第18話 太一 17

弁護士、検事、裁判官。太一は、まだ、目標を100%決めることができずに揺れていた。

そんな中、1時間でも30分でも、手があけば、参考書を広げて頭に詰め込む。

さらに、仕事が忙しい最中、大先生は、事あるごとに、質問を投げつけ、必死に勉強した事を絞り出し、答えると、間違いの時はそれを直し、正解でも、それに付いて、詳しく解説してくれるし、その刑法第××条に関して、こんなことがあった。と大先生が実際に扱った、案件や、記憶に残った事件などの実例を交えて、話してくれた。

大先生の解説は、具体的で、なぜ事件が起こったのか、また、なぜ、この条項が当てはまったのか、結果どのような求刑がされ、どんな判決が言い渡されたのかまで、話してくれるので、ただ、正解、不正解を言うだけでは、あまり、記憶に残らないが、しっかりと頭に入った。


そして気付いた。

ただ、文面を追って、頭に詰め込むだけでは、その法律の本当の意味を理解できていない場合が多い。

もっと、一つ一つ理解を深めなければ。

勿論、問題集、過去の試験の問題集などは、毎日決めた量だけは、やっていた。

でも、次から次へと丸暗記するする事をやめ、一つずつ、どんな意味のある条項なのかを掘り下げるようにしたら、今まで、試験に受かる為、頑張らないと!という気持が強くて、苦しみしかなかった勉強が楽しくなった。

そうして、10ヶ月、見事に予備試験に合格し、数ヶ月後の本試験を受ける資格を得た。

試験にパスした事を大先生に報告すると

「もう受かっちゃったの?やっと仕事覚えて来たかと思ったのに、あと1回か2回落ちてくれたら、助かったんだけど・・・」

と笑顔満載で言って


「あの、まだ本番が残っているので・・・・」

「あっそっか、じゃ〜あと2年、いや、3年ここで、がんばろうか!」

「いえ、絶対に受かります!

それで、弁護士になって、あっという間に、ここに戻ってきます」

「そっか、楽しみにしているよ!

でも研修が終わった頃には、裁判官になります!なんて報告に来ているかもしれないよ」

太一は、戻ってきます!などと言ってしまった事を後悔した。

先生は、お見通しだった。

裁判官って言うのは、可能性は低いけれど、検事になるか、弁護士になるかを何となく迷っていた。

まあ、今、いくら迷っても、司法試験に合格しなければ、無駄な迷い。

ともかく今は、勉強に力を注ごう。

そして、数ヶ月後、太一は、奇跡的に合格した。

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