第15話 太一 14

そして、うつむいて、しばらく黙っていた。

「5年・・・長い。」

「うん、仮にストレートで受かったって4年ちかくかかる。

でもこればっかりは・・・・頑張るけど、ごめん」


それから、1週間後、学校で、良子に呼び出され、

「やっぱり、待てない。」

その一言で二人の仲は、終わった。

引き止める言葉が見つからなかった。

「別れたくない」

「待っててくれ」

とても、そんな言葉は出せる訳も無く

ただ、「解った」

その一言で、良子と別れてしまった。

その事を深く後悔した。

「無事に、検事か弁護士になれて、その時君がまだ、一人だったら、迎えに行くから」

せめて、そんな風に言えば良かった?

いまさら、もう、遅い。

好きだったのに・・・・

この別れで、勉強に集中できない日が続いた。


そのせいだとは、思いたくなかったが、現役で受けられる最期の予備試験に見事に落ち、来年の試験の為に勉強を始めると共に、働かせてくれる、弁護士事務所を探し始めた。

片っ端から電話をしてみる。

ほとんどの事務所が今、事務や雑用の人は、募集していないという答え

やっとの事で、面接だけならしてみると言ってくれたのが、50件以上電話して、たった3件。

1件目と2件目は、出来れば、経験者の方がありがたいと言われ、3件目の弁護士法人佐久間法律事務所というところが拾ってくれた。


50代の男性の大先生と、30歳そこそこの娘さんである、良美さんが弁護士で、パラリーガルの40代の男性と、30後半と思われる女性。

法律事務以外の事務と、雑用をやっている、大先生と同じ年位の男性、5人の事務所。

もう一人、弁護士志望の男性が5年ほど勤めていたが、やっと試験に受かって司法修習のために、辞めた所だと言う。

「じゃ〜来週からでも、授業が終わってからとかでいいから、来てくれるか?授業がなくなったら、フルタイムで頼むよ。」

「は、はい、よろしくお願いします」

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