???

◇◆◇




 ―――深夜 玄界灘げんかいなだ



 海は空の闇を吸い込み、真っ黒に染まっていた。

 どちらも闇の色をしているから、二つの境界ははっきりとしない。

 しかし、その境界を歩く者が一人いた。 

 闇よりも黒い姿の者である。顔までも黒子のように、頭巾で覆い隠している。

 切り絵のように、そこだけ空も海もない。まるで、人型にぽっかりと虚空があるようだ。

 男は海面を滑るように歩く。

 波は全く立たない。

 まるで、影が通り過ぎるようだった。


 男はふと立ち止まった。

 そして、その場にしゃがみこむ。

 地面に触れるかのように、水面にそっと手を置く。

 水面は男の手を受け、同心円状に波紋が広がっていく。

 

「みぃつけた。」


 その声は、すうっと闇に吸い込まれていった。




◇◆◇

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