居る世界は3次元なので、時間は一定の間隔で進んで行く。


だが、より次元が進めば。


タイムスケールすら歪む。



もし、そういう次元からふたばが訪れたなら


散りゆく、等という感傷的な情景に

あまり共感を得ないであろう、と思う。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る