九州観光 (前編)



◇◆◇



 

 外に出ると、夏よりもずっと穏やかになった日差しが降り注いでくる。ついこの間まで昼間は鉄板の上で焼かれているような暑さだったが、今はうんと過ごしやすい気温である。

 空には雲一つない、空気の澄んだ清々しい天気に恵まれた。秋晴れというやつである。


「さて、どこ行こか!」

 

 随分遅い出発であるが、今日は昼から八重といなり、北斗の三人で福岡の街歩きである。

 一週間ほど滞在する予定であるから、急いで観光スポットを巡らなければならないというほど、時間に追われているわけではない。しかし、かといって旅館に引きこもっているのも退屈だと八重が言い、それならばどこか近場にでもいこうかという話になったのだ。自分も気分転換にちょうど外を歩きたい気分であったのでちょうどよかった。


「近くで行けそうな場所を検索してみましょうか。」

「そうだな。夕食はどうする?」

「昨日食べ損ねたさかい、今日は旅館で食べようや。遅うとも七時くらいには帰れたらええんちゃうん?」


 現在は一時を少し過ぎたくらい。まだまだ時間には余裕があり、博多から少し足を延ばしてもよさそうだ。

 とりあえず、駅の近くまで行こうということになり、三人は博多駅を目指しながらスマートフォンであれこれと行き先候補を調べる。


「黒羽の奴は置いといて、愁は大丈夫か?」

「今度は無理やり部屋の中まで行ってみたんだが、駄目だった。部屋にすらいなかった。」

「マジか。彼奴あいつ絶対安静やなかったか?」

「歩けるくらいにまで回復している、ということでしょうか・・・。」


 黒羽はともかくとして、昨夜の親子喧嘩以来、愁はまだ自分たちと顔を合わせようとしない。それどころか、意図的に避けているように思える。決して嫌っているわけではないのだとは思うが、今会いたくないという気持ちは伝わってくる。それはまるで、この件に関して、いなり達に立ち入ってきてほしくないと言っているようなものであるが。昨夜の羅刹の言動もまた、これ以上いなり達を関わらせないようにするために、あえて突き放すようなものだったように感じる。

 他人の家族事情に口をはさむつもりは毛頭ない。それに、自分が悩む必要はない。それでも、他人事で終わらせられることはできないと思っている自分が心の底にいるのも確かだった。 

 食事を楽しんだり、八重や北斗との会話を楽しみながらも、もやもやとすっきりしない気分をいなりはずっと感じていた。

 何より、後に知り合った北斗や転校してきた八重よりも黒羽と愁とは付き合いが長く、行動もよく共にしていたいなりにとって、あの二人がいないのは新鮮で、少し物寂しい。いたらいたで騒がしいのだが、一緒にいることに慣れてしまって、逆にいないことに違和感を覚えてしまう。

 一人でいることが苦でなかった、むしろ積極的に人と関わろうとしなかった自分がそのように感じていると思うと、おかしなものである。

 いなりはらしくない自分に対して心の中で自嘲する。


「あーあ、あの馬鹿鬼といい腹黒烏天狗といい、せっかくの慰安旅行を台無しにしよって。今度けろっと戻ってきたら高いモンおごらせようや。」


 八重はわざとらしく大きな声を出す。

 その明るさが、陰鬱になりかけた空気を弾き飛ばした。 


「そうですね―――」

 

 八重の言葉にうなづきかけたところで、いなりは突然足を止めた。

 いなりの様子に気が付いた八重が、声を潜めて問いかけてくる。


「どないしたん?」

「いえ、少し気になることが。」


 いなりの目線の先には狭い路地がある。

 東京の街中でもよく見かけるような、店舗と店舗の間にある、薄暗くて狭い空間。積み重ねられたごみ袋や、スプレーで無造作に書きなぐられた悪戯書き、そこにたむろする青年たち・・・都市の裏側を凝縮したような、吉原とはまた別の闇を抱えた場所だ。

 路地のずっと奥の方に、数人の人影が見える。見える限り三、四人だろうか。皆、明らかに日本人ではない顔立ちだ。彼らは頭を摺り寄せるようにして、ひそひそと何か話している。

 それだけならば特に気にも留めないのだが、いなりが注意を向けたのは、彼らの手には鉄パイプや金属バットといった鈍器の類があったからだ。

 高校生の喫煙だったならばまだ可愛かったものだが、あまり笑って見過ごせるような現場ではないような気がした。

 もう少し近寄れば、会話が聞こえるかもしれない。


「だーめだばい。」


 突然、頭上から降ってきた声に驚き、いなりは思わず身構える。

 しかし、この声には聞き覚えがあった。


「蓮司さん。」

「やあやあ、まさかこげんところで美女二人に会えるとは、俺は今日も絶好調や!もしかして運命ってやつかな?」


 ひょろひょろと枯れ木のような体躯が、頭上から覆いかぶさるように立っていた。

 長い前髪のせいで顔は表情はよくわからないが、全身を使って蓮司は会話表現をする。


「なんであんたがなんでこんなとこにおるんや。」

「ありゃあ、連れん。ばってんそりゃ冗談として、女ん子二人だけで出かくるとは危なかばい。」

「おい、俺は無視なのか。」

「野郎はどうなったっちゃ知ったことやなか。」


 腕を波うたせるような謎の動きをしながら蓮司は北斗のジト目を軽く受け流す。

 しかし、ふいに蓮司の口調が真面目なものに切り替わった。


「ばってん、危なかとは冗談なしにほんなこつ。あげなんな見らんし聞かん、関わらん。南に慣れとらんヤツが下手に街歩きばすると恰好の餌食や。」


 そういうと、蓮司が首を回して路地の方を向く。それにつられていなりも目だけでそれを追った。

 ぼそぼそと路地裏から聞こえてくる声は日本語ではない。英語のように聞こえる部分もあるが、何を言っているのかまでは理解できなかった。

 蓮司はさりげなく彼らが消えたのを確認してから、ふいに大きな声をだした。


「よおし、カズ君ばっかりに君たちば取られてしまうとは癪やけん、代わりに今日は俺がデートついでに案内しちゃろう!」




◇◆◇




 博多駅からバスに乗っておよそ40分ほど。やってきたのは、大宰府天満宮表参道である。浅草の仲見世通りのように両側には多くの土産物店や食事処がずらりと並んでいる。しかし、浅草のような色鮮やかで、にぎやかな雰囲気とは少し違う。落ち着いた古民家が並ぶ風景は小江戸というよりも、どこか懐かしいおもむきをはらんでいる。


「福岡きたら天神様ば拝まなね。それに、ここは食べ歩きスポットとして有名なんや。」

「ほう、そらええな。」

「ちょうど小腹もすいてきたころやろ?」


 花より団子、天神様より食べ歩き。

 八重のそういうところを蓮司はすでに把握しているらしい。


「これこれ。まずはこりゃ押さえておくべき一品ばい。」


 最初に連れてこられたのは〈かさの家〉という甘味処だった。


「梅ヶ枝餅は聞いたことがあるやろ?いろんな店のがあるばってん、やっぱりここのが一番うまか。」


 梅ヶ枝餅は太宰府天満宮に祭られている菅原道真の伝説に基づいて作られた銘菓なのだそうだ。

 手渡されたのは、紙に包まれた手のひらサイズの饅頭のような菓子だった。どうやらこれが件の梅ヶ枝餅らしい。梅ヶ枝餅は焼きたてのようでまだ温かく、白い皮の真ん中に梅柄の焼印がされていてかわいらしい。

 早速一口かじると、もちもちの生地の先にぎっしり詰まった熱々の餡が口いっぱいに広がった。


「これ、凄くおいしいです。」

「やろう?」


 餡の量に反して甘すぎないところがとても良い。

「食べ物を美味しそうに食べているのを見るのはいいねえ。」と言っているが、はたしてその前髪でどれくらい前が見えているのだろうか。

 

「あと、これも外せんね!」


 やってきたのは〈天山〉という店だ。こちらで買ったのは鬼瓦最中という名の菓子である。その名の通り、最中の皮が厳つい顔の鬼の柄をしている。蓮司が「同じ鬼ばってん羅刹様とか愁様には全然似とらんばいね。」と言うと、八重が爆笑する。確かに似ていない。

 そんな“鬼”にかじりついてみるとぱりっとした最中から、はみ出んばかりに詰め込まれた餡が口の中で広がる。同じように餡を使った菓子とはいえ、梅ヶ枝餅とはまた違うおいしさだ。


「俺的には冬限定のあまおういちご大福最中も結構おすすめばい。」

「なんや、今は売ってへんのか。」

「また冬にでもおいでばい。」


 腹ごしらえもそこそこに、ようやく案内所が見えてきた。

 案内所を左に曲がり、朱色の太鼓橋たいこばしを渡るとようやく楼門ろうもんが見えてきた。


「ここが太宰府天満宮御本殿ばい。」


 朱、緑青、金の鮮やかな色合いをした、壮麗な楼門の向こうにたたずむ、おごかな本殿。色あいこそ鮮明で美しいが、豪華絢爛というよりも、その居住まいからは貫禄が感じられる。


「そういえば、菅原道真って、どんな奴だっけ?」

「平安時代、に宇多天皇に重用されて寛平の治を支えた忠臣だ。そのあとの醍醐朝になると右大臣にまで上り詰めたんだが、謀反の疑いをかけられて、大宰府へ左遷、現地で亡くなった。死後に怨霊と化したと考えられて、天満天神として信仰の対象とになったんだ。」


 まるで本の文章をそらで読むかのようにすらすらと北斗が答える。さすがは絶対記憶能力の持ち主だ。


「はあ、ようもまあそんなんまで出てくるな。」

「一応俺の家も神社だからな。関係する知識は持っているつもりだ。それに、個人的にも菅原公は尊敬している。」

「へえ、やっぱ頭いいところか?」

「それもそうだが、この人の詠んだ歌が好きなんだ。」


 北斗は照れくさそうにそう答えた。


「霧たちて 照る日のもとは 見えずとも 身はまどはれじ 寄る辺ありやと―――霧が立ちこめて日が射し昇る方向の都は見えないとしても、我が身は迷わされまい・・・という意味の歌だ。」

「いかにも忠臣らしい歌ですね。」

「ああ。それもそうなんだが、なんというか、ただ従順な配下じゃなくて、一人の人間の確固たる意思も表しているみたいな感じがして、そこが割と気に入っている。」

「うちにはそういう情緒はようわからへんけどええ歌っぽそうなのはわかるな。」


 いなりも和歌の良しあしはわからないが、今もその和歌が伝わっているということは、何かしらの本に残されるほどには評価の高いものだったに違いない。


「そういえば、蓮司さんはご本人に会ったことはないんですか?」

「俺はそん時代ころはまだ吉備きびにおったけんなあ。菅原しゃんとは面識なかっちゃん。」

「え、蓮司さんの言葉って博多弁ですよね?」


 北斗が驚愕して問い返す。

 紛れもなくこってこての博多弁をしゃべっているから、てっきり根っからの地元民だと思っていた。しかし、どうやらそうではないらしい。


「昔ちょっとおいたしたことがあってねえ、岡山からこっちに移ってきたんだ。それから方言がうつったんだ。」

「方言がうつるなんてことあるんですか。」

「まあねえ。俺、今じゃあ岡山よりも福岡ん方に思いれがあるけんなあ。」


 そうすると、羅刹にも博多弁がうつっててもおかしくないような気もするが、そういうわけでもないようだ。

 一通り境内を散策し終えて時計を見てみると、帰るにはいい時間になっていた。しかし、バスの発車時刻までにはまだ少し時間が残っている。


「それなら、俺はここで少し社殿を見ていてもいいか?」


 そう言った北斗は、いつになくそわそわとしていた。

 神職の息子であるだけに、やはり社寺建築には興味が惹かれるらしい。


「余裕あるし、帰る時間を決めてあとでバス停集合にする?」

「賛成です。」

「よし、じゃあそうするか。」


 八重は食べ歩きの方を楽しむようで、さっそうと参道の方へ行ってしまった。

 となると、必然的にいなりと蓮司が残されることになる。


「いなりちゃんなどっか行きたかところなかと?」

「いえ、特には。」


 神社は嫌いではない。むしろ、好きな方だ。神社の静かな空気は心を落ち着けてくれる。

 しかし、だからといって北斗ほど社殿に興味があるわけでもなく、八重のように参道に舞い戻るほどお腹も減っていない。


「そうか、それならお土産でも見ていくかい?」

「お土産・・・。」


 蓮司に言われて、いなりはみずめや佐助への土産をまだ何も考えていなかったことを思い出した。

 みずめや佐助の性格からして、食べ物よりも形に残るものの方が喜ばれるだろう。しかし、かといって邪魔になるようなものはさけたい。そういう点を考慮すると、お守りはぴったりかもしれない。


「そうすることにします。」

 

 授与所へ行ってみると、やはり有名な神社であるだけにたくさんの種類のお守りがある。祭神が学問の神であるだけに学業守りが充実しているが、それは棋士の父と九尾の母には必要ないだろう。夫婦円満守りをあえてあのおしどり夫婦に買っていくのも、少しずれているような気がした。

 とにかく、何らかのご利益があるような普通の「お守り」が欲しいところだが、そんな適当なものは都合よく売られていないらしい。やはり潔く夫婦円満守りにでもしておくべきかと思い、いなりは箱に並べられたお守りに手を伸ばす。

 そこで、いなりはふと横にある別のお守りに目が留まった。

 それは、ちりめんで作られた鳥と梅のモチーフのついたストラップタイプのお守りであった。可愛らしい梅の飾りとは反対に、やけに凛々しい顔をした鳥が少しアンバランスで面白い。


「これは・・・。」

 

 いなりは手にとってそのお守りをしげしげと見る。


「ああ、そりゃうそっていう鳥ばい。鷽は天神様ん使いって言われとってな、前年にあった悪かことば「嘘」にして吉に変えてくれるんたい。」


 蓮司はそういっていなりの手元を覗き込みながら教えてくれた。

 つまり、「嘘」と鳥の名をかけた洒落ということか。効力はいかほどなのかはともかくとして、お守りの鳥は妙な愛着のわく顔をしている。

 いなりはみずめと佐助のお土産には、このお守りを買っていくことにした。

 お守りを買い終えてから時間を確認したが、まだ微妙に時間に余裕がある。いなりと蓮司は境内をふらりと散策しながら、一足先にバス停へ行くことにした。

 

(今なら話を切り出せそうだな。) 


 いなりは前を向いたまま、世間話でもするかのように話し始めた。


「ところで、駅の付近で見かけたひとたちは、一体何だったのですか?」

「おっと、それ聞いてしまう?」


 蓮司はおどけたようにそう返すが、やはり前を向いたままだ。

 その様子からして、あまり表沙汰にしたくない内容であることは確かである。いなりの判断は間違っていなかった。


「しばらく南の地ではお世話になるので、知っておいた方がよいかと思いまして。」

「うん、そりゃ否定しぇんかな。ばってん、あまり首ば突っ込まん方がよかばい。」

「ご心配なく。」


 血の気の多い八重ならばいざ知らず、いなりは積極的に関わっていく気は毛頭ない。それどころか、出来ることならば面倒事の匂いがするものは無視していたい。しかし、今回はそう目をそらしておけそうになさそうな気がしたのだ。それは、直観と言ってしまえば直観なのだが、この嫌な予感というのは往々にして当たる。ならば少しでも情報を集めておくにこしたことはない。それが取り越し苦労で終わったのならば万々歳である。

 蓮司はふーっと、やけに長い溜息をついた。それは、これから話すものがそう簡単なものではないことを暗示していた。


「海外妖怪が、日本ここじゃあまりよか目で見られとらんのはわかっとーよね?」


 いなりは黙ってうなずく。

 蓮司の話を聞いて今朝料亭でのちょっとした騒動を思い出した。女将はよく見かけると言っていたが、海外妖怪がただ差別的な目で見られるだけではなく、あからさまな嫌がらせも横行しているということだろう。


「開国当時は海外妖怪ん受け入れについては居住区ば設くることによって折り合いばつけたことになったっちゃけど、島国根性っていうとやろうか、大抵ん妖怪にとって、海外妖怪=余所者よそもん闖入者ちんにゅうしゃやけんしゃ。あまりよろしゅうなかっちゃんねえ、南ん地の妖怪と在日の海外妖怪ん間は。やけん、しょっちゅう衝突は起こるっちゃけど昔はまあなんていうか・・・それで通常運転?みたいなところがあったんたい。」

 

 つまり、火事と喧嘩は江戸の華と似たようなもの・・・というと少し違うかもしれない。とにかく、南の地では日本妖怪と海外妖怪の衝突なんていうのは日常茶飯事のありふれたものだったということだ。


「ばってん、最近本格的に海外妖怪に対する待遇ん改善ば求めようと動き出す連中が出てきたんや。」

「待遇の改善?」

「要するに、差別ん撤廃とか海外妖怪ん他地域へん自由な移動とかば求めとーと。界隈じゃあ“レジスタンス”って呼ばれとーな。」


 レジスタンス―――その原義は“抗議する者”だっただろうか。

 まさに、現在の自分たちの扱いに対して、“抗議”の声をあげた者たちの集まりということだ。


「ただ差別反対運動しとーだけならよかっちゃけど、レジスタンスば名乗っとー連中ん中には見せしめに日本妖怪に襲いかかるような過激派もおってさ。俺たちも目ば光らせて圧力ばかけとーつもりだばってん、気を付けんしゃい。」

「・・・ご忠告痛み入ります。」


 記憶をたどるに、見かけた奴らは金属バットやら鉄パイプやらを携えていた。あの様子はレジスタンスではなく、まるでギャングだ。

 自惚れるつもりはないが、いなりは自分が複数人を相手にしてもそれなりに戦えると自覚している。さらに先ほどは八重や狛狗たちもいたので、たとえ襲われたとしても防衛することはできたにちがいない。だが、蓮司があえていなりたちを遠ざけようとしたのは、逆にレジスタンスを名乗る者たちの神経を逆なでてしまうことを避けようとしてのことだったのだ。

 南の四大妖怪は入国しようとしてくる海外妖怪への牽制という理由から置かれたが、同時に国内にいる日本妖怪と海外妖怪との間を取り持つ役割もある。言い換えれば、日本妖怪と海外妖怪のお互いの言い分に板挟み状態であるともいえる。羅刹はプライベートでも公でも問題を抱えこんでいるらしい。


(ご愁傷様としか言えないな。)


 そこまでいなりが思いいたったところで、遠くから名前を呼ばれたような気がした。


「おーい、いなり、蓮司!いつまでそこにいるんだ。もうそろ帰らないと夕飯に間に合わないぞ!」


 周りを見回すと、八重が少し距離の離れたところで手を振っていた。


「今行きます。」


 ふといなりが蓮司の方に目線を戻すと、蓮司は人差し指を口元に添えていた。さらに、いなりにだけ見えるようパクパクと口を動かす。


(内緒・・・ね。)


 口パクをいなりが理解したとみるなり、蓮司はウインクをかましてくる。

 反応しかねたいなりは結局そのウインクを無視して、八重たちの方へと向かっていったのだった。






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