第3話 太一 2
太一の父、裕太は、6人兄弟の下から2番目で、実家の、財産的な物は、兄弟が生まれ育った、土地と建物だけだったが祖父は、子供達全員、大学をだし、それぞれ、立派に巣立っていったことを自慢にしていた。
兄弟6人の内5人は、父母、つまり太一の祖父母が亡くなる前に、両親の面倒を診るのを条件にその土地建物を長男に譲ることを約束していたので、実際に祖父が亡くなった時相続放棄の手続きをしたので、太一の父は、特に、財産というものを譲り受けていない。
裕太は、大学卒業後、大きな電機メーカーに勤め、始めに配属された生産部という部署で2年間働たところで入社して来た、百合香と知り合い、さらに数年後、工場のライン責任者に、抜擢され、千葉への転勤が決まり、その部署を離れる事になったのを期に結婚。
百合香は、会社を退職し、都心から1時間ほどの所にある、その千葉の工場の近くで、二人は、所帯を持った。
たまたま、近所に、裕太の父親の大叔父が、やっている酒屋があり、住み慣れない街で不安の多い中、何かと、この一家に助けられ、生活をしていた。
裕太夫婦は、1男1女に恵まれ、長男を太一、下の長女を里美と名付け、間もなく、その酒屋から、歩いて15分程度の所に新築された小さなマンションを購入。
いたって普通の、そして、暖かい家庭を育んでいた。
子供達が小学生になる頃から、百合香は、その親戚の営む酒屋でアルバイトを始めた。
始めは、週に3日、1日4〜5時間程度だったのが、子供達の成長に従って時間が伸び、ほぼフルタイムで働く様になって行った。
やがて、世の中の流れでその酒屋は、コンビニに姿を変えることになったが、それが、功を奏して、落ち気味だった売上げは、増大。
家長である、太一の大叔父は、かなりの高齢になっていたが、4人の孫がいて、将来を見据え、「俺が生きている間に、店を4軒にして、孫達に、1件ずつ譲る。」と張り切っていた。
実際、大叔父の息子二人は、サラリーマン。
店は、この大叔父とその長男の嫁が切り盛りしていた。
酒屋時代は、大叔父が仕事を始めた頃から働いていた、男性もいたが、高齢になり、リタイア。
その頃から、その長男の上の孫がミュージシャンをめざしているのだが、それだけでは食べられないと、音楽活動のない時は、店を手伝っていた。
長男の下の孫は、兄と違い、お堅い市役所勤め、次男の上の孫は、大学に残り、准教授として、教壇に立ち、下は、就職に失敗して、3年経っても、就職が決まらず、とうとう、友人とTシャツなどにプリントする仕事をしたいという事で、このコンビニの脇にプレハブを建て、開店したが、あまり繁盛しておらず、手の足りない時には、コンビニを手伝わされていた。
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