第290話 つばめ

「はい。たぶん・・・・お昼休憩で、折り返し・・・熊本、だと思います」と、真由美ちゃん。




愛紗は「貨物の機関士さんでも2時間交替なの?」


真由美ちゃんは「はい。基本はそうですね。貨物列車は駅にあまり停まらないですし

夜行が多いですから、昼間は寝ている人も多いです」


愛紗は「そうだよねー。だいたい、乗務員宿泊所って、昼間でも静かなところにあるし。

佐伯とか、臼杵もそうだった」



友里絵は「良く知ってるね」と。スープ春雨になった太平燕を、ずるずる・・。


由香「豪快に食うなぁ、ははは」


友里絵は「そりゃー、父、トラック野郎」


菜由「桃さんかいな」と、春巻きを、しゃくしゃく。そういえば、中身にも春雨が入っている。


友里絵「あたしもなろうかな、って、子供の頃思ってたけど」

と、丼を下ろして。


「はー、食った食った!」



「でもね、お父さんが 

『友里絵はちっちゃいから、大変だよ』

だって。それで。

大きくなれないかなー、って思ってた。」



由香は「友里絵の父ちゃんでっかいもんね」

と。太平燕をきれいに食べて。



友里絵「そう。ハルクみたいだもん」



真由美ちゃんは「あー、ハルク。かっこいいですね。」



菜由は「いつもシャツだけ破けるんだよね。」


愛紗「そうそう」(^^)。



友里絵は「パンツはなんで破けないのかな?」



由香「ははは。伸びて縮んでまた伸びてー♪」と。



友里絵「♪縮んで伸びてまた縮む♪ーおちんちんみたい」



わはは、と、笑う。


真由美ちゃんは恥ずかしそうに俯いて。



由香「アホ」(^^;


菜由は「まったくも」



愛紗は「あれ、つばめの巣かな」


お店の外の、日除けの下に

お椀のような、泥の塊が。



友里絵は「あ、そうみたいね・・・。まだ、つばめちゃんは帰ってきてないのかな?」



菜由は「あれ、食べられるのかなぁ」



真由美ちゃんは「お料理に使うのは、海岸の岩つばめの巣とか・・。」


友里絵「そうなんだ。よく知ってるね。」


真由美ちゃんは「はい、お家にも巣があって。帰ってくるのが楽しみです。

このあたりは早いので、3月くらいから・・・ですね。

かわいいですよ。ひよこちゃんがいっぱいで。

なんかちょーだいーって。ぴーぴーぴーって。鳴くのね。」

と、にこにこ。



友里絵は、両手を出して「ひっひっひ・・・ひよこちゃん。おじさんについておいで」

と、不気味な顔(^^)。



由香「オオカミか」


友里絵は、叫ぶマネ「あおーーーーーん」


由香「月夜の晩は恐ろしい」



菜由は「乗せるなって」



友里絵はバッグのポケットを見て「あ、なんか来た」


ケータイを見て「ああ、あの・・・「はやとの風」のCAさんだ!」



愛紗は「お返事くれたんだ」



真由美ちゃんは「わたしが乗務していた列車の、前に乗られたのですね」



友里絵「そうそう。えーと・・・。鹿児島の人だって。」


愛紗「綺麗な人だったね」


真由美ちゃんは「はい。時々・・・お会いしますね。吉松とか。隼人とか。」


友里絵「あとで電話してみよっと。」


真由美ちゃんは「お友達、いっぱいですね」(^^)。と。楽しそう。


由香「元、営業マン」


友里絵「それはアンタでしょ。青島くん」



由香「ははは」(^〇^)




ゆっくりごはんを食べていたので、もう2時近かった。


「あー、食った食った」と、友里絵。

「ぽんぽこりんだよ」と、菜由。


「ぴーひゃらぴーひゃら♪」と、友里絵。ハラ踊り。


由香「踊るな」と、(^^)。


愛紗は「お腹よじれるよ」


由香「頭はよじれてるけどな」



真由美ちゃんはくすくす。「ここから、どうします?」


菜由は「真由美ちゃんは、そろそろ帰る?」



真由美ちゃんは「そうですね・・・・・。と、携帯を見て。

兄が、折り返しなので熊本に戻るそうですから。

明けー公休で。

一緒に帰ろうかと思います。」


と、にこにこ。


友里絵「いいね、優しいお兄さん」


真由美ちゃんは「はい。普段はまあ、帰らないんですけど

今日は特別みたい。」と、にこにこ。



菜由は「やーっぱさ、かわいい妹が心配で。

オオカミさんに食われないように」


友里絵は「がおー」と、オオカミのマネ。



真由美ちゃんは、避けるふり(^^)。




愛紗は「じゃ、お兄さんは今日は夜勤明け、ってこと?」


真由美ちゃんは「いえ・・・たぶん、ですけど。

日勤だったんでしょう。普通は夜勤が多いんですけど。貨物って。」




そういう勤務もいいなぁ、と愛紗は思う。

人知れず、闇の中、鉄路を行く・・・。


メーター・ランプだけが光る運転席。

ヘッドライトに照らされた、レールが二条・・・。


前方、よし!

第二閉塞、進行!速度、110!


白い手袋でMCを握って。


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