09話.[実際のライバル]
「啓、俺はお前に嫉妬している」
お母さんと一緒に水月さんが買い物に行っているため、久しぶりに文人とふたりきりになったときのことだった、いきなりそんなことを言われたのは。
「お前さ、どうせキスとか何回もしているんだろ」
「し、してないよ」
あの勢いでした上書き行為の1回だけだ。
だからもやもやしているんだ。
恋人=キスを何度もすると決まったわけではないとしても、たったの1回だけ、それに雰囲気もあまりよくなかったあれだけというのも寂しいなと。
「なんだよ、俺がお手本を見せてやろうか?」
「そんなことをしたら絶交だからねっ?」
「冗談だよ、俺だってあの1回だけだ」
でも、あまりにがっつきすぎるのもそれはそれで問題を引き起こしかねない。
祭りに行ってからは俺の勢いだけでやってきた感じがあるため、引っかかっているし。
「……なんの話ー?」
「帆波にはまだ早いことだ」
これまで寝ていた細谷先輩が起きたことにより会話が強制的に中断となった。
待て、彼氏なのになにを遠慮していたのだろうか。
これはもう帰ってきたらこれまで通り真っ直ぐに要求しよう。
「あ、水月とちゅーしたことあるの? 私もあるよ?」
「「はっ!?」」
「だって可愛いから、去年の秋にぶちゅーって」
なっ、さ、先を超されていたのかっ。
実際のライバルはこんなに身近なところにいたのかと戦慄したのだった。
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