第200話 わらしべ長者

「なんか出た」と、友里絵が持ってきたのは・・・・。


「骨じゃないか、それ」と、由香。


「え?」と、愛紗。


「まさか」と、菜由。




「イッシーの骨?」と、友里絵がぶら下げて持ってきた。


階段を上がって、コンクリートの駐車場の辺りにもってきて、置いた。



街道にある、旅館の番頭さんふうのおじさん達が集まってきて


「骨かのう」


「わからんなぁ」


と、首を傾げるばかり。




友里絵は、さっきのお花のおばさんのところに「おばちゃーん、なんか出た。」


おばちゃんは、眼鏡を掛けて「なんじゃろね、これ・・・?甥が、学校の先生をしとるから。

調べてもらうよ。」




「まさかなぁ・・・」と、由香も思う。

「やっぱイヌ型だよ、あんた」と、友里絵に。



「猫派だってば」と、友里絵。




「ドラえもん好きだもんね。『よく、絵描いてた』って

タマちゃんも言ってたっけ。」と、由香。




おばちゃんは「んじゃ、あとで。なんか解ったら電話するね。」



「あーい。おねがいしまあーす。」と、友里絵。にこにこ。




「名刺渡したの?」と、由香。




友里絵は、うんうん。




「名刺なんて持ってんだ」と、菜由。




由香は「そうそう。あの頃流行ったから。JKでも名刺作るの。

そのなごりで。


タマちゃんに会ったときは、持ってなかったんで。

レシートの裏に書いて渡したんだよね。」



「電話番号を?」と、愛紗。




友里絵、うんうん。




「危ないなあ」と、菜由。





友里絵は「誰にでも渡すわけじゃないよ」




由香は「そりゃそうだね。あん時もさー。若い男がコンビニに来て

困ったじゃない。んで・・・・。タマちゃんに相談して。」




友里絵「あー、あの男ね。なんか暗くて。一回だけお昼、食べに行ったけど。

パスタのお店。」




「パスタ好きだもんね、夕べも一皿食ってたし。」と、由香は、わはは、と笑う。




「あれ、ほんと美味しかったんだよー。なんたって、チーズがお皿になってんだから。

あんなの見たこと無かったよー。」と、友里絵。熱弁。



「いい香りだったね」と、愛紗も、食べたけど。





「あ、バス来た。乗ろう?」と。菜由。



バスは、古い日野の7mだった。



アクセルが軽いのだけれも、トルクが少ない感じで

運転手の間ではあんまり人気がないタイプだった。



ただ、早いうちに空気圧シフトになっていたので

女子ドライバーにはよく、当てられた車両だった。



愛紗は本社研修で、少し乗った程度。



4人とも、バスの中では話さない。



そのあたりは、運転手さんが寝不足なので

かわいそう。


そういう気持があったから。





バスは、定刻に発車して・・・・。

湖畔をぐるりと、来た道と反対に進んで。

真っ直ぐに、湖を離れた。



すると、すぐに市街地になる。



市役所、学校、図書館・・・。

スーパー。


地方の、のんびりした町並みが過ぎで

単線の線路、踏み切りを渡ると


さっき見た、海岸通りが見えた。


その手前の十字路を左に折れると

駅前。




「なーんだ。近いんだ。」と、友里絵。




通り沿いに、バス会社の営業所が見えた。




駅前ロータリーで、バスを降車。「ありがとうございました。」と、礼を言って

降車。



なんとなく、習慣だ。




「あー、着いた着いた!」と、友里絵は伸びをして。



「まだ13時半にもならないね。」と、愛紗。



「のんびり・・足湯でも入ろうか」と、菜由。


月曜とあって、ほとんど誰もいない。



ひろーい足湯は、泳げそうな感じ。浅いけど。





のんびり、足湯の4人。




「なーんか、あったまるねー。」と、友里絵。


「ほんと」と、愛紗。








友里絵のそばに、ちょこちょこ。


白い、トイプードル。



短いしっぽを振って。つぶらな瞳。



「かわいい。おいでおいで、トイプーちゃん。」と友里絵はにこにこ。



なでなで。




「友里絵は犬好きだなぁ」と、由香。



「うん」と、にこにこ。トイプーちゃんをだっこして。



「足湯、はいる?」なーんて。


わんこは、怖がって。



「そーか。よしよし」と。なでなで。だっこ。



「プロだもんねぇ」と、菜由。



友里絵は「そう。トリマーも出来るよ。看護師免許もあるし」



「すごいね、ほんと。」と、由香。




友里絵「素直に認めるねえ」



由香「いやー。だってさ、あのコンビニが潰れて。卒業だったけど。

仕事無かったもん。派遣の事務員くらいしか。

そんなもんだよ。高卒だって。それで・・・友里絵がガイドになるって言うから。」




菜由は「一緒に来たんだ。」



トイプーちゃんの飼い主さんっぽいおばさんが来て。


ぴょん。


駆けていった。



「ばいばーい」と、友里絵。



飼い主さんもにこにこ「まあ、遊んでもらったの。ありがとう。」と。



4人、お辞儀して。こんにちは。




「ご旅行ですか?」と、飼い主さん。



はい、と。菜由。



「いいですね。私は指宿に住んでいるから

旅行ってしたことなくて」と、飼い主さん。




友里絵は「こーんなにいいトコに住んでたら、あたしも出かけない。」


由香も、うんうん。



そういうものかしら、と。飼い主さんはにこにこ。



「いつまで指宿に、お泊まりですか?」



愛紗は「明日帰ります。」



飼い主さんは、そうですか、と「ウチは、その奥のスーパーなんですけど

何か、旅先でお困りでしたら・・と。」


駅前の道をまっすぐ行ったところにある、大きなスーパーを

指差して。



菜由は「小物とか、見てこようか。地元の食材とか。面白いものね。」


由香は「お、さすが主婦」



菜由は、いやいや。と、にこにこ。



乾物とか、日持ちがするものは

結構、地場の産品をお土産にするのは、楽しい。



友里絵は「あ、このお花、どうぞ」と。

さっき、おばさんにもらったお花を、分けてあげた。



「まあ、こんなに沢山・・・・。ありがとう。」と、花束を貰って、にこにこ。



由香は、いいの?と聞いたけど

友里絵は「うん。枯れちゃうもん」




飼い主さんは「お礼と言ってはなんですけど・・・・うち、カフェもあるので。

商店街の中で。お茶はいかがですか?お時間があれば。」



友里絵は「ありがとうございますー。ちょうど、足湯で

のどがかわいたとこ。」



由香は「わらしべ長者かい」


菜由も、笑った。


楽しく、指宿の旅は続く・・・・・。



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