第137話 theme from Rocky Maynard Ferguson

トキハデパートの新館の前から、横断歩道を渡って

駅に向かおう・・・としたが。

なかなか、歩行者信号が変わらない。


スクランブルになっているから、大通りの信号が青でも

歩行者信号は変わらないので・・・・・。慣れた人は

赤のまま渡っていってしまう。



友里絵も「いらいらするねー。」と、足をばたばた。

でも、そんな様子はかわいらしい。



由香は「アンタが言ったじゃん。『間に合わなくてもいい』ってさ」と。



友里絵は「そりゃそうだけどさ、つい」



愛紗は、その間にケータイのメールを見てみると


菜由の希望は「みんなで決めて」との事。



それを伝えると、友里絵は「よし!じゃあ、間に合ったら12時20分・・・は、絶対無理か」

と、壁の大きなTVの時計を見て。



愛紗は「次は12時40分の熊本ゆき『あそ』ね。」



「あっそ」と、由香。


「さぶーーーー!!」と、友里絵が笑う。ハハハ、と。



「さぶって言うな!」と、由香が友里絵をひっぱたく。


由香の方が背が高いの。



その間に信号が青になり、ひっぱたこうとした由香は空振り。


友里絵は、とっとこ、とっとこ。


小柄だけど早い。



トキハ会館は、昔ながらの結婚式場。

ビルひとつがそうで、下の階は衣装屋さんとか、旅行屋さんとか。



「田舎だなぁ」と、愛紗は思う。



自分も、おとなしく宮崎に居たら、こういうところに押し込められていたんだろうな

と、思う。



それを横目に、友里絵の背を追う。



・・・そういえば、友里絵ちゃんは「早く結婚したい」と言ってたんだっけ。

そんなもの、なのかな。



愛紗自身には、まだよく判らない。


友里絵は深町に出合って、「早く結婚して赤ちゃんほしい」と言った、とか。





「やっぱり、よく判らないなぁ」と、つぶやくと


少し前を歩いていた由香が「どうかした?」。



愛紗は「ううん、なんでもない。」と。



大分駅が見えてきた。


OITA STATION  大分駅

と、ネオンサインがあるのがいかにも国鉄的である。


大きな時計があるのも、そういう感じ。





かなり大きなバスロータリーだが、リムジンバスは大通りに停車し、降車して

そのまま空港へ戻る。



12m車だから、研修で乗った観光バスと同じだ。



その他、高速バスがこの道沿いに停車し、次々と発車していく。

臼杵方面行き、熊本方面ゆき。



九州は広いので、住んでいる人は飛行機をよく使う。

それで空港連絡バスが多く走っている。


サンダル履きで乗るような感じ。



この辺りは鉄道も同じで、九州新幹線もそういう感じだ。


熊本ー博多とか、ふつうの若者が遊びに行ったりする。


スケールが大きいのである。



大分からだと、日豊本線回りの新幹線が無いから


在来の特急で1時間くらいだから、それほど遠いイメージはない。


ただ、九州を横断する路線は山岳路線なので、未だに電車は走れない。


乗り継ぎの間隔によるが、小倉まで50分の「ソニック」で行き

新幹線に乗り換えた方が西海岸へ行くのが早かったりもする。



急がない、楽しむ旅なら、久大本線・豊肥本線回りがいいけれど。






駅前の大きな国道は、地下道があるけれど

横断歩道の信号が変わるのを待つ。


その時間で、友里絵においついた。



「はーぁ。忙しかった」と、友里絵。


「急がなくてもおんなじじゃん」と、由香。



「ほんと」と、友里絵も笑う。




信号が変わり、駅前のロータリーへ。

なぜか音楽スタジオがあったり、カレーヤ、と言う直裁な名前の

カレーのお店があったり。


コックさんのマスコットが看板になっていて、カレーヤ、と書いてあったり。



駅の構内に「駅市場」。スーパーマーケットだけれども


元気な感じ。



音楽が聞こえる。メイナード・ファーガソンのハイ・ノート・トランペットで

「ロッキーのテーマ」。


とても能動的だ。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る